breakdown voltage(ブレークダウン電圧)

パワーMOSFETの測定に関する翻訳で、breakdown voltage(ブレークダウン電圧)というよく言葉が出てくる(例えば、B1505Aによる1500 A/10 kVハイパワーMOSFETの特性評価のp4)。

パワーMOSFETは、身の回りのさまざまな電化製品のスイッチング電源やPCのマザーボード上のDC-DCコンバーターなどに広く使用されている。MOSFETの動作原理説明では、P型半導体基板の上部表面の水平(横)方向にソース電極、ゲート電極、ドレイン電極を配した横型MOSFETの図(例えば、このページの図)が用いられるが、パワーエレクトロニクスでは、損失を少なくするために低オン抵抗の縦型MOSFETがよく用いられる。縦型MOSFETは、N型半導体基板の上にN型のピタキシャル層を形成し、その上部表面に高濃度のN型層と低濃度のP型層を2重拡散で形成したもので、ソース電極とゲート電極はその上部に存在し、ドレイン電極はN型半導体基板の下に存在する(例えば、このページの図)。このような構造にすることにより、横型MOSFETよりも電流が流れる経路が広くなり、低オン抵抗という特性が得られる。

縦型MOSFET構造には、拡散形成されたP型層とエピタキシャル形成されたN型層のPN接合による寄生ダイオードと、(拡散形成されたN型層-拡散形成されたP型層-エピタキシャル形成されたN型層)によるNPN型の寄生トランジスタが存在する。ブレークダウン電圧とは、この寄生ダイオードに逆バイアス電圧が印加され、アバランシェ増倍効果(例えば、ここを参照)に起因する大きな電流が流れ始める電圧のことである。この大電流により温度が上昇し寄生トランジスタのベース抵抗が大きくなり、その抵抗での電圧降下が大きくなって、寄生トランジスタがオンになり、破壊に至る。

MOSFETのブレークダウン電圧については、以下を参照。

インフィニオンのホームページ > 製品 > MOSFET > 技術資料他 > Application Notes >
パワーMOSFETの基礎パワーMOSFETアバランシェ設計ガイドライン

SIGFOX

IoTデバイスの測定に関する翻訳に、Z-Waveという言葉が最近よく出てくる(例えば、IoT:デザイン/テストに必要なテクノロジーとソリューションのp4の図1)。

IoT向けの無線通信規格として、近距離ネットワーク用のBluetooth Low Energy (BLE)ZigBeeWi-SUNZ-Wave、中距離ネットワーク用の802.11ah、長距離ネットワーク用のNB-IoTLoRaWANなどがある。SIGFOXは、LoRaWANとともに低消費電力で広い範囲をカバーするLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるIoT向けの長距離ネットワーク用の規格である。

SIGFOXは、2009年にフランスのSIGFOX社が開発した規格で、この規格の推進手段として、1つの国で1つの事業者と契約してその国のネットワークを構築するという戦略をとっている。日本では、京セラコミュニケーションシステムがライセンスを受けている。SIGFOXは、欧州を中心に普及していて、火災報知器などのホームセキュリティ、気象観測、スマートパーキング、水道メーター検針、家畜/ペットモニタリングなどに利用されている。

LoRaWANがLoRaと呼ばれるスペクトラム拡散方式を用いて雑音や干渉信号に対する耐性を上げ、到達距離を長くしている(その分、通信速度は遅くなる)のに対して、SIGFOXは、ウルトラナローバンド(チャネル帯域幅が100Hzと非常に狭いので受信感度を高くでき、雑音、妨害波に強い)、時間/周波数ダイバーシティ(1つのデータを送信するのに、異なる周波数で3回連続して送信することにより、雑音、妨害波による送信の失敗確率が減少)、空間ダイバーシティ(受信可能なすべての基地局で受信することにより、空間内のある方向にのみ存在する妨害波の影響を軽減)を組み合わせて、雑音や干渉信号に対する耐性を上げ、到達距離を長くしている。その分、通信速度は100bpsと非常に遅く、1回当たりのデータのアップロード量が12バイトと小さいが、センサー出力の数値のみを送信するIoT向けには十分であり、ネットワークもそれほど複雑ではないので、回線使用料が100円/年程度と安価になる見込みである。

