PAM4

100Gイーサネットなどの広帯域通信測定に関する翻訳で、PAM4という言葉が出てくる(例えば、広帯域AWGのマルチレベル・シグナリング手法によるデータ・スループットの最適化)。

PAMは、Pulse Amplitude Modulation(パルス振幅変調)の略である。「0」と「1」から成るビット列を、そのまま2つの電圧レベル(「0」は「ロー電圧」、「1」は「ハイ電圧」に対応させる)のパルス信号として変調して伝送するNRZ信号は、2値パルス振幅変調(PAM2)である。「0」と「1」から成るビット列を、4つの電圧レベル(「00」を「L1電圧」、「01」を「L2電圧」、「10」を[L3電圧」、「11]を「L4電圧」に対応させる)のパルス信号として変調して伝送する方式が、4値パルス振幅変調(PAM4)である。「PAM-4」と略記されることもある。

最近の動画配信やクラウドストレージなどの普及により、データセンターのIPトラフィック量が増大し続け、それを処理するために、スイッチ・ファブリックのバックプレーン通信速度の増大も余儀なくされている。このような高速バックプレーン通信のための規格は、IEEE P802.3bjの100 Gbps Backplane and Copper Cableというタスクフォースで議論されていて、従来のNRZ(PAM2)を用いる方式とPAM4を用いる方式の両方が検討されている。NRZを用いる方式では、伝送速度が速くなると伝送帯域幅が広くなり、伝送損失が大きくなるので、高品質の伝送媒体(物理層)を使用する必要があるという欠点があるが、送受信機器に既存のアーキテクチャを使用できるという利点がある。その反対に、PAM4を用いる方式では、多値変調により伝送速度が速くなってもそれほど伝送帯域幅が広くならないので、既存の伝送媒体(物理層)を使用できるという利点があるが、新しいアーキテクチャの送受信機器が必要になるという欠点がある。

100 Gbps Backplane and Copper Cableについては、以下を参照

IEEE P802.3bj 100 Gb/s Backplane and Copper Cable Task Forceのホームページ > Public AreaのTask Force Meeting Materials(英語ページ)

permeability(透磁率)

磁性体1
材料測定に関する翻訳に、permeability(透磁率)という言葉がよく出てくる(例えば、LCRメータおよびインピーダンス・アナライザを用いた誘電率/透磁率の測定ソリューション)。

磁性体とは、ミクロな磁石(磁気双極子モーメント)の集合体と考えられる。磁気双極子モーメントの源は、磁性体を構成する原子内の電子の軌道運動や電子や原子核そのものの自転に起因した微小円形電流である。誘電体に電界を印加したときと同様に、磁性体に磁界を印加すると、磁性体内のミクロな磁石が整列し、磁性体が磁化される。真空中での磁界の強さと磁性体内での磁界の強さとの比で比透磁率が定義される。しかし、誘電体に電界を印加した場合とは異なり、比透磁率は1より大きいとは限らない。強磁性体の鉄では500~5000、常磁性体のアルミニウムでは1.0002、反磁性体の銅では0.9999である。常磁性体、反磁性体は、比透磁率を1として扱ってよい。また、外部磁界をゼロにしても、磁性体内部の磁化の強さはゼロに戻らない(残留磁化)。これは、鉄を磁石に付けて、その後離すと、鉄が磁石になる(磁化される)現象である。

磁石、磁性、磁界(磁場)、磁束密度についての数式を使わない説明については、以下を参照

私編 雑科学ノート > 磁石の話

透磁率については、以下を参照

わかりやすい高校物理の部屋 > 第6編 電気と磁気 > 第3章 電流と磁場 > 第1節 磁場 > 1 磁場、第3節 電流が磁場から受ける力 > 1 電流が磁場から受ける力、第4節 磁束密度 > 1 磁束密度

permittivity(誘電率)

誘電率1
材料測定に関する翻訳に、permittivity(誘電率)という言葉がよく出てくる(例えば、LCRメータおよびインピーダンス・アナライザを用いた誘電率/透磁率の測定ソリューション)。

誘電体とは、金属のように自由に動き回れる電子(自由電子)がほとんど存在しない物質で、絶縁体ともいう。

元々分極している(電子密度が偏っている)分子で構成されている誘電体(純粋な水など)では、個々の分子が内部電界(永久双極子モーメント)を持っているが、外部から電界が印加されていない状態では、熱運動により双極子モーメントがランダムな方向に向いているので、全体として分極していない。しかし、外部から電界E0を印加すると、分極している分子は、その内部電界の向きがE0と逆方向にそろうので、E0に比例した逆電界E'(分極ベクトルP)が発生する。また、分極していない分子で構成された誘電体でも、外部から電界を印加すると、その分子の電子雲が、印加した電界の向きと逆方向に偏り、逆電界E’が発生する。
誘電率2
このような場合、誘電体内では、逆電界E’により、実質的な電界EはE0-E’となる。
このとき、真空中の電界E0と誘電体内の電界Eとの比(E0/E)を比誘電率εrという。誘電体内の電界は、必ず真空中の電界より小さくなるので、εrは必ず1より大きくなる。また、真空中と誘電体の境界で電界が不連続になるので、D=εE+P という、分極の効果Pを組み込んだ電束密度を導入して、境界でDが連続になるようにする。
誘電率3
分極ベクトルPが外部電界Eに比例する場合は、比例定数をχ・ε0として、P=χ・ε0・Eと書けるので、D=ε0(1+χ)E=ε0・εrEとなる。ここで、ε=ε0・εrを誘電率という。

誘電率については、以下を参照

誘電体測定の基礎