オシロスコープ測定の翻訳で、memory depth(メモリ長)という言葉がよく出てくる(例えば、InfiniiVision 1000 Xシリーズ オシロスコープのp17)。
デジタル・オシロスコープの波形表示プロセスでは、アナログ波形を高速なA/Dコンバーターで、一定の時間間隔毎にサンプリング(デジタイズ)して、(ディスプレイに表示するためのデジタル処理に時間がかかるので)一時的に高速な波形メモリに記録しておく。
メモリ長(レコード長とも呼ばれる)とは、この高速波形メモリに記録できる波形のポイント数(サンプル数)のことである。連続して記録できる波形の時間長は、サンプリング間隔(1/サンプリング・レート)とメモリ長の積なので、例えば、最高サンプリング・レートが1Gサンプル/秒、メモリ長が10Kポイントのオシロスコープの場合は、波形を10μsの時間だけ連続してディスプレイに表示できる。このようなメモリ長の小さいオシロスコープでは、時間軸の設定を遅くすると、ディスプレイ全体に波形が表示されなくなるので、時間軸の設定が遅い場合は、サンプリング・レートを自動的に低く設定して、波形をディスプレイ全体に表示するようになっている。しかし、サンプリング・レートが低くなるとエリアシング誤差が発生しやすくなる。
逆に、大容量メモリを搭載したオシロスコープでは、時間軸設定を遅くしても最高サンプリング・レートでディスプレイに表示できるので、エリアシング誤差が発生せず、長い時間範囲にわたって波形を詳細に観測できる。
オシロスコープのメモリ長については、以下を参照。
組み込みエンジニア必須のスキル – オシロの基本を身に着ける > 第5回 観測する波形からオシロスコープを選ぼう – その1