変調/復調測定に関する翻訳に、sideband(側波帯)という言葉がよく出てくる(例えば、アナログ復調 Xシリーズ 測定アプリケーションN9063Cのp3)。sidebandは、側帯波と訳されることもある。
側波帯とは、通常は、搬送波を変調することにより、搬送波の近傍に生じる周波数成分として説明される。
最初に、最も簡単な例として、振幅変調により、単一の周波数成分ω_mのみを持つ正弦波信号を、周波数ω_cの正弦波の搬送波に乗せる場合を考える。
変調されていない搬送波V_cは正弦波なので、
V_c(t)=Acos(ω_ct)
と表される。
振幅変調なので、搬送波の振幅Aを、変調信号V_m(t)=A_mcos(ω_mt)により、A(1+kcos(ω_mt))に変調すると(k=A_m/Aは変調度と呼ばれる)、変調された搬送波は、
V_AM(t)=A(1+kcos(ω_mt))cos(ω_ct)
と表される。
上の式を三角関数の公式を用いて展開すると、
V_AM(t)=Acos(ω_ct)+(1/2)kAcos((ω_c+ω_m)t)+(1/2)kAcos((ω_c-ω_m)t)
となり、周波数軸上で搬送波周波数ω_cから上下に周波数ω_m離れた位置(ω_c+ω_mとω_c-ω_m)に側波が生じる。
次に、振幅変調で、単一の周波数成分の正弦波ではなく、ω1~ω2の帯域(帯域幅ω2-ω1)を持つ信号を、周波数ω_cの正弦波の搬送波に乗せる場合を考える。
この場合も、上と同様に考えることができ、搬送波周波数ω_cの上下の、ω_c-ω2~ω_c-ω1の帯域(帯域幅ω1-ω2)とω_c+ω1~ω_c+ω2の帯域(帯域幅ω1-ω2)に側波が生じる。
このように、搬送波周波数の上下の帯域に生じる側波を側波帯と呼んでいる。搬送波周波数より上の側波帯は上側波帯(upper sideband)、下の側波帯は下側波帯(lower sideband)と呼ばれる。
角度変調(周波数変調や位相変調)の場合も同様に計算できるが、非常に複雑で、単一の周波数成分ω_mのみを持つ正弦波で変調する場合でも、振幅がベッセル関数で表され、周波数間隔がω_mの無限個の側波が生じる。
振幅変調、角度変調については、以下を参照。
高知工科大学 野中 弘二 教授のホームページ > 通信概論(2013年2年2Q)講義ノート2 および 通信概論(2013年2年2Q)講義ノート3