directivity(方向性)

ネットワーク・アナライザ測定に関する翻訳で、directivity(方向性)という言葉がよく出てくる(例えば、ネットワーク・アナライザ測定を成功させる8つのヒントのp5)。

ネットワーク・アナライザ測定では、被測定デバイス(DUT)に信号を入力して、その出力を測定することにより、Sパラメータなどが計算される。Sパラメータを計算するためには、信号をDUTに順方向に入力した場合と逆方向に入力した場合の、DUTに入力される信号(入射信号)、DUTにより反射される信号(反射信号)、DUTから出力される信号(伝送信号)を測定する必要がある。これらの信号は、方向性結合器(方向性カプラ)を用いて取り出し、レシーバ/ディテクタに送られて測定される。

方向性結合器(方向性カプラ)には、メインパスと結合パスがあり、メインパスを順方向に通る電力の一部が結合パスから出力される。結合される電力の割合は、結合係数(coupling factor)として、

結合係数(dB)=-10log(順方向結合電力/順方向入射電力)

で表される。結合係数が20dBのカプラでは、信号源から0dBm(1mW)の電力がメインパスに順方向で入力されると、0dBm-20dB=-20dBm(0.001mW)の電力が結合パスから取り出される。

理想的なカプラでは、カプラを逆方向に通過する信号は結合パスから取り出されることはないが、現実には、カプラのポート間のアイソレーションが有限であるために、結合パスに信号が漏れる。この逆方向の信号が結合ポートに漏れる割合はアイソレーション(isolation)と呼ばれ、

アイソレーション(dB)=-10log(逆方向結合電力/逆方向入射電力)

で表される。アイソレーションが50dBのカプラでは、信号源から0dBm(1mW)の電力がメインパスに逆方向で入力されると、0dBm-50dB=-50dBm(0.000001mW)の電力が結合パスから漏れる。

方向性(directivity)とは、カプラのメインパスを流れる信号の方向の違いによる、結合パスから取り出される電力の大きさの違いであり、結合係数とアイソレーションの差(dB単位)として、

方向性(dB)=アイソレーション(dB)-結合係数(dB)

で表される。これは、カプラがどの程度入射信号と反射信号を区別できるかを表している。結合係数が20dB、アイソレーションが50dBのカップラでは、方向性は、50dB-20dB=30dBとなり、測定信号に最大30dB小さい誤差信号が含まれていることを意味している。したがって、結合係数が一定であれば、方向性(アイソレーション)が大きいほど良好な方向性結合器(方向性カプラ)と言える。

方向性については、以下を参照

ネットワーク・アナライザのアーキテクチャのp3~p5

方向性結合器については、以下を参照

無線工学の基礎(1アマの無線工学) > J 計測 > HJ06 高周波計測 > H1708A25

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