SIGFOXについては、以下を参照。

いまさら聞けないSIGFOXネットワーク入門

「SIGFOXがIoTの常識を変える」、KCCS黒瀬社長が基調講演

pink noise(ピンクノイズ)

オーディオ測定に関する翻訳で、pink noise(ピンクノイズ)という言葉がよく出てくる(例えば、M9260A PXIeオーディオアナライザ・モジュールのp3)。

熱雑音などに代表されるホワイトノイズ(白色雑音)とは、パワースペクトラムが周波数に依存しない(単位帯域幅当たりのノイズパワーが一定の)ノイズであり、周波数を横軸に、パワーを縦軸にしてプロットすると、ある程度の幅のあるフラットなスペクトラム(例えば、このページの図)を示す。ピンクノイズとは、パワースペクトラムが周波数に反比例する(単位帯域幅当たりのノイズパワーが周波数の逆数に比例する)ノイズで、1/fノイズとも呼ばれる。ピンクノイズは、ホワイトノイズを-3dB/octaveのローパスフィルターに通すことにより得られる。ホワイトという名称は、可視光の範囲のすべての波長(周波数)の光を同じ割合で混ぜると白色になるというアナロジーから来ている。同様にピンクという名称は、可視光の範囲の光を、周波数fに対して強さが1/fとなるような割合(周波数の低い赤色の光が多くなるような割合)で混ぜるとピンクになるというアナロジーから来ている。

オーディオ測定では、ピンクノイズは特に人間の聴感に合わせた周波数特性を調べるために使用される。耳で感じる周波数の違いは対数的(500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、…のように周波数が2倍になるごと(1オクターブ高くなるごと)に、音が等間隔で高くなっているように感じる)なので、音の強さを測定する際に、それぞれの周波数ポイント(500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、…)を中心にして、2倍ずつ広く分割した測定帯域幅(オクターブバンドと呼ばれる)で測定する。したがって、このような測定では、(単位帯域幅当たりのノイズパワーが一定の)ホワイトノイズを使用すると、高音(周波数が高いポイントの測定帯域幅)でノイズパワーが大きな数値になる(ノイズパワー=単位帯域幅当たりのノイズパワー×測定帯域幅なので)が、(単位帯域幅当たりのノイズパワーが周波数の逆数に比例する)ピンクノイズを使用すると、オクターブバンドごとに一定の大きさ(フラット)になり、人間の感覚と一致する数値になる。

ピンクノイズについては、以下を参照

株式会社ソフトウェアクレイドルのホームページ > 技術コラム > 装置設計者のための騒音の基礎 第1回 > オクターブバンド分析

Z-Wave

IoTデバイスの測定に関する翻訳に、Z-Waveという言葉が最近よく出てくる(例えば、IoT対応民生用エレクトロニクスデバイスのp11)。

IoT向けの無線通信規格として、近距離ネットワーク用のBluetooth Low Energy (BLE)ZigBeeWi-SUN、中距離ネットワーク用の802.11ah、長距離ネットワーク用のNB-IoT、SIGFOX、LoRaWANなどがある。Z-Waveは、IoT向けの近距離ネットワーク用の規格で、特にスマートホームのネットワーク用として普及が進んでいる。Z-Waveは、無線による照明制御から発展したもので、デンマークのZen-sys社が2003年に開発した規格(2009年に米国のSigma Designs社がZen-sys社を買収)である。Z-Waveアライアンスを設立して、規格の普及、開発を推進している。

Z-Waveの特長は、900MHz帯のISMバンドを使用していることで、これにより、家庭で一般的に使用されている2.4GHz帯のISMバンド(無線LANや電子レンジ)との干渉がなく、障害物があっても回折により電波が回りこみやすく、通信距離が長くなる。また、デバイスが1社による独占供給なので、完全互換性が得られるという利点はあるが、スマートホーム市場でさらに普及するための問題点になる可能性もある。

Z-Waveは、欧米では普及しているが、日本では、900MHz帯の電波利用の再編の影響(2012年に免許不要の920MHz帯が使用可能になる)や法規制(2013年5月10に、無線通信による電源オン操作が可能になる)のために、普及が遅れている。

