FIR filter(FIRフィルタ)

デジタル信号シミュレーションに関する翻訳で、FIR filter(FIRフィルタ)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent EEsof EDA SystemVue 2012のp2の一番下の「デジタル・フィルタ・シンセシス」の項)。

FIRはFinite Impulse Response(有限インパルス応答)の略で、FIRフィルタのインパルス応答の継続時間が有限である(フィルタの応答が過去の有限個の入力データのみで決まる)ことを意味する。これに対して、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタの応答は、FIRフィルタとは異なり、フィードバックが用いられることにより無限の過去からの入力データの影響を受け、安定性の問題が出てくるが、回路規模が小さく高速に動作するという利点がある。

FIRフィルタの簡単な例として、株式チャートのトレンドを見るために使用される移動平均がある。ある銘柄のX日の5日移動平均M(X)は、(X-4)日の株価Y(X-4)、(X-3)日の株価Y(X-3)、..、X日の株価Y(X)を用いて、(Y(X-4)+Y(X-3)+Y(X-2)+Y(X-1)+Y(X))/5で求められる。同様に、(X+1)日の5日移動平均M(X+1)は(Y(X-3)+Y(X-2)+Y(X-1)+Y(X)+Y(X+1))/5となる。このようにして得られた移動平均線は、株価の日々の変動(高周波成分)が平均化(フィルタリング)されて滑らかな線になる。

FIRフィルタについては、以下を参照。

Texas Instruments社の「DSP の基礎・トレーニング」ページ第 2 章 デジタル信号処理入門 (デジタルフィルタ)

ディジタルフィルタの概要

mark ratio(マーク率)

高速デジタル信号測定に関する翻訳で、mark ratio(マーク率)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent N4970A PRBSジェネレータ10 Gb/sと内蔵クロック・テスト・アクセサリ(TG2P1A)のp1の「主な特長」)。

デジタル・データは2進数として「0」と「1」の組み合わせで表される。このデータは、「0」に対応する電圧の低い状態と「1」に対応する電圧の高い状態を組み合わせたデジタル信号として伝送される。このとき、ある時間内での「1」を表す電圧の高い状態の割合をマーク率と呼んでいる。特にGaAsデバイスを用いた超高速光通信での伝送では、マーク率が偏るとデバイス特性が変化し、誤動作の原因となるので、伝送時にマーク率が1/2になるようにコード化される。

UI(ユニット・インターバル)

UI(ユニット・インターバル)

ジッタ測定に関する翻訳で、UI(ユニット・インターバル)という言葉がよく出てくる(例えば、クロック・ジッタ解析によるシリアル・データのBERの低減のp24の「位相雑音とジッタ」)。UIは、Unit Intervalの略である。

UI(ユニット・インターバル)とは、1クロック周期(デジタル信号(ビット列)の1つのビットの長さ)に対応する時間である。ジッタとはデジタル信号の時間軸上の揺らぎであり、その大きさをUI(ユニット・インターバル)を単位として表すことが多い。

UI(ユニット・インターバル)については、
株式会社アルティマの新人エンジニアの赤面ブログ 『クロック信号の精度表記について』の「UI (ユニットインターバル)について」の図を参照。

de-emphasis(ディエンファシス)

高速デジタル伝送に関する測定の翻訳で、de-emphasis(ディエンファシス)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent N4965AマルチチャネルBERT 12.5 Gb/sのp2)。

PCI Express、USB3.0、シリアルATA、HDMIなどの高速シリアル・インタフェースでは、数Gbpsあるいは数十Gbpsでのデータレートで高速伝送が行われる。このような高速伝送では、高周波成分の損失が大きくなり、伝送線路がローパス・フィルタとして働き、歪みにより符号間干渉が生じアイ・パターンがつぶれる。そこで、伝送線路を通った後の高周波成分の減衰に合わせて、あらかじめ送信側で低周波成分を減衰させておき、伝送線路を通った後でちょうどバランスするようにして、歪みをなくすことによりアイを開く。この手法をディエンファシスと呼ぶ。

ディエンファシスとは逆に、伝送線路を通った後の高周波成分の減衰に合わせて、あらかじめ送信側で高周波成分を持ち上げておき、伝送線路を通った後でちょうどバランスするようにして歪みをなくし、アイを開く手法をプリエンファシスと呼ぶ。しかし、プリエンファシスを行うと振幅が大きくなり信号の遷移時間が長くなるので、高速伝送では不利になる。

また、受信側で高周波成分の損失をイコライザで持ち上げる手法もある。

ディエンファシスについての詳細は、以下を参照。
USB 3.0規格のFAQ(2) ―― SuperSpeed USBはいかにして高速伝送を実現しているのか?

LVDSを基礎から理解する、さらなる高速/長距離化を可能にする技術(後編)

TOKYO TECH OPENCOURSEWARE大学院理工学研究科(理学系・工学系) > 電子物理工学専攻 > VLSI工学の第13回高速回路設計技術