Layer 1(レイヤー1)

通信の測定/シミュレーションに関する翻訳で、Layer 1(レイヤー1)という言葉がよく出てくる(例えば、W1918 LTE-Advancedベースバンド検証ライブラリのp2)。

携帯電話やPCでの電子メール、Webサイト閲覧など、ネットワーク通信が社会活動や生活において不可欠なものになって久しい。携帯電話やPCのメーカーが異なっていても(それらに使用されている通信用デバイスが異なっていても)、伝送経路や伝送形態が異なっていても(電波で伝送されていても、光ファイバーで伝送されていても)、確実に通信が行えるのは、ネットワーク上で通信を行なう際の手順やルール(プロトコルと呼ばれる)が決められている。

コンピュータネットワーク通信の初期には、異なるメーカーの機器間での通信が困難だったので、特定のメーカー(機器)に依存しないデータ通信のプロトコルの必要性が高まり、1984年にISO(国際標準化機構)により、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルと呼ばれる通信システムの設計方針が定められた。OSI参照モデルは実装を考慮していない机上の規格であることや、ちょうどその頃TCP/IP が急速に普及してきたこともあり、OSI参照モデルに準拠した製品は普及しなかったが、ネットワーク通信の基本的な考え方を示すモデルとして広く使用されている。

OSI参照モデルには、7つの階層があり、

第7層(レイヤー7、L7):アプリケーション層(アプリケーションに固有の規定)
第6層(レイヤー6、L6):プレゼンテーション層(データフォーマットに関する規定)
第5層(レイヤー5、L5):セッション層(通信の開始/終了に関する規定)
第4層(レイヤー4、L4):トランスポート層(通信の信頼性(誤り訂正など)に関する規定)
第3層(レイヤー3、L3):ネットワーク層(異なるネットワーク間の通信(データのルーティングなど)に関する規定)
第2層(レイヤー2、L2):データリンク層(同じネットワーク内の通信(パケットの送受信など)に関する規定)
第1層(レイヤー1、L1):物理層(物理的な接続(電気信号の変調方式やケーブル)に関する規定)

と呼ばれている。

OSI参照モデルについては、以下を参照

基礎からわかる!パソコン入門・再入門 > パソコン基礎知識 > インターネットの仕組み > 6.プロトコルとは

IDM、fabless、foundry(IDM、ファブレス、ファンドリー)

EDA(エレクトロニック・デザイン・オートメーション)に関する翻訳で、IDM、fabless、foundry(IDM、ファブレス、ファンドリー)という言葉がよく出てくる(例えば、Premier Communications Design Softwareのp3)。

IDMは、Integrated Device Manufacturerの略で「垂直統合型デバイスメーカー」と訳されることが多い。半導体メーカーのうち、設計から製造、販売まで自社ですべてを行なう(垂直統合で行なう)企業(あるいはビジネスモデル)がIDMと呼ばれる。現在の代表的なIDMとしてIntelやサムスン電子があるが、1980年代から1990年中頃にかけての日本の半導体メーカーはすべてIDMで、世界の半導体売上高トップ10社の半数程度に名前を連ねていたが、現在トップ10社に入るのは東芝の半導体部門だけであり、それも売却の予定である。

1990年代以降、半導体集積回路の微細化が進むに連れて、半導体工場の建設に莫大な投資が必要になったため、IDMに対して、ファブレス、ファンドリーと呼ばれる水平分業型のビジネスモデルが出てきた。ファブレスとは、fab(fabrication facility、製造工場)を持たず、製造はファンドリーに任せ、半導体の設計とマーケティング、販売のみを行なう企業(あるいはビジネスモデル)である。現在の代表的なファブレスとして、Qualcomm、NVIDIA、AMDなどがある。ファンドリー(foundry)とは、もともとは鋳造工場という意味であるが、自社で半導体の設計は行わず、ファブレス企業から製造を受託する(IDM企業からも製造を受託することがある)企業(あるいはビジネスモデル)である。現在の代表的なファンドリーとしては、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)があり、ファンドリービジネスの50%以上のシェアを持っている。

IDM、ファブレス、ファンドリーについては、以下を参照。

日の丸半導体 衰退招いた「分業嫌い」の真相 電子立国は、なぜ凋落したか(4)

分業を嫌ったから日本は衰退した?ファブレス/ファンドリーで成功するには

SENT

車載用シリアルバスの測定に関する翻訳に、SENTという言葉が出てくる(例えば、オシロスコープ測定ツールによる車載用シリアルバスの効果的なデバッグ)。

近年、自動車の燃費や二酸化炭素の排出基準の強化に伴い、エンジンの最適制御がますます求められるようになってきている。そのためには、さまざまなセンサからの高精度の情報をECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる自動車制御用コンピュータが受け取って、それに基づいてエンジンを制御する必要がある。従来は、アナログ信号としてセンサーから情報を受け取っていたが、自動車の電動化、高機能化に伴う電磁ノイズの増加に起因するグランド電位の変動や伝送時の信号劣化、ECUでのA/D変換誤差などにより、センサ出力値の精度が低下して、高度な制御が困難になってきている。このような問題を解決するために、センタとECU間をデジタル信号で通信するためのプロトコルが開発された。これが、SENTである。SENTは、Single Edge Nibble Transmission(シングル・エッジ・ニブル伝送)の略で、SAE(Society Automobile Engineers、米国自動車技術協会)で規格化された通信プロトコル(SAE-J2716)である。

SENTは、センサーからECUへの片方向のポイントツーポイントのシリアル通信である。2つのパルスの立ち下がりエッジ(シングル・エッジ)間の時間の長さで、4ビット(16通りの状態、1ニブルと呼ばれる)を表し、それをひとかたまり(最小単位)としてデータを伝送するので、シングル・エッジ・ニブル伝送(SENT)と呼ばれる。

SENTについては、以下を参照。

日立評論のホームページ > バックナンバー > 2013年 > 2013年11月号 > パワートレイン用高精度センサーの展開の「3.2 センサー信号伝達での高精度化」

dynamic range(ダイナミックレンジ)

測定器の翻訳で、dynamic range(ダイナミックレンジ))という言葉がよく出てくる(例えば、発生頻度の低い信号の広帯域/高ダイナミック・レンジ測定による複雑なシステム/環境の特性評価)。

最も広い意味での測定器のダイナミックレンジは、測定器に入力可能な最大信号レベルと測定器で識別可能な最小信号レベル(ノイズフロアレベル(表示平均雑音レベル))との差(比)である。

しかし、測定器では、信頼性と再現性の高い信号レベルの測定値が得られなければ意味がないので、与えられた測定の不確かさで測定可能な最大信号レベルと最小信号レベルの差は、上のダイナミックレンジの定義よりも小さくなる。

ダイナミックレンジを制限する要因として、スペクトラム・アナライザでは、入力信号を増幅する増幅器や周波数変換するミキサの利得圧縮(入力信号レベルが高いと、信号レベルが圧縮され不正確になる)や、2次高調波歪み3次相互変調歪み位相雑音(入力信号レベルが高いと、測定器の内部で発生するこれらの歪み成分により、測定対象の低レベル信号を識別できなくなる)などがある。

ダイナミックレンジについては、以下を参照。

RF/マイクロ波スペクトラム・アナライザのダイナミック・レンジの最適化