Z-Waveについては、以下を参照。

IoT時代の無線規格を知る【Z-Wave編】

thermistor(サーミスタ)

データ収集システムに関する翻訳で、thermistor(サーミスタ)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight 34970A データ収集/スイッチ・ユニットのp2)。

温度測定は、非接触式と接触式に大きく分類される。非接触式の温度測定では、被測定物の表面から放射されている赤外線を検出して温度を測定する放射温度計が用いられる。接触式の温度測定では、熱電対RTD(測温抵抗体)、サーミスタが用いられる。サーミスタという用語は、Thermally Sensitive Resistor(熱に敏感な抵抗体)の発音を省略したものと言われている。サーミスタは、RTDに比べて、小型で、温度の変化に対する抵抗の変化が大きく(感度が高く)、安価なので、温度センサとして工業用途はもちろん、民生用機器(炊飯器やエアコン、電子体温計、リチウムイオン電池、自動車など)に広く使用されている。

サーミスタは、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタに分類される。NTCサーミスタは、負の温度係数(温度が上がると、抵抗値が減少する)を持ち、マンガン 、ニッケル、コバルトなどを成分とする酸化物を焼成したセラミックス(半導体)材料を用いるものが多い。PTCサーミスタは、正の温度係数(温度が上がると、抵抗値が増加する)を持ち、チタン酸バリウムに微量の希土類元素を添加してキューリー点を調整した材料を用いるものが多い。PTCサーミスタは、室温付近からキュリー点までは抵抗値がほぼ一定で、キュリー点を超えると急激に抵抗値が増加する性質があり、温度検出用途だけでなく、加熱保護や過電流保護などに使用されている。

サーミスタについては、以下を参照

村田製作所のホームページ > 製品情報 > サーミスタ

quantum bit(量子ビット)

量子ビット制御に関する翻訳に、quantum bit(量子ビット)という言葉が出てくる(例えば、Quantum Researchersツールキット+Labber)。量子ビットは、Quビット、Qビット、クビットとも呼ばれる。

通常のコンピュータの世界でのビット(1ビット)は、電圧が低いまたは高いで表される、0(偽)または1(真)の2つの状態の内のどちらか1つの状態を表わす(このようなビットを、量子ビットに対する用語として古典ビットと呼ぶ)。量子コンピュータの世界では、古典ビットに対応するものとして量子ビットが用いられる。1量子ビットは、量子力学の2準位系の基底ベクトルである2つの独立した状態を|0>と|1>として、

a|0>+b|1> (a、bは、|a|^2+|b|^2=1を満たす複素数。)

という状態ベクトル(量子力学の波動関数)で表される(|0>である確率が|a|^2、|1>である確率が|b|^2)。これは、観測するまでは、|0>の状態と|1>の状態が同時に存在していること(|0>の状態と|1>の状態の重ね合わせ状態であること)を意味していて、観測すると、確率|a|^2で|0>の状態に決まり、確率|b|^2で|0>の状態に決まることを意味する。2量子ビットは、同様に、

a|00>+b|01>+c|10>+d|11> (a、b、c、dは、|a|^2+|b|^2+|c|^2+|d|^2=1を満たす複素数。)

のように4つの状態を同時に表現可能(4つの状態の重ね合わせ状態を実現可能)である。n量子ビットでは、2^n個の状態を同時に表現可能(2^n個の状態の重ね合わせ状態を実現可能)である。古典ビットでは、nビット(n個のビット並び)で表現可能な2^n個の組み合わせ(00…0~11…1)の内の1つしか表現できない。このことが、n量子ビットとn古典ビットの違いであり、2^n個の状態を同時に表現可能な量子ビットを用いた量子コンピュータにより、超並列計算が可能になる理由の1つである。

量子コンピュータで計算を行なうには、量子ビットに対する操作(演算)が必要であるが、量子力学では重ね合わせの原理(全確率(|状態ベクトル|^2)の保存)が成り立つことから、状態ベクトル(量子ビット)の操作(遷移または時間発展)をユニタリ変換により行なうことができる。すなわち、n量子ビット(2^n個の状態の重ね合わせ状態)に対してユニタリ変換を1回行なうだけで、同時に2^n個の状態に対する並列計算を行なうことができる。これが、量子コンピュータで超並列計算が可能になるもう1つの理由である。

