デジタル信号シミュレーションに関する翻訳で、FIR filter(FIRフィルタ)という言葉がよく出てくる(例えば、EEsof EDA SystemVueのp3)。
FIRはFinite Impulse Response(有限インパルス応答)の略で、FIRフィルタのインパルス応答の継続時間が有限である(フィルタの応答が過去の有限個の入力データのみで決まる)ことを意味する。これに対して、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタの応答は、FIRフィルタとは異なり、フィードバックが用いられることにより無限の過去からの入力データの影響を受け、安定性の問題が出てくるが、回路規模が小さく高速に動作するという利点がある。
FIRフィルタの簡単な例として、株式チャートのトレンドを見るために使用される移動平均がある。ある銘柄のX日の5日移動平均M(X)は、(X-4)日の株価Y(X-4)、(X-3)日の株価Y(X-3)、..、X日の株価Y(X)を用いて、(Y(X-4)+Y(X-3)+Y(X-2)+Y(X-1)+Y(X))/5で求められる。同様に、(X+1)日の5日移動平均M(X+1)は(Y(X-3)+Y(X-2)+Y(X-1)+Y(X)+Y(X+1))/5となる。このようにして得られた移動平均線は、株価の日々の変動(高周波成分)が平均化(フィルタリング)されて滑らかな線になる。
FIRフィルタについては、以下を参照。
Texas Instruments社の「DSP の基礎・トレーニング」ページの第 2 章 デジタル信号処理入門 (デジタルフィルタ)