TPMS

車載RF/マイクロ波システムの測定に関する翻訳に、TPMSという言葉がよく出てくる(例えば、FieldFoxハンドヘルド・アナライザによる車載RF/マイクロ波システムの検証/トラブルシューティングのp3)

TPMSは、Tire Pressure Monitoring System(タイヤ空気圧監視システム)の略で、自動車のタイヤの空気圧を運転席から監視するためのシステムである。タイヤの空気圧の不足は、自動車はエンジンで動かすので運転していても分かり難く、パンクやタイヤの破裂の原因になり、燃費も悪くなる。このため、米国では2007年、欧州では2012年、韓国では2013年から、TPMSの新車への搭載が義務付けられている。

TPMSには、直接方式と間接方式の2種類がある。直接方式では、タイヤ内部に温度と圧力を検出するセンサーと送信機を取付け(タイヤのエアバルブと一体になったものが多い)、走行中にセンサーからのデータを受信して温度と空気圧を確認する。間接方式では、空気圧が減少すると、タイヤの半径が小さくなり、回転数が他のタイヤより速くなるので、それをABS(アンチブレーキシステム)の車速センサーで検出して空気圧の減少を間接的に計算する。直接方式には、各タイヤ毎の状態を高精度に確認できるという利点があるが、バッテリーに寿命があり、バッテリーの交換時にタイヤの着脱が必要になるという欠点がある。間接方式には、タイヤを着脱しなくても利用可能であるという利点があるが、回転差の測定からの間接測定なので精度はあまりよくない。

TPMSについては、以下を参照。

カーエレ用語 TPMS ティーピーエムエス

TPMS(タイヤ空気圧警報システム)の特徴とは?

LIDAR(ライダー)

デジタイザに関する翻訳で、LIDAR(ライダー)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight U5303A PCIe高速デジタイザ、オンボードプロセッシング搭載のp2)。

LIDARは、RADAR(RAdio Detecting And Ranging、電波探知および測距)のRAdio(電波)をLIght(光)に置き換えた、LIght Detecting And Ranging(光探知および測距)の略で、レーザー光線を使用して周囲の物体の方向や距離を測定する装置である。レーザー光線を用いるので、LIDARはレーザー・レーダーと呼ばれることもある。

電波も光も同じ電磁波であるが、レーダーに用いられる電波の波長は3 mm~3 m程度(周波数にして0.1 MHz~100 GHz)で、ライダーに用いられる半導体レーザーの波長は可視光領域(波長:400 nm程度)~近赤外線領域(波長:1 μm程度)である。一般に、用いる電磁波の波長より小さな物体の検出感度は低下するので、レーダーよりもライダーの方がはるかに小さな物体を検出でき、高分解能画像が得られる。

このことから、ライダーは、PM2.5(直径2.5 μm以下の炭素成分、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩などからなる粒子状物質で、健康に害を及ぼすとされている)などの粒子状物質の観測に用いられたり、航空機に搭載して地形の測量などに利用されている。また、最近では、自動運転カーに搭載するセンサとして開発が進められている。

ライダーについては、以下を参照。

日本気象学会のホームページ > 情報交換 教育と普及活動 > 夏期大学 > これまで(第40回以降)の夏季大学のテーマ 第44回 2010年8月7・8日 気象観測技術の最前線 > ライダーネットワークでエアロゾルの三次元的な動態を捉える

LoRa

無線通信機器設計に関する翻訳に、LoRaという言葉が最近よく出てくる(例えば、IoT-大きな可能性と大きな課題のp3の図1)。

IoT向けの無線規格として、近距離ネットワーク用のBluetooth Low Energy (BLE)ZigBeeWi-SUN、中距離ネットワーク用の802.11ahなどがある。NB-IoT、SIGFOXとともに、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるIoT向けの長距離ネットワーク用の規格として注目されているのが、LoRaWANという規格である。

LoRaは、Long Rangeの略で、長距離通信を低消費電力で行なうためにSemtech社(元はフランスのCycleo社が開発し、Semtech社が買収)が開発したIoT/M2M向けの変調方式(LoRa変調)で、CSS(Chirp Spread Spectrum、チャープスペクトラム拡散)変調に基いたものである。

CSS変調は、搬送波の振幅が一定でその周波数を変化させることにより、デジタル情報(0、1のビット列)を伝送するものであるが、FSK(周波数シフトキーイング)のように、デジタル情報が0のときに低い周波数、1のときに高い周波数を対応させて伝送するのではなく、デジタル情報が0のときに周波数をリニアに減少させ(ダウンチャープと呼ばれる)、1のときに周波数をリニアに増加させて(アップチャープと呼ばれる)伝送する変調方式である(例えばこれのp10~p11)。

スペクトラム拡散では、拡散率(処理利得)を上げると(受信時の逆拡散処理により、信号対(雑音+干渉)の電力比が拡散率の分だけ改善され)、リンクバジェット(受信感度)が増加し、雑音や干渉信号に対する耐性が上がり、到達距離が長くなる。拡散率を上げるということは、拡散信号速度に対してベースバンド信号速度を遅くすることに対応するので、その分データ転送速度は遅くなる。したがって、スペクトラム拡散は、IoT向けの長距離ネットワーク通信に適した変調方式である。

LoRaWANについては、以下を参照。

株式会社ソラコムのblog > アーカイブ > LoRaWANの仕様とネットワークアーキテクチャー

MOST

車載機器測定に関する翻訳に、MOSTという言葉がよく出てくる(例えば、Infiniium Sシリーズ 高分解能オシロスコープのp24)。

最近の自動車には、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる自動車制御用コンピュータが多数搭載され(100個以上搭載している自動車もある)、電子制御により高度な機能(パワートレイン制御(エンジンやトランスミッションの制御)、ボディー制御(パワー・ウィンドウ、ドアロック、ミラーなどの制御)、安全制御(各種センサで取り込んだ車外情報によるブレーキ制御など)など)を実現している。これらのECUをそのデータ専用の個別のワイヤで配線すると、ECUの数が多い場合は、配線の数が膨大になり、配線の重量やスペースが増え、コストの増加、信頼性の低下、故障診断や設計変更が困難になるといった問題が生じるので、これらを解決するために、CAN FDなどの車載ネットワークが用いられている。

自動車には上記の運転制御用のネットワークのほかに、カーオーディオやカーマルチメディアシステムなどのインフォテイメント機器があり、これらのデータを伝送/制御するためのネットワークが必要である。このための規格がMOST(Media Oriented Systems Transport)であり、MOST Cooperationと呼ばれる業界団体により推進されている。通信帯域幅25 Mbpsの第1世代のMOST25、通信帯域幅50 Mbpsの第2世代のMOST50、通信帯域幅150 Mbpsの第3世代のMOST150が規格化されている。

MOSTについては、以下を参照。

車載Networkの話(5)「MOST」