permeability(透磁率)

磁性体1
材料測定に関する翻訳に、permeability(透磁率)という言葉がよく出てくる(例えば、LCRメータおよびインピーダンス・アナライザを用いた誘電率/透磁率の測定ソリューション)。

磁性体とは、ミクロな磁石(磁気双極子モーメント)の集合体と考えられる。磁気双極子モーメントの源は、磁性体を構成する原子内の電子の軌道運動や電子や原子核そのものの自転に起因した微小円形電流である。誘電体に電界を印加したときと同様に、磁性体に磁界を印加すると、磁性体内のミクロな磁石が整列し、磁性体が磁化される。真空中での磁界の強さと磁性体内での磁界の強さとの比で比透磁率が定義される。しかし、誘電体に電界を印加した場合とは異なり、比透磁率は1より大きいとは限らない。強磁性体の鉄では500~5000、常磁性体のアルミニウムでは1.0002、反磁性体の銅では0.9999である。常磁性体、反磁性体は、比透磁率を1として扱ってよい。また、外部磁界をゼロにしても、磁性体内部の磁化の強さはゼロに戻らない(残留磁化)。これは、鉄を磁石に付けて、その後離すと、鉄が磁石になる(磁化される)現象である。

磁石、磁性、磁界(磁場)、磁束密度についての数式を使わない説明については、以下を参照

私編 雑科学ノート > 磁石の話

透磁率については、以下を参照

わかりやすい高校物理の部屋 > 第6編 電気と磁気 > 第3章 電流と磁場 > 第1節 磁場 > 1 磁場、第3節 電流が磁場から受ける力 > 1 電流が磁場から受ける力、第4節 磁束密度 > 1 磁束密度

permittivity(誘電率)

誘電率1
材料測定に関する翻訳に、permittivity(誘電率)という言葉がよく出てくる(例えば、LCRメータおよびインピーダンス・アナライザを用いた誘電率/透磁率の測定ソリューション)。

誘電体とは、金属のように自由に動き回れる電子(自由電子)がほとんど存在しない物質で、絶縁体ともいう。

元々分極している(電子密度が偏っている)分子で構成されている誘電体(純粋な水など)では、個々の分子が内部電界(永久双極子モーメント)を持っているが、外部から電界が印加されていない状態では、熱運動により双極子モーメントがランダムな方向に向いているので、全体として分極していない。しかし、外部から電界E0を印加すると、分極している分子は、その内部電界の向きがE0と逆方向にそろうので、E0に比例した逆電界E'(分極ベクトルP)が発生する。また、分極していない分子で構成された誘電体でも、外部から電界を印加すると、その分子の電子雲が、印加した電界の向きと逆方向に偏り、逆電界E’が発生する。
誘電率2
このような場合、誘電体内では、逆電界E’により、実質的な電界EはE0-E’となる。
このとき、真空中の電界E0と誘電体内の電界Eとの比(E0/E)を比誘電率εrという。誘電体内の電界は、必ず真空中の電界より小さくなるので、εrは必ず1より大きくなる。また、真空中と誘電体の境界で電界が不連続になるので、D=εE+P という、分極の効果Pを組み込んだ電束密度を導入して、境界でDが連続になるようにする。
誘電率3
分極ベクトルPが外部電界Eに比例する場合は、比例定数をχ・ε0として、P=χ・ε0・Eと書けるので、D=ε0(1+χ)E=ε0・εrEとなる。ここで、ε=ε0・εrを誘電率という。

誘電率については、以下を参照

誘電体測定の基礎

Gummel-Poon model(Gummel-Poonモデル)

図1

図1


半導体デバイス測定に関する翻訳で、Gummel-Poon model(Gummel-Poonモデル)という言葉が出てくる(例えば、IC-CAP デバイス・モデリング・ソフトウェアのp6)。

Gummel-Poonモデルは、以下のようなバイポーラ・トランジスタ(BJT)のデバイス・モデルである。

最初に、トランジスタを2つのpn接合ダイオードの結合と考える、Ebers-Mollモデルを説明する。pn接合ダイオードの理論的なI-V特性は、図1の1番上の式で与えられる。トランジスタのB(ベース)-C(コレクタ)間、B(ベース)-E(エミッタ)間をダイオードと考え、ダイオードの理論式を適用し、トランジスタの順方向電流増幅率と逆方向電流増幅率、キルヒホッフの電流則を用いると、Ebers-Mollモデルは、図1の下図のような等価回路で表わされる。

