design of experiments(実験計画法)

シミュレーションに関する翻訳で、design of experiments(実験計画法)という言葉がよく出てくる(例えば、W2309EP/ET DDRバスシミュレータおよびW2317EP/ET DDRバスシミュレータ分散コンピューティング8パックのp2)。design of experiments(実験計画法)はDOEと略されることがある。

実験計画法は、イギリスの統計学者R.A. Fisherが、1920年代に、どのような作付け要因(品種、土壌、天候、肥料、農薬など)で最も農作物がよく育つのかを実験するために、効率的な(実験回数の少ない)統計的手法を考え出したのが最初と言われている。

実験計画法とは、さまざまな要因(原因)が、それぞれどの程度、品質特性(結果)に影響を与えるかを定量化するための実験計画である。通常は、多数の要因が存在し、それぞれの要因が取り得る値(実験計画法では水準と呼ばれる)も多数存在するので、現実的な実験回数ですべての場合を実験することはできない。実験計画法では、このような場合に、直交表(縦(行)に実験番号、横(列)に要因の種類を割り当てた表に水準を記載したもので、どの2つの列を比べても各水準の個数が同数になっている)を用いて実験回数を削減する。また、得られたデータを定量化するために、分散分析(各要因の効果の大きさの計算)が行われる。

実験計画法の詳細については、以下を参照

東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センターのホームページ > ディスカッションペーパー > 2008 > 2008-MMRC-211 品質工学ノート

Touchstone format(Touchstoneフォーマット)

Sパラメータ測定に関する翻訳で、Touchstone format(Touchstoneフォーマット)という言葉がよく出てくる(例えば、衛星性能の長時間リモートモニター Keysight 高周波USBパワーセンサのp7)。

Touchstoneは、1984年に設立されたEEsof社(現在は、Keysight社の事業部の1つでKeysight EEsof EDAと呼ばれる)が開発した高周波回路シミュレータの名前で、このシミュレータ用のSパラメータを保存するためのASCIIテキストファイルのフォーマットがTouchstoneフォーマットである。Touchstoneというシミュレータは無くなったが、nポートデバイスの特性を表わすパラメータをASCIIテキストファイルで保存するためのフォーマットとして、Touchstoneフォーマットが業界の事実上の標準になっている。

基本的なファイルフォーマットは、コメント行、オプション行(周波数の単位、パラメータの種類、パラメータのフォーマット、基準インピーダンスを記述)、データ行で構成されている。

現在では、IBIS Open ForumがTouchstone File Format Specification Version 2.0を作成している。

Touchstoneフォーマットについては、以下を参照。

SnP (Touchstone) File Format(英語ページ)

Touchstone File Format Specification Version 2.0(英語pdf)

DMT

100Gイーサネットなどの広帯域通信測定に関する翻訳で、DMTという言葉が出てくる(例えば、M8195A 65 GSa/s任意波形発生器 M8197A マルチチャネル同期モジュールのp2)。

DMTは、Discrete MultiTone(離散マルチトーン)の略で、ADSLなどのデジタル加入者線(Digital Subscriber Line)に用いられている変調方式である。この変調方式では、無線通信におけるOFDMのように、利用可能な帯域を多数のザブチャネル(サブキャリア)に分割し、各サブチャネルにデータを割り振って高次変調を用いることにより高速伝送を実現している。伝送時に、いくつかのサブチャネルの伝送特性(S/N比やビットエラーレート)がノイズなどにより悪化しても、それらのチャネルには、伝送特性に応じてノイズに強いより低次の変調方式が用いられるので、DMTは非常に周波数利用効率の高い変調方式である。

このような理由から、DMTは、100Gイーサネットなどの高速通信でも、PAM4などとともに有力な変調方式の候補になっている。

100GイーサネットのためのDMTについては、以下を参照

Discrete Multi-tone Technology for 100G Ethernet (100GbE)(英語pdf)

HSPA+

無線通信計測関係の翻訳に、HSPA+という言葉がよく出てくる(例えば、UXMワイヤレス・テスト・セットのp5)。

移動通信システムは、第1世代(アナログ方式の自動車/携帯電話)、第2世代(PDCやGSM方式のデジタル携帯電話)、第3世代(W-CDMAやCDMA2000方式の携帯電話)、第3.9世代(LTE)、第4世代(LTE-Advanced)と進化してきている。

第3世代のW-CDMAでは、データ変調方式としてBPSKまたはQPSKが用いられ、当初の最大パケット通信速度は384 kbps~2 Mbps(静止状態)であった。このデータ転送速度を高速化する技術として、HSPA(High Speed Packet Access)が開発された。HSPAでは、電波状態が良好な場合は、より高速なデータ変調方式(16QAM)や符号化方式(誤り訂正能力の低い符号化方式)が用いられ、最大下りデータ転送速度が14.4 Mbpsになった。HSPAは、3GPPの「Release 5」で定義されていて、HSPA技術を搭載した携帯電話は第3.5世代(3.5G)と呼ばれることがある。

HSPAをさらに高速化した技術がHSPA+である。HSPA+では、さらに高速なデータ変調方式(64QAM)、MIMO、デュアルセル(搬送波を2つ使用)を用いて、最大下りデータ転送速度が84.4 Mbpsになる。HSPA+は、3GPPの「Release 7」、「Release 8」、「Release 9」で定義されていて、HSPA+技術を搭載した携帯電話は「3.5Gと3.9Gの間」と呼ばれることがある。

HSPA+については、以下を参照。

3Gの発展はまだまだ続く──HSPA+、DO Advancedを提供するクアルコム

HSPA+