aggressor(アグレッサ)

高速デジタル信号測定に関する翻訳で、aggressor(アグレッサ)という言葉がよく出てくる(例えば、N4965AマルチチャネルBERT 12.5 Gb/sのp1に「真のクロストーク評価のためのアグレッサ信号の遅延掃引機能」という記述がある)。

上述のように、「クロストーク」という言葉に関連して「アグレッサ」という言葉が出てくる。クロストークとは、信号が伝送線路を伝わるときに発生する電磁界が、隣接する伝送線路と結合(容量性結合や誘導性結合がある)して、影響を与える現象である。このとき、影響を与える側をアグレッサと呼び、影響を受ける側をビクティム(victim)と呼ぶ。元々、クロストークは漏話と呼ばれるように電話回線で問題になった現象であるが、最近の高速デジタル回路の高速化、高密度化に伴い、クロストーク解析が極めて重要になっている。

クロストークについては、株式会社エルセナの高速伝送設計者必見!スペシャリストコラム第8回 クロストーク入門を参照。

effective number of bits(有効ビット数)

オシロスコープやデジタイザに関する翻訳で、effective number of bits(有効ビット数)という言葉がよく出てくる。ENOBと略されることもある。

デジタイザ(A/Dコンバータ)の分解能は、16ビット(2の16乗分の1、すなわち65,536分の1を区別可能)とか24ビット(16,777,216分の1を区別可能)というように、ビット数で表されるが、これは信号にノイズや歪みが含まれていない場合である。実際には、信号がデジタイザやオシロスコープに入力されるとノイズや歪みが付加され、その分だけ分解能(ビット数)が低下する。このように、システム全体で付加されるノイズや歪みをすべて考慮した分解能を有効ビット数(ENOB)と呼んでいる。

ENOBは、SINAD(信号対ノイズ+歪み比)を測定することにより、以下の式から求められる。
ENOB [ビット] = ( SINAD [dB] – 1.76 ) / 6.02

有効ビット数については、以下を参照。
AD変換器の有効ビット数
デジタイザを選ぶときの仕様の解釈
オシロスコープの品質を評価する際の正しい指標について

trigger(トリガ)

オシロスコープ測定の翻訳で、trigger(トリガ)という言葉がよく出てくる(例えば、InfiniiVision 4000 Xシリーズ オシロスコープのp26~p27)。

trigger(トリガ)とは、辞書を引くと「引き金」とか「きっかけ」という訳があるが、オシロスコープ測定では、「トリガ」あるいは「トリガをかける」と訳す。

デジタル・ストレージ・オシロスコープは、波形を時間軸上で表示する装置であるが、表示するために波形をAD変換(デジタイズ)してメモリに保存する。トリガがかかっていない状態(フリーラン状態)では、AD変換されたデジタル・データでメモリがいっぱいになり、メモリ上の古いデータが次々に新しいデータに書き換わっている状態なので、メモリ上のデータを表示すると流れるような画面になり、目的の波形を安定して表示できない。

そこで、目的の信号を表示するために、波形を保存するタイミング(条件)を決める必要があり、この操作を「トリガをかける」と言う。例えば、立ち上がりエッジが特定の電圧を超えたとき(これがトリガ条件である)に一定の時間波形を捕捉(AD変換してメモリに保存)して表示する。トリガ条件には、さまざまな種類(エッジ・トリガ、パターン・トリガ、パルス幅トリガなど)がある。

オシロスコープのトリガついては、以下を参照。
【デジタル・オシロスコープ活用入門】第6回 トリガの達人になる
オシロスコープの「トリガ」と「アーミング」

オシロスコープの動作については、以下を参照
オシロスコープの基礎

root-raised cosine filter(ルート・レイズド・コサイン・フィルタ)

デジタル移動通信測定の翻訳で、root-raised cosine filter(ルート・レイズド・コサイン・フィルタ)という言葉がよく出てくる(例えば、ディジタルRF受信機デザインのテストおよびトラブルシューティングのp5)。「RRCフィルタ」と略されることもある。

これを簡単に説明するのは難しいが、概要は以下のようである。デジタル情報(0と1)に対応するパルス列(無限個の高調波成分を含む)のベースバンド信号をそのまま変調して搬送波に乗せて電波として飛ばすと、その搬送波にベースバンド信号の高調波成分がシフトされ、隣接チャンネル干渉が生じる。これを防ぐために、ベースバンド信号をフィルタに通過させて帯域制限する。しかし、一般にパルス波形がフィルタを通過すると、パルス波形がなまり符号間干渉が生じて復調時に0と1の区別がつかなくなり、信号品質が劣化する。ナイキストは0と1の判定ポイントでこのような符号間干渉が生じないフィルタの伝達特性の条件を求めた。これをナイキストの条件と言い、この条件を満たすフィルタがレイズド・コサイン・フィルタ(2乗余弦フィルタ)である。このことから、レイズド・コサイン・フィルタはナイキスト・フィルタと呼ばれることもある。この特性を送信側と受信側に分割し、その一方の特性のフィルタをルート・レイズド・コサイン・フィルタと呼ぶ。

ナイキスト・フィルタの詳細については、以下を参照。
ディジタル移動無線の基礎
ディジタル変復調
Theory of Root-Raised Cosine Filter(英語pdf)