Volatility(変動性、変動率、ボラティリティ)

金融工学では、金融派生商品の価格変動幅の比率のことだが、オプション取引では原資産価格の変動幅を年率で表示したりする。つまり、一定期間内における株価や金利などの変動性を示したものだ。大雑把に言えば、価格変動が大きければボラティリティは高くなり、小さければ低くなる。

投資市場では、ボラティリティのことを「ボラ」と略称し「ボラ高」とか言ったりするが、経済関連のドキュメントなどに出てくる「ボラ高」を、まさか魚市場でボラ(鰡)の値段が高くなっているのかと勘違いして翻訳する人は、……おるまい。……多分。

Engagement(エンゲージメント)

Engagementは、このコラムでも再登場である。この単語を訳すときには、特に注意が必要なだけに再度コメントしておこう。

Engagementを安易に”関係”と訳す翻訳者がいたりする。文脈によっては差し支えない場合もあるが、その定義が明確になされていないと、意味の通じない支離滅裂な訳文になったりする。特に、ITやマーケティング分野のドキュメントに出てくるengagementを訳す場合には注意が必要だ。プロの翻訳者なら、この言葉の持つ概念を十分に理解しておきたい。

辞書を調べても、どうも概念が今一つ掴めないという翻訳者のために、敢えて日本語的に一言に訳して説明するとしたら、「双方(互い)の成長に貢献し合う関係」「相互貢献的な関係性」とでもなるだろう。単なる、”関係”(relationship)を意味しているのではない、ということは理解できるだろう。

RORO index(RORO指数、Risk On/Risk Off指数)

RORO indexを”ロロ指数”といきなり訳してしまう翻訳者がいたりする。内容を理解した上でのことなら100歩譲ってもいいが、せめて”リスクオン・リスクオフ指数”として欲しい。金融工学におけるリスクオンとリスクオフの意味を理解しておくことが大切だろう。

ただし、リスクオンとリスクオフを理解したからといって、リスクオンの時はRORO指数が高くなりリスクオフでは低い値を示すものだと早合点してはいけない。

ちょっと難しくなるが、RORO指数は、関連性のないような金融資産のマーケットが同時に動く確率を指数化したもで、単にリスクオン・オフの高低を示したものではない。

Multiplexing technology(多重化技術)

電気通信とコンピューターネットワーク技術はますます高度に複雑化してきており、伝送路をどう有効に活用するかがカギとなっている。ローカライザーにとって、技術的知識と語学力は不可欠である。

モバイル機器が手放せない社会。誰もが耳にしたことのあるパケット通信やイーサネットでは、Statistical multiplexing(統計多重化)技術が活かされている。衛星通信では、電気信号の周波数帯を情報ごとに割当てる周波数分割多重化が用いられている。

ここでざっと、主な多重化技術の種類を挙げると、周波数分割多重化 (Frequency Division Multiplex=FDM)、時分割多重化 (Time Division Multiplex=TDM)、符号分割多重化 (Code Division Multiplex=CDM)、空間分割多重化 (Space Division Multiplex=SDM)、波長分割多重化 (Wavelength Division Multiplex=WDM)、偏波分割多重化 (Polarization Division Multiplex=PDM)などがある。

これらの種類は分岐して、さらに進化した技術が生み出されてきているが、このサイトで追々説明していくこととしよう。

Risk premium(リスクプレミアム)

またまた怒られそうだが、カタカナ表記の訳語です。
※カタカナ表記だからこそ、その使用にあたっては意味をしっかりと理解しておきたい。

この言葉は、投資関連のドキュメントなどによく出てくるが、意味は文字どおり、リスク(risk)分への対価(希少価値=付加価値=上乗せ収益=premium)のこと。投資にはリスクが付きもの。リスクの大小によって見返りも違ってくる。

投資に対する収益性を「期待収益率」とか「期待リターン」と単に呼称している場合は、その中に「リスクプレミアム」も含まれていると考えるべき。”期待”という言葉を使うと誤解を招くもとともなるので、risk premiumと出てきたら”リスク”を明確に表記した方がいい。

Stored procedure(ストアドプロシージャ)

英語を単にカタカナにしただけかっ!と怒られそうだが、データベースシステムにおいては、昔からこれで通じる。データベースに対する一連の処理(例えば、社員の給料を会社の口座から引き出して、各人の口座に振り込むといったような処理)手順を一つのプログラムにしてデータベース管理システムに保存されたものと理解すればいい。まさに一連の手続きを定義してシステムに格納したプロシージャ(プログラム)といったところだ。永続格納モジュール(Persistent Storage Module)と呼ばれる場合も稀にあるが、それぞれ厳密に訳した方がいいだろう。

