マイクロ波測定に関する翻訳で、mixed-mode S-parameter(ミックスドモードSパラメータ)という言葉が出てくる(例えば、PXIベクトル・ネットワーク・アナライザ・シリーズのp6)。
差動信号による伝送(平衡伝送)は、コモン・モード・ノイズを減らすことができるので、RF/マイクロ波信号や高速デジタル信号(PCI Express、シリアルATA、HDMI、USBなど)の伝送に広く使用されている。
このような差動伝送に用いられる回路(差動デバイス、平衡デバイス)を評価する場合は、バランを用いて差動信号をシングルエンド信号に変換することにより、従来のシングルエンド(不平衡)テストポートを持つベクトル・ネットワーク・アナライザでも測定できるが、バランの追加により測定誤差が大きくなったり、バランの周波数帯域による制限が存在するという欠点がある。
(位相が180°異なる正の信号ラインと負の信号ラインで構成される)差動信号用の入力ポートと出力ポートが1つずつある2ポートの平衡(差動)デバイスを、正の信号ライン用の入力ポートと負の信号ライン用入力ポートが2つ、正の信号ライン用の出力ポートと負の信号ライン用出力ポートが2つある、4ポートの不平衡(シングルエンド)デバイスと考えれば、シングルエンド(不平衡)テストポートを4つ持つベクトル・ネットワーク・アナライザで測定可能になり、バランを用いる方法による制限がなくなる。
しかし、差動信号は、一般に差動モード成分とコモンモード成分に分けて考える必要があるので、差動2ポート・デバイスをシングルエンド4ポート・デバイスとして測定して得られる通常のSパラメータでは、差動信号に関する有用な情報が得られない。したがって、差動デバイスの各ポートへの入射信号の差動モード成分とコモンモード成分を作用させると、そのデバイスの各ポートからの反射信号の差動モード成分とコモンモード成分となるように、この通常のSパラメータ行列を変換する必要がある。このように通常のSパラメータから変換されたSパラメータ行列がミックスドモードSパラメータである。
ミックスドモードSパラメータについての詳細は、以下を参照。
Agilent Technologies 差動インピーダンス測定技術セミナ セミナテキスト MAY ’01のp65~p77(スクロールバーに表示されるページ)