このように量子コンピュータの原理は(量子エンタングルメントを除いて)比較的分かり易いが、量子ビットの初期化、演算、読み出し(観測)をどのようにハードウェアで実装するかは、非常に難しい。

量子計算の原理については、以下を参照。

フレッシュマンに贈る量子計算の概略と基礎

量子エンタングルメントによる量子情報処理

量子ビットのハードウェア実装については、以下を参照。

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その1~素子構造~)

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その2~スピンとは何か~)

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その3~データの初期化と読み出し~)

量子コンピュータの基本素子・量子ビットのハードウェア実装(シリコン編その4~データの書き込み・演算~)

MUSIC

レーダーのシミュレーションに関する翻訳に、MUSICという言葉が出てくる(例えば、Keysight W1908 車載レーダーライブラリのp2の図1)。

MUSICは、MUltiple SIgnal Classificationの略で、アレイ・アンテナを用いて、波源(電波の発射元)の個数とそれらの方向を推定するための手法(アルゴリズム)である。マイクロフォン・アレイを用いて音源の方向を推定するためにも利用されている。

アレイ・アンテナにより波源の方向(電波が飛んで来る方向という意味で到来方向(Direction of Arrival、DOA)と呼ばれる)を推定する手法として最も基本的なものは、ビームフォーミング法である。この手法では、アレイ・アンテナを構成する各アンテナ素子からの信号の位相を調整することにより、メインローブ(アレイ・アンテナの指向性が最大となる方向で、主ビームとも呼ばれる)を形成し、それを全方向にわたって走査することにより、アレイ・アンテナからの出力が大きくなる方向を波源の方向として求める。この手法では、近接した方向を分離するために(高い角度分解能を得るために)指向性の鋭いメインローブが必要であり、そのために、素子数の多い(したがって、高価な)アレイ・アンテナが必要になるという欠点がある。少ない素子数で角度分解能を大幅に高める手法として、MUSIC法がある。MUSIC法も軍事技術での研究が元になっているが、素子数が少なく安価に高分解能が得られることから、自動車に搭載する衝突防止用ミリ波レーダーや電子機器のノイズ源の探知などでの利用が研究されている。

MUSIC法は、RALPH 0. SCHMIDTが「Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation」という論文で名付けた方法で、ここで詳細に説明するのは難しいが、概要は以下のようである。

K個のアンテナ素子が配置されたアレイ・アンテナに、L個の波源から角度θ_l(l=1、2、…、L)で平面波が到達すると、各素子で受信される信号は、行路差d_k×sinθ_l(k=1、2、…、K)に起因する位相差φ_k(l)=2π×(d_k×sinθ_l/λ)のみが異なる信号である。したがって、l番目の到来波の時刻tにおける各素子での複素信号をs_l(t)として、各アンテナ素子が無指向性で素子間結合がない場合は、各素子での時刻tにおける受信信号は、

x(k,t)=Σs_l(t)×exp(jφ_k(l))+v(k,t)、Σはl=1からLまでの和、v(k,t)は平均0、分散σ^2の各素子の内部白色雑音(熱雑音)で各素子毎に独立であると仮定する

と書ける。上の式の各素子の受信信号x(k,t)、k=1、2、…、Kをまとめて転置ベクトルX(t)=[x(1,t)、x(2,t)、…、x(K,t)]^Tで表し、exp(jφ_k(l))=exp(j(2π×(d_k×sinθ_l/λ)))、k=1、2、…、LをまとめてベクトルA=[a(θ_1)、a(θ_2)、…、a(θ_L)]で表し(ベクトルAは各素子での位相差を表し、方向ベクトル(ステアリングベクトル、モードベクトル)と呼ばれる)、s_l(t)、k=1、2、…、Lをまとめて転置ベクトルS(t)=[s_1(t)、s_2(t)、…、s_L(t)]^Tで表わし、v(k,t)、k=1、2、…Kをまとめて転置ベクトルV(t)=[v(1,t)、v(2,t)、…、v(K,t)]^Tで表わすと、