このプロシージャはデータベースサーバに保存され、クライアントから呼び出し命令を送信するだけで直ぐに処理が実行できるため、SQL(Structured Query Language)文を一つひとつ送るのに比べれば、はるかにネットワークのトラフィックを削減できるというメリットがある。が、当然デメリットもある。

Interrupt(割り込み)

中断と訳したいところだろうが、CPUの説明にinterruptと出てきたら「割り込み」と訳す。車列間や電車待ちの列への割り込みはブーイングものだが、コンピューターの世界では割り込みがないと作業が進まなくなってしまう。例えば、CPUが周辺機器など(キーボードとか)から受け取る要求なども割り込みである。CPUが何らかのプログラムの処理中にキーボード(外部ハードウェア)が押されたりすることを”ハードウェア割り込み(hardware interrupt)”と言う。割り込みはコントローラなどを経由してCPUに伝えられ、CPUは受け取った信号に応じた処理を行うわけだ。因みに、software interrupt(SWI)は「ソフトウェア割り込み」のこと。

Advocate(アドボケイト)

<わからないようなわかるような…カタカナ表記の限界>
セールス(営業)担当者がリストに上げたリード(見込み客)をスコアリング(採点=評価付け)しクオリファイ(選別=分類)して他のディビジョン(部課)にエスカレーションする(対応を引き継ぐ)ことで、リードナーチャリング(見込み客の育成プロセス)でのアプローチ(売り込み)によって(サスペクト(潜在見込み客=購入するかどうかわからない消費者)がプロスペクト(顕在見込み客=購入してくれそうな消費者)と進化し、さらにファースト・バイヤー(1回購入者)からリピーター(複数回購入者)と発展して、カスタマー(顧客)という立場からロイヤル・カスタマー(信奉顧客=忠誠心の高い顧客)とも呼ばれるクライアント(得意客=常連顧客)となれば、サポーター(支持者=応援顧客)とかアドボケイト(代弁者=熱心な支持者)の仲間入りとなり最終的にはパートナー(協力者=仲間)になれるかも。

Qualified lead(クオリファイドリード、有望な見込み客)

マーケティング分野(特に営業に関して)leadと出てきたら、見込み客(リスト)という意味の可能性が高い。Leadという単語には、他動詞、自動詞、名詞、形容詞とさまざまな活用があるため、文脈によって訳は無数に考えられるが、プロの翻訳者であれば訳に迷うことはないだろう。しかし、leadの前後に他の単語がくっついた途端に、解釈に戸惑う翻訳者が多いようだ。例えば、Lead Nurturing(リードナーチャリング)、Lead scoring(リードスコアリング)、Lead Qualification(リードクオリフィケーション)をどう訳すかで迷ったりするようだ。業界では、すべてカタカナ表記にしても通じるが、これらの意味はしっかりと理解しておきたい。

因みに、suspect(サスペクト)やprospect(プロスペクト)も見込み客と訳されているケースがあるが、フェーズによって意味が異なってくるので、leadも含めてすべてを一緒くたに”見込み客”と訳してしまうと混乱が生じることになるので注意が必要だ。文脈を読み取って正確な訳を!

Roll out(ロールアウト)

訳自体はそのままカタカナ表記すれば済むが、文脈を理解した上でカタカナ表記すべきだろう。分野によっては、解釈に混乱をきたす用語である。意味は文字どおり、roll(転がり)out(出る)で、世の中に製品やサービスを送り出すことだが、新規展開、運用開始、公開、市場投入、リリースなどなど、解釈は多岐に可能だ。

分野が異なれば、訳語に注意したい。基礎的な知識が不足しているのか、文脈を理解せずに翻訳しているケースをよく見かける。技術分野ではメインメモリーに空き領域がない状態のときに、補助記憶装置に優先順位の低いデータやプロセスを退避させることをロールアウトと言うが、そのことを知らないと”ちんぷんかん”な訳になったりする。

マーケティングの世界では、セールスレター(メール)などをリストに基づいて発送(発信)する作業のことを指すのだが、大量にDMを発送する作業もロールアウトである。

間違っても、rule outと見間違えて、「ありえない!」と言われないように。