図2

図2


Gummel-Poonモデルは、Ebers-Mollモデルに、以下を追加したモデルである。

1)ベース、エミッタ、コレクタの寄生抵抗を追加する(図2の上図)。

2)トランジスタのIc-Vce特性を現実的な特性にするために、ベース幅変調(アーリ効果)を導入する(図2の下図)。

図3

図3


3)空乏層容量(pn接合により生じる、図3の上図)、接合容量または拡散容量(pn接合に順バイアスを印加したときに現れる、図3の中図)、寄生容量(サブストレート(S)の存在による、図3の左下図)による電荷蓄積効果を導入する。

以上をまとめると、Gummel-Poonモデルは、図3の右下図のような等価回路となる。

pn接合ダイオード、バイポーラ・トランジスタ、Ebers-Mollモデルについては、以下を参照。

山形大学大学院理工学研究科廣瀬文研究室 > 半導体デバイス教科書プロジェクトの第3章 pn接合第5章 バイポーラトランジスタ

Gummel-Poonモデルについては、以下を参照

大阪大学 オープンコースウェア > 工学部・工学研究科 > 286162 – 高周波集積回路設計, Spring Term, 2005 > 講義資料 > rf-no-2

An Integral Charge Control Model of Bipolar Transsisters(英語pdf、原論文)

directivity(方向性)

ネットワーク・アナライザ測定に関する翻訳で、directivity(方向性)という言葉がよく出てくる(例えば、ネットワーク・アナライザ測定を成功させる8つのヒントのp5)。

ネットワーク・アナライザ測定では、被測定デバイス(DUT)に信号を入力して、その出力を測定することにより、Sパラメータなどが計算される。Sパラメータを計算するためには、信号をDUTに順方向に入力した場合と逆方向に入力した場合の、DUTに入力される信号(入射信号)、DUTにより反射される信号(反射信号)、DUTから出力される信号(伝送信号)を測定する必要がある。これらの信号は、方向性結合器(方向性カプラ)を用いて取り出し、レシーバ/ディテクタに送られて測定される。

方向性結合器(方向性カプラ)には、メインパスと結合パスがあり、メインパスを順方向に通る電力の一部が結合パスから出力される。結合される電力の割合は、結合係数(coupling factor)として、

結合係数(dB)=-10log(順方向結合電力/順方向入射電力)

で表される。結合係数が20dBのカプラでは、信号源から0dBm(1mW)の電力がメインパスに順方向で入力されると、0dBm-20dB=-20dBm(0.001mW)の電力が結合パスから取り出される。

理想的なカプラでは、カプラを逆方向に通過する信号は結合パスから取り出されることはないが、現実には、カプラのポート間のアイソレーションが有限であるために、結合パスに信号が漏れる。この逆方向の信号が結合ポートに漏れる割合はアイソレーション(isolation)と呼ばれ、

アイソレーション(dB)=-10log(逆方向結合電力/逆方向入射電力)

で表される。アイソレーションが50dBのカプラでは、信号源から0dBm(1mW)の電力がメインパスに逆方向で入力されると、0dBm-50dB=-50dBm(0.000001mW)の電力が結合パスから漏れる。

方向性(directivity)とは、カプラのメインパスを流れる信号の方向の違いによる、結合パスから取り出される電力の大きさの違いであり、結合係数とアイソレーションの差(dB単位)として、

方向性(dB)=アイソレーション(dB)-結合係数(dB)

で表される。これは、カプラがどの程度入射信号と反射信号を区別できるかを表している。結合係数が20dB、アイソレーションが50dBのカップラでは、方向性は、50dB-20dB=30dBとなり、測定信号に最大30dB小さい誤差信号が含まれていることを意味している。したがって、結合係数が一定であれば、方向性(アイソレーション)が大きいほど良好な方向性結合器(方向性カプラ)と言える。

方向性については、以下を参照

ネットワーク・アナライザのアーキテクチャのp3~p5

方向性結合器については、以下を参照

無線工学の基礎(1アマの無線工学) > J 計測 > HJ06 高周波計測 > H1708A25