Kelvin connection(ケルビン接続)

計測関係の翻訳に、Kelvin connection(ケルビン接続)という言葉がよく出てくる(例えば、パラメトリック測定器 アクセサリ・ガイドのp6)。ケルビン接続とは、抵抗測定における4端子法(または4線式と呼ばれることもある)のことである。

デジタル・マルチメータやアナログ・テスタなどで2端子法(2線式)で被測定抵抗を測定する場合は、リード線の抵抗値や端子とリード線の接触抵抗値を含む抵抗値が測定される。被測定抵抗の抵抗値が大きく、リード線の抵抗や端子とリード線の接触抵抗による電圧降下が被測定抵抗による電圧降下に比べて無視できる場合は、2端子法でも測定誤差が少なく問題はない。

被測定抵抗の抵抗値が微小な場合は、2端子法では大きな測定誤差が生じる。これは、電流を流すリード線と電圧を測定するリード線が共用されている(リード線や端子による電圧降下が、被測定抵抗による電圧降下に対して相対的に大きくなる)からである。

この問題を回避するための手法が4端子法(4線式抵抗測定)で、電流を流すリード線とは別に電圧を測定するリード線を被測定抵抗の両端に追加する測定法(被測定抵抗に合計4個の端子ができるので4端子法と呼ばれる)である。このようにして、電流を流す回路と電圧を測定する回路を分けることにより、被測定抵抗による電圧降下のみを正確に測定でき(電圧測定回路にはほとんど電流が流れないので)、被測定抵抗のみの抵抗値が得られる。

4端子法については、以下を参照。

低い抵抗値を4端子法で測定する方法

Measurement Category(測定カテゴリ)

ハンドヘルド測定器に関する翻訳に、Measurement Category(測定カテゴリ)という言葉がよく出てくる(例えば、U1270シリーズ 工業用マルチメータのp8)。

測定器を安全に使用するために、国際安全規格IEC61010では、測定器を使用する場所に関する安全基準を、測定カテゴリとしてCAT I ~ CAT Ⅳ(CATはcategoryの略)に分類している。CAT番号が大きいほど、高エネルギーの過渡現象が発生する可能性が高いことを示している。

例えば、「CAT III 1000V」という表示は、測定カテゴリIII(直接分電盤から電気を取り込む機器の1次側および分電盤からコンセントまでの回路)で使用可能で、電圧定格(対アース)1000 Vrmsまで測定の安全が保証されているという意味である。

測定カテゴリについては、以下を参照。

ハンドヘルド・マルチメータを選択する際の安全性について

リーダー株式会社のホームページ > 技術情報 >測定基礎知識 > 安全規格IEC 61010(JISC1010)について

conversion loss(変換損失)

ミキサなどの周波数コンバータに関する翻訳で、conversion loss(変換損失)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight M1970シリーズ導波管高調波ミキサ(スマート・ミキサ)に移行する理由のp6の仕様)。

conversion loss(変換損失)は、ミキサの性能指標の1つである。RF信号をLO信号でダウンコンバートしてIF信号を得る場合は、入力であるRF信号のパワーをP_rf、出力であるIF信号のパワーをP_ifとすると、

変換損失(dB)= 10log(P_if(mW)/P_rf(mW))、パワーがmW単位の場合

変換損失(dB)=P_if(dBm)- P_rf(dBm)、パワーがdBm単位の場合

である。

ダイオード・ミキサによる周波数変換では、必要な周波数以外の高調波が生じ、それらによるダイオード・ミキサ固有の損失により、理論的な最良の変換損失は3.9 dBである。さらに、伝送ライン損失、インピーダンスの不整合、ダイオードの内部抵抗、ミキサの不平衡などにより、通常4.5 dB~9 dB程度の変換損失が生じる。

ミキサの変換損失については、以下を参照

Tutorial on the double balanced mixer(英語PDF)の4 Mixer loss(21ページ)

High-k

半導体デバイス測定に関する翻訳で、High-kという言葉がよく出てくる(例えば、Agilent B1542A 10 ns パルスIV パラメトリック・テスト・ソリューション)。High-kのkは、比誘電率を表す記号としてκ(ギリシャ文字のカッパ)が使われていたことに由来し、「High-k」とは、比誘電率が大きいという意味である。

CPUやメモリなどのLSIには、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor、金属酸化膜半導体)構造のトランジスタ(MOSFET、FETはField Effect Transistor(電界効果トランジスタ)の略)がスイッチング素子として使われている。MOSFETのゲートに電圧(電界)を印加するか、しないかによる、ソース-ドレイン間の電流のオン/オフ制御(スイッチ)を利用して、論理回路が形成されている。

近年のLSI CMOSプロセスの微細化、高速化の進展に伴い、ゲート電極の下にあるゲート絶縁膜(酸化膜)も薄くなり、量子トンネル効果によるリーク電流が生じやすくなっている。このリーク電流は、LSIの消費電力の増大、発熱、劣化の原因になる。

一方、高速化のためには、ソース-ドレイン間のオン抵抗が低い(電流が流れやすい)ことが必要であり、そのためにはソース-ドレイン間のチャネルのキャリア(電流の運ぶ担い手である電子または正孔)の量を増やす必要がある。このキャリアの量は、ゲートの静電容量×ゲート電圧に比例する。消費電力を増やさないためにゲート電圧は上げられないので、よく知られた静電容量に関する式

C=ε0×k×S/d(C:静電容量、ε0:真空の誘電率、k:絶縁膜の比誘電率、S:電極の面積、d:絶縁膜の厚さ)

から、ゲート絶縁膜を薄くして静電容量を稼ぐのであるが、上記のリーク電流の問題が生じる。

この問題を解決するために、比誘電率の大きな材料をゲート絶縁膜として使用して、リーク電流が生じないようにゲート絶縁膜を厚くしも、十分な電流駆動力のある静電容量が得られるようにしたものが、High-kゲート絶縁膜と呼ばれるテクノロジーである。

MOSFETについては、以下を参照

山形大学大学院理工学研究科廣瀬文研究室 > 半導体デバイス教科書プロジェクト > 第6章 MOSFET

ゲート絶縁膜については、以下を参照。

高誘電率ゲート絶縁膜の作製と評価