FMCW Radar(FMCWレーダー)

レーダー測定に関する翻訳で、FMCW Radar(FMCWレーダー)という言葉がよく出てくる(例えば、89601B/BN-BHP FMCWレーダー解析 89600 VSAソフトウェア)。

radarは、RAdio Detecting and Ranging(電波探知および測距)の略で、ターゲットに電波を発射して、その反射波を測定することにより、ターゲットの方向や距離を測定する装置である。軍事目的に開発されたものであるが、コンクリート建築物の内部にある鉄筋や配管の位置特定に利用されたり、自動車の衝突防止システム用に研究開発が行われている。

測距(距離測定)のための基本的なレーダー方式として、パルス・レーダーとFMCWレーダーがある。

パルス・レーダーでは、パルス信号を送信してから、目標からの反射信号が受信されるまでの遅延時間(時間差)Δtを測定することにより、目標までの距離Rを求める。Δtは、電波が目標に達して反射されて帰ってくるまでの往復の時間なので、光速をcとすると、

R=cΔt/2 (1)

となる。

FMCWレーダーは、周波数変調された連続波(Frequency Modulated Continuous Wave)を使用して距離を測定する。パルス・レーダーでは、時間差を測定して距離を算出するのに対して、FMCWレーダーでは、送信波と受信波をミキサに入力して、それらの周波数差を測定し、距離を算出する。

送信波の周波数f_tが、f1(送信開始時刻t1)から、送信継続時間Tの間に、リニアに増加して、f2(送信終了時刻t1+T)となる帯域幅(f2-f1)の周波数変調を考える。

時刻t1に送信を開始してから、目標からの反射信号が受信されるまでの時間Δtは、上の(1)式から

Δt=2R/c (2)

なので、目標からの反射信号が受信された時刻(t1+Δt)における送信波の周波数f_t(t1+Δt)は、

f_t(t1+Δt)=f1+(f2-f1)Δt/T (3)

である。

また、この時刻(t1+Δt)での受信波の周波数f_rは、(目標が動いていない場合は)時刻t1に送信された周波数と同じなので、

f_r(t1+Δt)=f1 (4)

である。したがって、時刻(t1+Δt)に(3)式で表される送信波の周波数と(4)式で表される受信波の周波数をミキサに入力すると、その周波数差Δf=(f2-f1)Δt/Tが得られ、(2)式から距離Rが、

R=cΔt/2=cT(f2-f1)/2Δf

のように求まる。

FMCWレーダーについては、以下を参照。

日本財団 図書館 > 技術 > 電気工学.電子工学 > 平成15年度 新マイクロ波標識の開発に関する調査研究中間報告書 > 「次ページ」を数回クリック > 1.2 レーダー方式と技術開発動向(2)FM-CWレーダーの概要

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