C rate(Cレート)

バッテリ測定に関する翻訳で、C rate(Cレート)という言葉がよく出てくる(例えば、移動体デバイスのバッテリ寿命を最適化するための10のヒントのp15)。C rateはCapacity rateの略である。

バッテリの容量(キャパシティ)とは、満充電の状態のバッテリから、バッテリの端子電圧が所定の終止電圧に達するまで放電させてたときに取り出すことのできる電気(電荷)量(C(Coulomb)単位)である。バッテリの場合は、Ah(アンペア時)やmAh(ミリアンペア時)の単位で表されることが多い(1 Ah=1 A×3600 s=3600 C)。例えば、20 Ahの容量のバッテリは、20 Aの電流を1時間(10 Aの電流を2時間、5 Aの電流を4時間、…)流すことのできる電気(電荷)を持っていることを意味している。

C(Capacity)レートとは、バッテリ容量に対する放電(充電)電流値の比(放電(充電)電流(A)/容量(Ah))であり、バッテリの放電(充電)特性を表わすときに用いられる。例えば、20 Ahの容量のバッテリを1 CのCレートで放電するとは、20 Aの放電電流で放電することを意味し、20 Ahの容量のバッテリを0.5 CのCレートで放電するとは、10 Aの放電電流で放電するこを意味する。

Cレートの単位記号と電荷量の単位記号は同じCであるが、意味が異なること(CapacityのCとCoulombのC)に注意する必要がある。

Cレートについては、以下を参照。

リチウムイオン電池の豆知識の「リチウムイオン電池に関する用語 ③Cレート」

slew rate(スルーレート)

電源の翻訳に、slew rate(スルーレート)という言葉がよく出てくる(例えば、スイッチング電源の測定のp14)。

スルーレートとは、入力波形の変化にどの程度出力波形が追従できるかを示す定量的な指標である。立ち上がり時間と立ち下がり時間が0秒の理想的な矩形波(パルス波)を入力したときの、出力波形の立ち上がりまたは立ち下がり領域での単位時間当たりの電圧変化として定義され(通常、パルス振幅の10%から90%に(90%から10%に)変化するのにかかる時間を測定して求める)、V/μs単位で表されることが多い。

スルーレートは、理想的には∞(立ち上がり/立ち下がり時間が0秒なので)であるが、信号源側や負荷側に容量成分(コンデンサ)が存在するために、そのコンデンサを充放電するのに時間がかかり、有限の値になる。このような制限により、スルーレートが小さいと、波形が歪む(矩形波が台形波になったり、正弦波が三角波になる)。

スルーレートについては、以下を参照。

ローム株式会社のホームページ > 電子部品が基礎からわかる! エレクトロニクス豆知識 > オペアンプとは? > スルーレート

RLS、LMS

デジタル変調解析に関する翻訳で、RLS、LMSという言葉が出てくる(例えば、W1902 デジタル・モデム・ライブラリのp3)。RLSはRecursive Least Square(再帰的(逐次的)最小2乗法)の略で、LMSはLeast Mean Square(最小2乗平均)の略である。

現在、携帯電話、液晶テレビ、DVD/ブルーレイプレーヤなど、身の回りの電化製品はほぼすべてデジタル化され、デジタル信号処理によりさまざまな機能が実現されている。このようなデジタル信号処理技術の中に、反射や干渉信号、雑音などが存在する信号環境から必要な信号を抽出するための技術があり、適応信号処理と呼ばれている。

適応信号処理とは、環境の変化(反射/干渉信号や雑音が時々刻々変化する環境)に応じて(適応して)、自動的に自身の特性を変化させて(自身の特性に環境と逆の特性を追加して)、最適な出力(反射/干渉信号や雑音が除去された信号)を得ることである(身近な例では、ノイズキャンセリング・イヤホンがある)。

上のような適応信号処理では、入力信号x(k)を未知の環境(システム)に印加したときに、そのシステムにより反射/干渉信号や雑音が付加された結果としての応答(出力信号d(k))を推定する(システム同定と呼ばれる)必要がある。システム同定には、通常、FIRフィルタで実現された適応フィルタを未知システムと並列に接続し、未知システムの応答d(k)と適応フィルタの応答y(k)との差信号(誤差信号e(k))がゼロに近づくように、FIRフィルタの係数を調整するアルゴリズム(適応アルゴリズムと呼ばれる)が用いられる。このアルゴリズムの種類に、LMSとRLSという手法がある。

