無線通信測定に関する翻訳で、chip rate(チップ・レート)という言葉がよく出てくる(例えば、3GPP W-CDMA携帯電話端末のデザインとテストのp5)。
CDMA方式の携帯電話や無線LANなどには、秘匿性があり干渉/妨害信号に強いスペクトラム拡散という通信方式が使用されている。スペクトラム拡散には、周波数ホッピング(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)方式と直接拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)方式がある。
直接拡散方式は、PSKやFSKなどによる1次変調(狭帯域変調)の後に、擬似ランダム・ビット・シーケンスにより生成したPN(擬似ランダム・ノイズ)コード(拡散コード)を使って2次変調(広帯域変調)を行う方式である。この拡散コードは、「1」と「-1」がランダムに現れる擬似乱数であり、このコードのビットは、ベースバンド信号(送信データ)のビットと区別するために「チップ」と呼ばれ、そのデータ・レートがチップ・レートである。したがって、2次変調後の変調波はチップ単位で変化している。また、 送信データ速度(ビット・レート)と拡散コード速度(チップ・レート)との比は、拡散率(Spreading Factor)と呼ばれている。
スペクトラム拡散とチップ・レートについては、以下を参照。