IP multi-media subsystem(IPマルチメディア・サブシステム)

無線通信計測関係の翻訳で、IP multi-media subsystem(IPマルチメディア・サブシステム、IMSと略されることも多い)という言葉で出てくる。

IMSは、通信ネットワークのオールIP化の流れの中で、IP(インターネット・プロトコル)をベースにしたパケット通信ネットワークで携帯電話やスマートフォンなどの音声/動画通信を提供するための技術である。IMSには、多くのインターネット技術を取り入れられていて、通信の開始や切断を行うセッションの制御には、IETF(Internet Engineering Task Force 、インターネットで利用される技術を標準化する組織)によって標準化されたSIP(Session Initiation Protocol、セッション開始プロトコル)が使用されている。

IMSの詳細については、以下のサイトを参照

IMSとは? なぜIMSが必要なのか?

電子情報通信学会の知識ベース「知識の森」のS1群6編「次世代ネットワーク」4章「SIP,IMSと品質基準」

Basic instruments(基本測定器)

計測器関係の翻訳の参考として、基本的でよく使用される電子計測器の基本や原理が記載されている資料を以下に挙げる。

オシロスコープ評価の基礎
リニア電源の動作について
いまさら聞けないロジック・アナライザ入門
スペクトラム解析の基礎
パワー測定の基礎
スペクトラム・アナライザ、信号発生器の基礎
ネットワーク・アナライザのアーキテクチャ

上記の資料を読む際に、L10n用語の過去記事(群遅延相互変調歪みミキサフーリエ変換と逆フーリエ変換位相ロック・ループ不確かさ高調波インピーダンス整合Sパラメータ位相雑音dBm)が参考になる。

LTE-Advanced

無線通信計測関係の翻訳に、LTE-Advancedという言葉が最近よく出てくる。

移動通信システムは、第1世代(アナログ方式の自動車/携帯電話)、第2世代(PDCやGSM方式のデジタル携帯電話)、第3世代(W-CDMAやCDMA2000方式の携帯電話)と進化してきた(参考:電子情報通信学会の知識ベース(知識の森)の4群3編「移動通信」の3章 移動通信システム)。LTE Advancedは、第4世代(4G)移動通信システム(携帯電話)の規格である。

LTE Advancedの詳細については、以下のサイトを参照。

LTE-Advancedの概要
ドコモR&D(研究開発)のテクニカル・ジャーナル VOL.18 NO.2の「LTE-Advanced技術特集-IMT-Advancedに向けて進化し続けるLTE」

Time Domain Reflectometry(TDR)

計測関係の翻訳に、高速デジタル伝送(PCI Express、シリアルATA、HDMI、USB3.0など)の普及に伴い、TDRという言葉が最近よく出てくる。

理想的なデジタル・パルス波形には、無限に高い高調波成分(高周波成分)が含まれるが(矩形波のフーリエ級数展開、参考:フーリエ級数展開)、周波数が高いほど、インピーダンスの不連続部(コネクタや伝送線路の曲がった部分など)での反射により波形が歪み(参考:FPCの高周波特性の一考察の図1)、誤動作の原因になる。TDRとは、ステップ・ジェネレータとオシロスコープを使用して、高速なパルス・エッジをDUTに入力し、その一部がインピーダンスの不連続部で反射して戻ってくる波形をモニタすることにより、インピーダンスの不連続部の位置と種類(抵抗性、容量性、誘導性)を特定するための手法である。

TDRの詳細については、以下を参照。

タイム・ドメイン・リフレクトメトリの原理
ベクトル・ネットワーク・アナライザとオシロスコープによるTDR測定の相関の検証と性能の比較

dBm(Decibel-milliwatt )

計測関係の翻訳に、dBmという単位がよく出てくる。

dBmを理解するには、まずdB(デシベル)を理解する必要がある。dBは、相対値(ある基準量に対する比)であり、次元(物理量の単位)のない量である。例えば、P1 [W]の電力を増幅器に入力して、出力がP2 [W]になると、増幅器の電力利得は、P2/P1倍である。ここで、P2/P1という量は相対値(P2はP1を基準にして何倍になっているかを表す)である。dBという単位は、このP2/P1に対して底が10の対数(常用対数)をとって10倍したものである。簡単な数値例として、入力を1 [W]、出力を2 [W]とすると、この増幅器の電力利得(dB単位)は、10×Log(2 [W]/1 [W])=10×0.301=3 dBとなる。

dBmは、1 [mW]を0 dBmとして、絶対値(電力という物理量の値)を表すものである。式で書くと、dBm=10LogP[mW]となる。簡単な数値例として、1 [W]の電力をdBm単位で表すと、1 W=1000 mWだから、10×Log1000=10×3=30 dBmとなる。

dBについては、以下のサイトを参照。

無線LANでよく見かけるdBなる単位について

differential signal(差動信号)

計測関係の翻訳に、differential signal(差動信号)という言葉がよく出てくる(参考:タイム・ドメイン・リフレクトロメトリを使用した差動インピーダンス測定)。

信号をグランドに対する電位差として1本の信号線で伝送する方式を、不平衡伝送 (unbalanced transmission) と呼び、その信号をシングルエンド信号と呼ぶ。これに対して、信号を位相が180°異なる2本の信号線(信号線ペア)の電位差で伝送する方式を平衡伝送 (balanced transmission) と呼び、その信号を差動信号と呼ぶ。差動信号はシングルエンド信号に比べて、コモン・モード・ノイズに強く(2本の信号線に同じノイズが乗ると、受信端で逆相の信号を位相反転して合成するときにノイズが打ち消される)、信号振幅を小さくして0と1の間の遷移時間を短くして高速伝送できるという特長がある。これらの特長により、現在のほとんどの高速デジタル伝送(PCI Express、シリアルATA、HDMI、USBなど)に使用されている。

差動伝送については、以下を参照。

村田製作所のホームページ > 製品情報 > EMICON-FUN! > ノイズ対策PLAZA > すべて見る > 高速の伝送が、なぜ差動伝送になっているのか?