X(t)=AS(t)+V(t)

と書ける。ここで、各素子の受信信号の相関(コヒーレンス)を表わす相関行列Rxxは、

Rxx=E[X(t)X(t)~H]、E[・]はアンサンブル平均または時間平均、X(t)~HはX(t)のエルミート共役を表わす
=AE[S(t)S(t)~H]A~H+σ^2I、IはK×Kの単位行列
=ASA~H+σ^2I、S=E[S(t)S(t)~H]は到来波の相関行列 (1)

と表される。線形代数学の結果を用いると、入射するK個の信号に相関がない場合(インコヒーレントの場合)は、Rxxは、その固有値λ_kと固有ベクトルv_k、k=1、2、…、Kに分解でき、

Rxx=VΛV~H、ここで、V=[v_1、v_2、…、v_K]、Λ=対角成分が固有値λ_k(k=1、2、…K)の対角行列

となる。各素子での信号と雑音が無相関の場合は、固有値には、

λ_1≧λ_2≧…≧λ_L>λ_L+1=…=λ_K=σ^2

の関係があり、L個の固有値は雑音電力σ^2より大きく、(K-L)個の固有値はσ^2に等しくなる。この結果から到来波の個数Lがわかる。

また、σ^2の固有値に対応する固有ベクトルを[e_L+1、e_L+2、…、e_L+K]=[v_L+1、v_L+2、…、v_L+K]と書くと、(1)式から、

Rxxe_i=(ASA~H+σ^2I)e_i=λ_ie_i=σ^2e_i、(i=L+1、…、K)

が成り立つことから、ASA~He_i=0、(i=L+1、…、K)が得られる。AとSのランクはKで正則なので(入射するK個の信号に相関がないと仮定しているので)、A~He_i=0、(i=L+1、…、K)である。上でA=[a(θ_1)、a(θ_2)、…、a(θ_L)]と定義しているので、これは、

a~H(θ_l)e_i=0、(l=1、2、…、L;i=L+1、…、K) (2)

と書け、到来波の方向ベクトルと雑音の固有ベクトルが直交していることがわかる。

MUSIC法では、

Pmusic(θ)=a~H(θ)a(θ)/Σ|a~H(θ_l)e_i|^2、Σはi=L+1からKまでの和

で表される関数を定義し、θを掃引することにより、θが到来波の方向と一致すると(すなわち、θ=θ_1、θ_2、…、θ_Lのときに)、(2)式からPmusic(θ)の分母がゼロになり、Pmusic(θ)が鋭いピークを示すので、高分解能で到来方向を推定できる。

MUSIC法については、以下を参照。

狭帯域信号の到来方向推定

MUSIC法による高分解能推定

Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation(MUSIC法の原論文)

RTD

データ収集システムに関する翻訳で、RTDという言葉が出てくる(例えば、Keysight 34970A データ収集/スイッチ・ユニットのp2)。

RTDは、Resistance Temperature Detectorの略で、測温抵抗体とも呼ばれる。RTD(測温抵抗体)は、温度が上昇すると電気抵抗が増加するという金属の性質(金属原子は一般に、最外殻の電子を放出して陽イオンになりやすく、放出された電子は、多数の金属原子の最外殻の重なりを自由に動き回れるので、電気を通しやすいが、温度が上昇すると、電子を放出した陽イオンの振動が激しくなり自由電子の走行が阻害され抵抗が増加する。室温付近では、金属の電気抵抗は温度にほぼ比例する)を利用した温度検出器である。工業用温度測定には、広い温度範囲で温度と抵抗の関係が一定で温度係数(単位温度当たり抵抗変化)が大きく、化学的に安定で経年変化の少ない白金(Pt)が使用され、日本工業規格、JIS C 1604-2013で規定されている。