LMSとRLSの詳細は非常に難しいが概要は以下のようである。

誤差信号e(k)がゼロに近づくようにするためには、誤差信号e(k)のパワーJ=E[e(k)^2]を最小化すればよい。

適応フィルタ(FIRフィルタ)の応答y(k)は、入力信号x(k-j)とFIRフィルタの係数(重みベクトル)h_j(k)との畳み込みで与えられるので、

J=E[e(k)^2]
=E[(d(k)-y(k))^2]
=E[(d(k)-Σh_j(k)x(k-j))^2]

となり、誤差パワーJはFIRフィルタの係数h_j(k)の2次関数となる。したがって、最適解(極小値)が存在し、解析的に求められる。しかし、時間平均E[…]を計算するので、その間にシステムの応答が変化すると誤差が大きくなることや解析的に求めるための逆行列の計算に時間がかかることから、LMSアルゴリズムでは、時間平均誤差ではなく誤差の瞬時値を用いて、最急降下法により係数を更新しながら最適値を求める。

RLSアルゴリズムでは、過去のすべての時刻での入力x_l(k)と出力y_l(k)の関係を重みベクトルh(k)を使用して、

y_l(k)=h(k)~Tx(l)、l=1,2、…、k、~Tは転置

と表したときに、時刻kでの誤差信号e_l(k)=d(l)-y_l(k)の2乗和(e_1(k)^2+e_2(k)^2+…+e_k(k)^2)を最小にするh(k)を求める。このとき、時刻が1つ進む毎に入力と出力の関係式が1つ追加され、それを利用して逐次的にフィルタ係数が最適される。これは、長時間のデータを用いてフィルタ係数を最適化することを意味するので、入力と出力の関係式が新しいほどその関係式を多く利用するように忘却係数を導入して、2乗和の計算で重みを付ける。

LMSについては、以下を参照。

Toshiya SAMEJIMA’s Personal Page > Lectures > 音響情報処理工学演習 > 11回目の授業(7月8日)(尾本)
RLSについては、以下を参照。

筑波大学 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 牧野昭二教授のホームページの<Journals and Transactions> > 54. S. Makino and Y. Kaneda, ”A new RLS adaptive algorithm based on the variation characteristics of a room impulse response, ” J. Acoust. Soc. Jpn, vol. 50, no. 1, pp. 32-39, Jan. 1994 (in Japanese).の [PDF]

power integrity(パワーインテグリティ)

オシロスコープ測定に関する翻訳に、power integrity(パワーインテグリティ)という言葉がよく出てくる(例えば、N7020Aパワー・インテグリティ測定用パワー・レール・プローブ)。

power integrity(パワーインテグリティ)は「電源品質」とも訳されることがあるが、一般に、電子機器のプリント基板の電源層/電源ラインやグランド層の配置や形状などに起因するノイズの混入や供給電圧の安定性などの電源品質を表わす。

昔は、細い配線で経路や曲がり具合を気にせずプリント基板上のICに電源とグランドを接続すれば動作した。しかし、近年、FPGA、ASIC、DSP、CPUなどのLSIの低電圧化、大電流化により、それらに供給する電源の品質が重要になっている。低電圧化により、必然的に供給される電流が大きくなるが、大電流により配線抵抗が小さくても大きな電圧降下が生じる(電流Iが大きいと、配線抵抗Rが小さくても、オームの法則から配線の両端での電圧降下IRが大きくなる。IRドロップと呼ばれる)。低電圧化により動作電圧が小さい(したがって、動作電圧のマージンも小さい)ので、このようなIRドロップによりLSIが誤動作を起こしやすくなる。

この問題を解決するには、配線抵抗R(電源層とグランド層の間(PDN(Power Distribution Network、電源分配回路)のインピーダンス)を小さくする必要があり、電源層の面積を大きくしたり、バックアップコンデンサを使用して過渡的に大きな電流を供給して電圧を安定化するなどの方法がある。

パワーインテグリティについては、以下を参照。

パワー・インテグリティ(PI)

シグナル・インテグリティとパワー・インテグリティの基礎