gate charge(ゲート電荷)

半導体測定に関する翻訳に、gate charge(ゲート電荷)という言葉がよく出てくる(例えば、B1506A パワーデバイス・アナライザ 主要パラメータ自動測定装置のp6)。

MOSFETは、金属-酸化物-半導体(Metal-Oxide-Semiconductor)構造を持つ電界効果トランジスタ(Field-Effect Transistor)の略である。

nチャネル(n型)MOSFETは、p型半導体基板上にチャネル(電気の通り道)と呼ばれる領域を挟んで離れた2箇所にn型半導体領域(一方にソース電極、もう一方にドレイン電極が接続される)がある。チャネル領域の真上には酸化膜(絶縁層)を挟んで金属電極(ゲート電極)が存在する。

ゲートに電圧をかけていない状態では、ソース(n型半導体領域)とドレイン(n型半導体領域)間のチャネル領域はp型半導体なので(チャネル領域の電流の担い手であるキャリアはホールであり、ソースとドレインのキャリア(電子)と異なるので)、ソースからドレインに電流は流れない。

ゲートに電圧をかけると、ゲートが正に帯電して、ソースとドレインのキャリア(電子)がゲートに引き寄せられてp型半導体のチャネル領域に侵入し、ゲート直下のチャネル領域のp型半導体がn型半導体に反転してキャリアが同じ種類になり、電流が流れる(このことから、nチャネルMOSFETと呼ばれる)。

このように、MOSFETはゲート電圧を制御(オン/オフ)することにより、ソース-ドレイン間の電流を制御(オン/オフ)している。MOSFETをオンにするために(駆動するために)、ゲートを帯電させる(ゲートに注入される)電荷量のことをゲート電荷と呼んでいる。ゲート電荷量が大きいということは、(ゲート電極-酸化膜-チャネル領域で構成されるコンデンサの)充電に時間がかかることを意味し、スイッチング(オン/オフ)に要する時間が長くなる(動作速度が遅くなる)。

p型半導体、n型半導体については、以下を参照

接合容量

MOSFETの動作については、以下を参照

インテル・ミュージアム > トランジスターの仕組み > MOSFET がスイッチとして動作する仕組み

MOSトランジスタとは? MOSトランジスタの動作

junction capacitance(接合容量)

半導体測定に関する翻訳に、junction capacitance(接合容量)という言葉がよく出てくる(例えば、B1506A パワーデバイス・アナライザ 主要パラメータ自動測定装置のp11)。

電気をよく通す物質は導体、通さない物質は絶縁体、その中間の物質は半導体と呼ばれる。半導体(例えば、Si(シリコン)やGe(ゲルマニウム))の中で不純物を含まないものは真性半導体と呼ばれる。

Si(シリコン)やGe(ゲルマニウム)などの原子は、4個の価電子(原子の最外殻を回っている電子で、原子同士の結合や反応にかかわる)を持っている。結晶構造では、それぞれの原子は最近接位置にある4個の原子と、価電子を1個ずつ出しあって(電子ペアを形成して)共有結合で強く結びついている(化学の分野のオクテット則により非常に安定した状態)。この状態では、価電子がすべて結合に使われているので、電気伝導に寄与する電子がない。

上の真性半導体に、5個の価電子を持つAs(ヒ素)やP(りん)などの不純物をドーピング(ごく微量添加)すると、結晶の原子同士の結合に使われない価電子が1つ余り、自由に動きまわれる電子(自由電子)が生じる。この負(nagative)の電荷を持つ電子が電気伝導に寄与する(電気を運ぶ担い手となるのでキャリアと呼ばれる)ので、このような半導体はn型半導体と呼ばれる。

上の真性半導体に、3個の価電子を持つB(ボロン)やIn(インジウム)などの不純物をドーピングすると、結晶の原子同士の結合に使われる価電子が1つ不足し、結合に電子の欠落した状態が生じる。この電子が欠落した部分(正に帯電しているので、正孔(ホール)と呼ばれる))に近くの電子が引き寄せられて移動し、その電子が存在していた部分が正に帯電する(正孔になる)を繰り返すことにより、あたかも、正(positive)の電荷を持つ正孔が自由に動きまわっているように見える。これが電気伝導に寄与するキャリアとなり、このような半導体はp型半導体と呼ばれる。

n型半導体とp型半導体を接合すると(PN接合と呼ばれる)、接合面の近くのn型半導体のキャリア(電子)とp型半導体のキャリア(正孔)が引き寄せられて再結合して消滅し、キャリアの存在しない空乏層と呼ばれる部分が生じる。この状態は、空乏層を挟んでその両端に負の電荷と正の電荷が存在する、コンデンサと同じ状態であり、静電容量が生じている。この容量を接合容量と呼ぶ。

PN接合、接合容量については、以下を参照

金沢大学理工学域電子情報学類教授 北川章夫氏のホームページ > 講義案内 > 集積回路工学第1 > 2.1 MOSFETの構造と機能

OKAWA Electric Design > 資料基礎編ダイオードの静電容量トランジスタの静電容量

reverse transfer capacitance(逆伝達キャパシタンス)

パワー半導体測定に関する翻訳に、reverse transfer capacitance(逆伝達キャパシタンス)という言葉がよく出てくる(例えば、B1506A パワーデバイス・アナライザ 主要パラメータ自動測定装置のp2)。reverse transfer capacitanceは、逆伝達容量、帰還容量とも訳される。

逆伝達キャパシタンスとは、MOSFETではゲート-ドレイン間に存在する寄生キャパシタンス(バイポーラ・トランジスタではベース-コレクタ間の寄生キャパシタンス)のことである。この寄生キャパシタンスにより、出力から入力に信号が帰還される。

このような反転増幅器の入力(ゲート/ベース)と出力(ドレイン/コレクタ)の間にある帰還キャパシタンス(C)は、入力側から見ると、反転増幅器(FETまたはトランジスタ)の増幅率をAとして、等価的にC(1+A)のキャパシタンスが入力側でグランドに接続されたように見える。これは、発見者の名前からミラー効果と呼ばれ、逆伝達容量をミラー容量と呼ぶこともある。この容量により、反転増幅器の入力側にローパス・フィルタが形成され、信号の高周波成分が減衰し、高周波特性が悪化する。

ミラー容量については、以下を参照

Miller Effect(英語ページ)

OKAWA Electric Design > 資料基礎編 > ミラー容量