Digital pre-distortion(デジタル・プリディストーション)

無線通信測定に関する翻訳で、Digital pre-distortion(デジタル・プリディストーション)という言葉が最近よく出てくる(参考:高速で実用的なデジタル・プリディストーションの実現)。

モバイル無線基地局の送信用パワーアンプなどに、デジタル・プリディストーション(DPDと略される)が使用されている。パワーアンプを高効率で動作させるには、飽和領域の近くで動作させる必要があるが、歪み(非線形性)が大きくなる(参考:ワイヤレスLAN 用パワーアンプの図2)。非線形性が大きいと、スペクトラム・リグロースが生じ、隣接チャネル漏洩電力が大きくなり(参考:intermodulation distortion(相互変調歪み))、帯域外エミッションに関する規格に違反する。この歪みの原因であるパワーアンプの非線形性と逆特性となる非線形性を、パワーアンプの直前で適用して、歪みをキャンセルする手法をプリディストーションと呼ぶ(参考:ADSディジタル・プリディストーションとLinearization DesignGuideを使用したマルチキャリア・パワーアンプの線形化のp2の図2)。非線形特性を線形特性にすることから、リニアライゼーション(線形化)と呼ばれることもある。デジタル的に逆特性を求める手法をデジタル・プリディストーションと呼ぶ(参考:Linearizing Power Amplifiers Using Digital Predistortion, EDA Tools and Test Hardware(英語PDF))

phase noise(位相雑音)

図1

図2

図3

無線通信機器のVCO(電圧制御発振器)の測定に関する翻訳で、phase noise(位相雑音)という言葉が出てくる(参考:高周波デザイナーの為のVCO/PLL周波数シンセサイザ設計/評価手法)。

発振器の出力の位相雑音は、理想的な正弦波の振幅と位相が、デバイスの持つ固有のランダムな雑音(熱雑音、フリッカ雑音、ショット雑音など)により変調を受けることにより説明される(図1)。位相雑音は、測定帯域幅当たりの位相変動の2乗平均(RMS)値[rad^2/Hz]で定義される。しかし、測定が容易な物理量は、発振器の出力(基本波)近傍での、位相変動に起因する雑音パワー(雑音側波帯)なので、間接的な位相雑音の定義として、基本波からのオフセット周波数における、1Hz帯域幅当たりの雑音パワーと発振器の基本波パワーとの比をとり、SSB位相雑音[dBc/Hz]で表わすのが一般的である。位相変動が小さい場合には、図2の一番下の式のように位相雑音とSSB位相雑音との間に簡単な関係がある。

位相雑音が重要な理由の1つは、近接する多数の周波数チャンネルを使用する携帯電話などの無線機の局部発振器の位相雑音特性(信号純度)が悪い(図3のLO1)と、隣接チャンネルに大きな信号(周波数f1)が存在する場合に、チャンネル間隔(f2ーf1)と同じオフセット周波数における位相雑音により、IF出力に隣接チャンネル妨害が生じる(周波数(f2-f_LO1)のIF出力が、大きな隣接チャンネル信号(周波数f1)のIF出力(位相雑音の大きなLO1に起因するIF雑音)に隠されてしまう)からである。(参考: mixer(ミキサ)

位相雑音についての詳細は、大阪大学のオープンコースウェアの高周波集積回路設計の講義資料の以下を参照。

位相雑音(Phase Noise)

S-parameter(Sパラメータ)

図1

図2

図3

マイクロ波測定に関する翻訳で、S-parameter(Sパラメータ)という言葉が出てくる。

マイクロ波のような高周波では、電圧、電流による回路や素子の測定は、プローブを近づけるだけで、回路や素子の分布定数が変化してしまうので困難である。2端子回路(1ポート・デバイス)では、入射波の電力と反射波の電力を測定し、反射係数として2端子回路の特性を評価する(図1)。4端子回路(2ポート・デバイス)では、ポート2を特性インピーダンスで終端したときのポート1の入射波と反射波、ポート1を特性インピーダンスで終端したときのポート2の入射波と反射波の電力を測定することにより、反射係数を一般化したSパラメータとして回路を評価する(図2)。S11を順方向反射係数または入力反射係数、S21を順方向伝送係数または伝達利得、S22を逆方向反射係数または出力反射係数、S12を逆方向伝送係数またはアイソレーションと呼ぶ(図3)。因みに、Sパラメータを最初に提唱した人は日本人(参考:黒川兼行)である。

Sパラメータについての詳細は、以下を参照。

広島大学 先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻 天川 修平准教授のホームページのホームページ > Sパラ再入門 > 「Sパラ再入門」(2015-04-01) (pdf)