測温抵抗体の抵抗値の測定には、2線式、3線式、4線式がある。2線式は、測温抵抗体の両端にリード線をつなぎ、定電流を流して電圧降下を測定しオームの法則から抵抗を計算する。2線式は、リード線が長い(リード線の抵抗が大きい)と誤差が大きくなるので、ほとんど使用されない。3線式は、測温抵抗体の一方の端に1本のリード線(抵抗値:r1)、もう一方の端に2本のリード線(抵抗値:r2と抵抗値:r3)をつないだものを使用する測定で、測温抵抗体の抵抗値をRとして、この文献の図のように、固定抵抗(抵抗値R1=R2の2つの抵抗)、可変抵抗(抵抗値R3)で、R1とR3+r2、R2とR+r1が対になるように(対向するように)ブリッジ回路を構成し、可変抵抗R3を調整して検流計に電流が流れないようにすると、R1×(R3+r2)=R2×(R+r1)が成り立つので、r1=r2の場合(リード線の長さが同じ場合)はR3=Rとなり、リード線の抵抗の影響を回避して測温抵抗体の抵抗値が得られる。4線式は、ケルビン接続によりリード線の影響を回避する方法である。

RTD(測温抵抗体)については、以下を参照

エム・システム技研のホームページ > エムエスツデーサイト > 計装豆知識 > センサ > 測温抵抗体の導線方式

DSRC

車載RF/マイクロ波システムの測定に関する翻訳に、DSRCという言葉がよく出てくる(例えば、FieldFoxハンドヘルド・アナライザによる車載RF/マイクロ波システムの検証/トラブルシューティングのp3)

DSRCは、Dedicated Short Range Communications(専用狭域通信)の略で、路車間(道路上に設置された無線設備(路側機)と自動車に搭載された車載器間)の狭い範囲での5.8 GHz帯を利用した近距離無線通信である。日本では、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses、社団法人電波産業会)のARIB STD-T75として標準化されている(米国では、IEEE 802.11p)。

DSRCを用いたサービスとして最も有名なのが、ETC(Electroic Toll Collection、有料道路自動料金収受システム)である。ETC以外には、駐車場、ガソリンスタンド、ファーストフード店のドライブスルーでの利用も可能になってきている。また、リアルタイムかつ大容量の道路交通情報や安全運転情報を提供するITS(Intelligent Transport System、高度道路交通システム)の中心となるものである。

DSRCについては、以下を参照。

一般社団法人 建設電気技術協会のホームページ > 技術に関する話題 基礎講座 > 162 DSRC(狭域通信)の現状と動向

CXPI

シリアルバスの測定に関する翻訳に、CXPIという言葉が出てくる(例えば、InfiniiVision Xシリーズ オシロスコープ用シリアル・バス・オプションのp2)。

最近の自動車には、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる自動車制御用コンピュータが多数搭載され(100個以上搭載している自動車もある)、電子制御により高度な機能(パワートレイン制御(エンジンやトランスミッションの制御)、ボディー制御(パワー・ウィンドウ、ドアロック、ミラーなどの制御)、安全制御(各種センサで取り込んだ車外情報によるブレーキ制御など)など)を実現している。また、これらの機能は互いに関連することが多いので、各ECU間でデータ通信を行って協調動作する必要がある。しかし、各ECUをそのデータ専用の個別のワイヤで配線すると、ECUの数が多い場合は、配線の数が膨大になり、配線の重量やスペースが増え、コストの増加、信頼性の低下、故障診断や設計変更が困難になるといった問題が生じる。

電子制御機能の内のボディー制御には、シンプルで低コストのLINの使用が適しているが、応答が遅いという欠点がある(マスターデバイスが順次スレーブデバイスをポーリングして通信を許可する方式で、スレーブ間通信はマスターを経由する必要があるので)。そこで、低コストで応答性を高めた車載通信規格として、日本発の国際標準を目指して社団法人自動車技術会が推し進めているのが、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)である。CXPIでは、CSMA/CR(Carrier Sense Multiple Access / Collision Resolution、搬送波感知多重アクセス/衝突解消)と呼ばれる方式を使用して、バスへのアクセスがなければどのスレーブも送信が可能で、同時に送信した場合もそれを調停する仕組みを備えているため、LInに比べて応答性が向上する。

CXPIについては、以下を参照。

日本発の車載LAN規格「CXPI」は「CANとLINのイイとこどり」