PRBS(擬似ランダム・ビット・シーケンス)

高速デジタル測定に関する翻訳で、PRBSという言葉が出てくる。

「PRBS」は、Pseudo-random bit sequence(擬似ランダム・ビット・シーケンス)の略である。真の乱数(ランダム性)は、再現性がなく予測できないが、擬似乱数は統計的にはランダムであっても、その生成の仕方から再現性があり予測可能である。この性質を利用して、ビット・エラー・レートやアイ・パターンを測定するためのテスト・パターンとして、PRBSがよく使用される。

PRBSの生成については、信州大学工学部情報工学科の井澤裕司准教授のページ論理回路2第8章 順序回路の応用(その2) -擬似ランダムパターン発生回路-を参照。

SerDes

高速デジタル測定に関する翻訳で、SerDesという言葉が出てくる(例えば、Agilentの高度な校正手法を使用したトランシーバFPGAの検証のp4)。

「SerDes」は、Serializer/Deserializer(シリアライザ/デシリアライザ)の略である。シリアライザとは、パラレル・バス信号をシリアル信号に変換するデバイスで、デシリアライザはその逆である。デジタル伝送の高速化の要求が高まるにつれて、さまざまな分野でパラレル伝送からシリアル伝送に規格がシフト(HDDインターフェースがパラレルATAからシリアルATAに、CPU-チップセット間バスがFSBからQPIになど)してきている。この理由は、パラレル伝送では、LSIのピン数が多くなり配線コストがかかることや、複数の信号線間でスキュー(タイミングのずれ)が生じたりクロストーク・ノイズが発生して、高速化が難しいからである。このような困難を克服して、高速シリアル伝送を実現するためにSerDesが使用される。

SerDesの詳細は、EDN JapanのTech&Info ビデオ講座バックナンバーLVDSを基礎から理解する、さらなる高速/長距離化を可能にする技術(前編)LVDSを基礎から理解する、さらなる高速/長距離化を可能にする技術(後編)を参照。

IEEE 802.11ad

無線通信測定に関する翻訳で、IEEE 802.11adという言葉が出てくる(例えば、WiGigテストのための完全かつ柔軟なソリューションの構築)。

「IEEE」は、「The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.(米国電気電子技術者学会)」の略称で、「802」は「802委員会(LAN/MANの標準化委員会)」の意味であり、「11」は「無線LANのワーキング・グループ」という意味である。

無線LANの規格は、IEEE 802.11b(11 Mb/s)、IEEE 802.11a/g(54 Mb/s)、IEEE 802.11n(最大600 Mb/s)と伝送速度が高速化してきて、現在はIEEE 802.11ac(最大6.9 Gb/s)が市販されつつある。これらは、2.4 GHzまたは5 GHzの周波数帯を使用し、チャネル幅の拡大、OFDMの副搬送波の変調の多値化、MIMOのアンテナ数の増加などにより、伝送速度を高速化してきた。

一方、IEEE 802.11adは、60 GHzという非常に高い周波数帯(ミリ波)を使うのが特徴で、2.4 GHzや5 GHzの周波数帯に比べてチャネル幅(IEEE 802.11acの最大160MHzに対して、IEEE 802.11adは最大2.16 GHz)を広く取れ、OFDMの副搬送波の変調の多値化という複雑なマルチキャリア変調方式を使用しなくても伝送速度を高速化できるという利点があるが、ミリ波のため直進性が強く到達距離は10 m程度とされる。

無線LANの最新動向については、以下の参照

「超」高速無線LANがやってくる、IEEE802.11ac/adが変えるモバイルの世界(技術編)
「超」高速無線LANがやってくる、IEEE802.11ac/adが変えるモバイルの世界(動向編)

Orthogonal Frequency Division Multiplex(直交周波数分割多重化)

無線通信測定に関する翻訳で、Orthogonal Frequency Division Multiplex(直交周波数分割多重化、OFDMと略されることが多い)という言葉がよく出てくる(例えば、SystemVueを使用したフレキシブルOFDM信号の作成)。身近なものでは、地上波デジタルTV放送や無線LANで使用されている。

OFDMは、高速デジタル信号を高い周波数利用効率で伝送するための変調方式である。一言でOFDMを説明するのは難しいが、高速なシリアル・ビットストリームをシリアル-パラレル変換して複数の低速なデータ(I/Qデータ)にマップピングし、それらを互いに直交する副搬送波(サブキャリア)に乗せて変調(BPSK、QPSK、16-QAMなど)する方式である。低速の副搬送波を複数個並列に伝送するので、マルチパス(反射波)に強い。また、サブキャリアの間隔を密に配置するので互いに干渉しやすくなるように見えるが、サブキャリアを互いに直交させることにより、各サブキャリアの中心周波数が他のサブキャリアのスペクトラム・ヌル・ポイント(信号強度がゼロのポイント)になり、各サブキャリアを分離しやすくなって、周波数利用効率が高まる。

詳細については、㈱サーキットデザインのOFDM変復調のページを参照。㈱サーキットデザインの「無線技術」トップページには、無線に関するさまざまな用語の説明へのリンクがあり、アプレットを使用してわかりやすく解説している。

confidence level(信頼度レベル)

計測関係の翻訳で、confidence level(信頼度レベル)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent U2000 シリーズUSB パワー・センサのp14)。confidence levelは、「信頼水準」とか「信頼レベル」と呼ばれることもある。

信頼度レベルは、「合成標準不確かさ(combined standard uncertainty」に「包含係数(coverage factor)」を掛けて「拡張不確かさ(expanded uncertainty)」を求めるときに使用される。難しそうな言葉が並んだが、「合成標準不確かさ」は「標準偏差(σ)」と解釈すればよい。2σの区間に測定値の95%が含まれるので、包含係数が2の場合が、95%の信頼度レベルに相当する。3σは99%の信頼度レベルである。最近、素粒子物理学でヒッグス粒子(質量の起源)の発見があり、その際、ヒッグス粒子の質量が4.9σで確定されたと発表されたが、物理学上の発見は、5σ(99.99995%の信頼度レベル)で確定する必要があるという。

詳細については、以下を参照。

なぜ校正が必要なのか第1回 不確かさ–基本
不確かさ文献「不確かさ評価入門」

link budget(リンク・バジェット)

無線通信計測関係の翻訳で、link budgetという言葉が出てくる(例えば、無線エミッタの信号モニタリング、周波数管理、地理位置特定の技術と動向のp10の表2)。

リンク・バジェットとは、通信システムの送信端と受信端の間の経路(リンク)に存在する利得要因(アンテナ、アンプ、コード化などによる利得)と損失要因(ケーブル、自由空間、フェージング、熱雑音などによる損失)をすべてdB値で加算/減算して、リンク全体の収支(許容伝搬損失)を計算することである。この計算から、基地局から端末までの電波の到達距離がわかり、無線システムの回線設計(セル半径や送信電力)に利用される。

FOMAのリンク・バジェットの例が、FOMAの無線ネットワーク設計概要の表1~表3にある。