Fabry-Perot laser source(ファブリペロー・レーザ光源)

光測定に関する翻訳に、Fabry-Perot laser source(ファブリペロー・レーザ光源)という言葉がよく出てくる。

laser(レーザ)は、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの略で、直訳すると、光放射(Radiation)の誘導放出(Stimulated Emission)による光の増幅(Light Amplification)である。

レーザ光の源は、物質内の電子が持っているエネルギーである。すべての物質は原子から構成されている。原子の中心には原子核があり、量子力学的に安定な状態の内の最低エネルギー準位の軌道(基底状態と呼ばれる)を電子が回っている。

基底状態にある電子に、電磁波や熱、電子などの粒子の衝突によりエネルギーを与えると、最低エネルギー準位より高い量子力学的に安定なエネルギー準位(励起状態と呼ばれる)に励起される。この過程は、電子が他のエネルギー源からエネルギーを吸収するので(誘導)吸収と呼ばれる。

励起状態の原子は不安定なので、すぐに光としてエネルギーを放出して基底状態に戻る(この過程は、自然放出と呼ばれる)。自然放出による光が、他の励起状態にある原子に入射すると、励起状態の原子が刺激されて光を放出して基底状態に戻る(この過程は、誘導放出と呼ばれる)。これを繰り返すことにより、入射光と同じ波長と位相の光が放出されて光が増幅される。誘導放出による光の増幅が行われるためには、レーザ媒質(エネルギーを吸収する元素が含まれる物質)に絶えずエネルギーを供給して、励起状態の原子の数が基底状態の原子の数よりも多くなっている状態(反転分布状態)にしておく必要がある。

レーザ媒質(半導体レーザでは活性層とも呼ばれる)を、全反射ミラーと部分反射ミラーで挟んで共振器(最初に考案したフランス人のFabryとPerotに因んで、ファブリペロー共振器と呼ばれる)を形成することにより、特定の波長の光がその間を往復して、さらに光が増幅され、部分反射ミラーからレーザ光が出力される。これが、ファブリペロー・レーザ光源の原理である。

レーザについては、以下を参照。

光と光の記録 — レーザ編

石くれと砂粒の世界 > ブログテーマの半導体 >
半導体レーザ(2007/05/05 21:09)半導体レーザの基本構造(2007/07/15 18:56)

coherence(コヒーレンス)

信号解析に関する翻訳に、coherence(コヒーレンス)という言葉がよく出てくる(例えば、89601B/BN-200 基本ベクトル信号解析 89601B/BN-300 ハードウェア・インタフェース 89600 VSAソフトウェアのp11)

コヒーレンスは、「可干渉性」と訳されることがあり、計測関係では、位相が揃った波という意味で用いられることが多い。信号解析では、2つの信号x(t)とy(t)がどれだけ干渉性があるか(位相が揃っているか、あるいは相関しているか)を表わす指標として用いられれる。

この相関の強さを表わす指標としてクロス・パワー・スペクトラムがあるが、これは複素量であり、比較するのに不便であるので、コヒーレンスcoh(ω)という量が定義されている。

コヒーレンスcoh(ω)は、2つの信号x(t)とy(t)のクロス・パワー・スペクトラムSxy(ω)(x(t)とy(t)の相互相関関数をフーリエ変換したもの)の大きさ|Sxy(ω)|を、x(t)のパワー・スペクトラムSxx(ω)(x(t)の自己相関関数をフーリエ変換したもの)とy(t)のパワー・スペクトラムSyy(ω)(y(t)の自己相関関数をフーリエ変換したもの)で正規化(ノーマライズ)したもので、以下のように表される。

coh(ω)=|Sxy(ω)|/(√(Sxx(ω))×√(Syy(ω)))

コヒーレンスのとり得る範囲は、0≦coh(ω)≦1であり、1に近いほど2つの信号x(t)とy(t)の同調度が高い(位相が揃った)波形であると言える。

簡単に言えば、コヒーレンスcoh(ω)は、2つの信号x(t)とy(t)の各フーリエ周波数成分ωの相互相関関数に相当するものであり、2つのベクトル(X=(X1,X2,…,Xn)、Y=(Y1,Y2,…,Yn))の内積(X・Y)の定義

cosθ=X・Y/|X||Y|、|X|はベクトルXの大きさ、θはベクトルXとYのなす角

を拡張したものと考えればよい(cosθの値が1に近いほど、2つのベクトルXとYが似ている)。

コヒーレンスについては、以下を参照。

相関とスペクトル解析

aging rate(エージング・レート)

信号発生器に関する翻訳で、aging rate(エージング・レート)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight Technologies M9381A PXIeベクトル信号発生器のp8)。

信号発生器の基準周波数の発生に、水晶発振器が用いられている。水晶発振器の周波数は、温度、電源電圧、負荷が変動すると変化するが、温度や電源電圧などを一定に保っても長時間(1ヶ月とか1年)経過すると変化する。この変化の割合がエージング・レート(経時変化、経年変化とも呼ばれる)であり、0.1ppm/年~10ppm/年程度である。

エージングは、加工時に水晶片に加えられた歪みが時間とともに解消されていくことにより生じたり、水晶片を密封している内部材料から出る微量のガスが水晶片に付着することにより生じると考えられている。

水晶発振器については、以下を参照。

水晶デバイス基礎講座

水晶発振器の経年変化については、以下を参照。

水晶振動子とその製造方法

IEEE 802.16

無線通信測定に関する翻訳で、IEEE 802.16という言葉が出てくる(例えば、Agilent N7615B 802.16 WiMAX用Signal Studio)。

「IEEE」は、「The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.(米国電気電子技術者学会)」の略称で、「802」は「802委員会(LAN/MANの標準化委員会)」の意味であり、「16」は「ブロードバンド無線アクセスのワーキング・グループ」という意味である。

「ブロードバンド無線アクセス」とは、当初はアメリカにおけるラスト1マイルの広帯域無線伝送に利用することを意図したものであった。2001年当時、アメリカのような広大な国土では光ファイバやADSLによる広帯域通信が利用可能な場所は都市部に限られていたので、人口密度の低い場所でも無線でブロードバンド通信を利用できるようにすることがIEEE 802.16-2001規格の目的であった。

その後、使用周波数帯を低くして見通し線外の通信を可能にしたり、固定無線用のプロファイルの追加や国際化を行ったものが、IEEE 802.16-2004規格で、Fixed WiMAXと呼ばれることもある。さらに、移動無線通信に必要な機能を追加したものが、IEEE 802.16e-2005規格であり、Mobile WiMAX(モバイルWiMAX)と呼ばれている。

IEEE 802.16規格の変遷については、以下の参照

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