無線通信測定に関する翻訳で、envelope tracking(エンベロープ・トラッキング)という言葉がよく出てくる(例えば、平均パワー/エンベロープ・トラッキング・デザインで使用できるソリューションと測定ツール)。
携帯電話やスマートフォンなどのモバイル無線機器やその基地局には、電波を送信するためのパワーアンプが内蔵されていて、電力消費の大きな部分を占めている。モバイル無線機器のバッテリー駆動時間の増加やその基地局の電力消費の削減のために、パワーアンプの高効率化(省電力化)は常に大きな課題であり続けている。このようなパワーアンプの高効率化の手法の1つとして、エンベロープ・トラッキング方式というものがある。
近年、モバイル無線機器ではOFDMなどの複雑な変調方式が採用され、パワーアンプへの入力信号のピーク電力と平均電力との比(ピーク対アベレージ電力比)が大きくなっている。このような変調信号を(規格を満たすように)低歪みで増幅して送信するには、パワーアンプに一定の大きなバイアス電圧をかけておく必要がある。言い換えると、ピーク電力時の入力信号に対して、歪みが大きくならないように圧縮領域に入るギリギリ手前で動作するようにバイアス電圧をかけるおく必要がある。これは、平均電力時には過剰なバイアス電圧となるので、パワーアンプの効率の低下につながる。
エンベロープ・トラッキング方式は、パワーアンプへの入力変調信号のエンベロープ(包絡線)を検出(トラッキング)して、それに応じて瞬時に(歪みが生じないレベルに)バイアス電圧を変化させることにより、パワーアンプの消費電力を低減する技術である。
エンベロープ・トラッキングについては、以下を参照。
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