in-circuit test(インサーキット・テスト)

電子回路基板の測定に関する翻訳に、in-circuit test(インサーキット・テスト)という言葉がよく出てくる(例えば、複雑なエレクトロニクス環境におけるインサーキット・テストの今後)。in-circuit test(インサーキット・テスト)は、ICTと略されることがある。

電子機器の内部には、電子回路基板(プリント基板、Printed Circuit Board)があり、コンデンサや抵抗、LSIなどの電子部品が実装されている。インサーキット・テストとは、電子回路基板に電子部品が実装された状態(in-circuit)で、個々の部品の端子にプローブ・ピンを接触させて、電子回路基板内部の個々の部品に信号を印加して測定することにより、部品定数(抵抗、キャパシタンス、インダクタンスの値)の間違いがないか、半田付けのオープンやショートがないか、ICのリード浮きがないか、トランジスタやICの動作不良がないか、などを検査することである。

電子回路基板に電源を供給して、実際に電子回路基板を動作させて、電子回路基板全体としての出力が仕様を満たすかどうかを検査することは、ファンクション・テストと呼ばれる。

プリント基板については、以下を参照

JPCA(一般社団法人日本電子回路工業会) > 電子回路ってなーに?

インサーキット・テストについては、以下を参照

一般社団法人 日本電気計測器工業会 > 事業・活動 > 技術解説 > 電気測定器の技術解説 > 半導体・IC測定器・ボードテスタ&試験システム > ボードテスタ

Inter-Symbol Interference(符号間干渉)

高速データ通信測定に関する翻訳に、Inter-Symbol Interference(符号間干渉)という言葉がよく出てくる(例えば、高速データ・レートでのジッタ解析のp3)。Inter-Symbol Interference(符号間干渉)は、ISIと略されることがある。また、シンボル間干渉と訳されることもある。

符号間干渉とは、隣り合う符号同士が干渉して波形が歪む現象である。デジタル・データは、符号化(特定の信号波形で「0」、「1」を表す)して送受信される。最も単純な符号化である、ある一定の期間、高い(Hi)電圧の状態を維持している状態を「1」、低い(Lo)電圧の状態を維持している状態を「0」として、デジタル・データを送受信する場合を考える。

理想的には、データが「1」から「0」や「0」から「1」に変化する時間ポイントでの波形の変化(ここでは、Hi電圧からLo電圧やLo電圧からHi電圧への遷移)は一瞬であり、データは方形波として伝送される。

しかし、高速データ伝送(高周波成分が含まれる)では、伝送線路の表皮効果(周波数が高くなると、導体の表面近くにしか電流が流れなくなり抵抗が増加する現象)や誘電損失(周波数が高くなると、伝送路を構成する誘電体の電気分極が周波数に追随できずに伝送エネルギーの一部が熱となって損失する現象)により、伝送線路がローパス・フィルタのように振る舞う。

方形波の遷移ポイントは急峻な変化をしているので、高周波成分を含んでいることになるが、データ伝送が低速の場合(すなわち、データの「1」や「0」を表すHi電圧やLo電圧の期間が長い場合)は、ローパス・フィルタによるこれらの高周波成分の減衰に起因する方形波の遷移ポイントのなまり(Hi電圧からLo電圧やLo電圧からHi電圧への遷移が緩やかになること)は、後続の符号(信号波形)に影響を与えない。

データ伝送が高速の場合(すなわち、データの「1」や「0」を表すHi電圧やLo電圧の期間が短い場合)は、方形波の遷移ポイントのなまりが後続の符号と重なり(干渉)し、後続の符号が「0」を表す波形か「1]を表す波形かの判定が困難になる。これを、符号間干渉と呼ぶ。

符号間干渉については、以下を参照

リアルタイム・ジッタ解析によるジッタ発生源の検出のp5~p6

SAR(比吸収率)

電磁界シミュレーションに関する翻訳に、SAR(比吸収率)という言葉が出てくる(例えば、マイクロ波エンジニアのための電磁界ソフトウェアのp10)。SARは、Specific Absorption Rateの略である。

携帯電話は、マイクロ波と呼ばれる周波数帯(800 MHz帯、1.5 GHz帯、2.0 GHz帯など)の電波を利用して通信を行っている。マイクロ波は、水分を含む食品を加熱するために電子レンジにも利用されていて、人体への加熱作用が問題になっている。日本では、人体側頭部の近くで使用する携帯電話端末等に対して、局所SARが2 W/kg(許容値)を超えないことが義務づけられている。

SARとは、人体に電磁界が照射されたときの、人体の単位質量当りの吸収電力であり、全身に渡って平均したものを「全身平均SAR」、人体の任意の組織10gに渡って平均したものを「局所SAR」と呼んでいる。

電波の安全性については、以下を参照

総務省 電波利用ホームページ > 電波の利用に関する制度 > 電波の安全性に関する調査及び評価技術 > 周知・情報

gate charge(ゲート電荷)

半導体測定に関する翻訳に、gate charge(ゲート電荷)という言葉がよく出てくる(例えば、B1506A パワーデバイス・アナライザ 主要パラメータ自動測定装置のp6)。

MOSFETは、金属-酸化物-半導体(Metal-Oxide-Semiconductor)構造を持つ電界効果トランジスタ(Field-Effect Transistor)の略である。

nチャネル(n型)MOSFETは、p型半導体基板上にチャネル(電気の通り道)と呼ばれる領域を挟んで離れた2箇所にn型半導体領域(一方にソース電極、もう一方にドレイン電極が接続される)がある。チャネル領域の真上には酸化膜(絶縁層)を挟んで金属電極(ゲート電極)が存在する。

ゲートに電圧をかけていない状態では、ソース(n型半導体領域)とドレイン(n型半導体領域)間のチャネル領域はp型半導体なので(チャネル領域の電流の担い手であるキャリアはホールであり、ソースとドレインのキャリア(電子)と異なるので)、ソースからドレインに電流は流れない。

ゲートに電圧をかけると、ゲートが正に帯電して、ソースとドレインのキャリア(電子)がゲートに引き寄せられてp型半導体のチャネル領域に侵入し、ゲート直下のチャネル領域のp型半導体がn型半導体に反転してキャリアが同じ種類になり、電流が流れる(このことから、nチャネルMOSFETと呼ばれる)。

このように、MOSFETはゲート電圧を制御(オン/オフ)することにより、ソース-ドレイン間の電流を制御(オン/オフ)している。MOSFETをオンにするために(駆動するために)、ゲートを帯電させる(ゲートに注入される)電荷量のことをゲート電荷と呼んでいる。ゲート電荷量が大きいということは、(ゲート電極-酸化膜-チャネル領域で構成されるコンデンサの)充電に時間がかかることを意味し、スイッチング(オン/オフ)に要する時間が長くなる(動作速度が遅くなる)。

p型半導体、n型半導体については、以下を参照

接合容量

MOSFETの動作については、以下を参照

インテル・ミュージアム > トランジスターの仕組み > MOSFET がスイッチとして動作する仕組み

MOSトランジスタとは? MOSトランジスタの動作