dissipation factor(損失係数)

LCR測定に関する翻訳で、dissipation factor(損失係数)という言葉がよく出てくる(例えば、U1730Cシリーズ ハンドヘルドLCRメータのp2)。損失係数は、コンデンサの性能指標の1つである。

コンデンサのキャパシタンスCは、形状パラメータ(電極の面積S、電極間の距離d)と電極間の誘電材料の誘電率εから、C=ε(S/d)で与えられる。しかし、実際には、誘電材料の漏れ電流による誘電損失があるので、図2のようにキャパシタンスCを、純粋なキャパシタンスCpとコンダクタンスGの純抵抗(R=1/G)の並列回路でモデル化して、複素誘電率を導入する。この複素誘電率の実数部と虚数部の比が損失係数(ロス・タンジェント、誘電正接、タンデルタとも呼ばれる)である。

図1

図1

図2

図2

図2から、

損失係数 = (G/(ωC0))/(Cp/C0)
      = G/(ωCp)
      = 1/(RωCp)         、G=1/Rなので
      = (V^2/R/ω) / (Cp*V^2) 、分母と分子にV^2を掛ける
      = (1サイクル毎の抵抗Rによる損失エネルギー)/(コンデンサに蓄積されているエネルギー)

となり、損失係数が小さいほど、抵抗成分による損失エネルギーが少なく、自己発熱の少ない優れたコンデンサと言える。

損失係数については、以下を参照

誘電体測定の基礎

Kelvin connection(ケルビン接続)

計測関係の翻訳に、Kelvin connection(ケルビン接続)という言葉がよく出てくる(例えば、パラメトリック測定器 アクセサリ・ガイドのp6)。ケルビン接続とは、抵抗測定における4端子法(または4線式と呼ばれることもある)のことである。

デジタル・マルチメータやアナログ・テスタなどで2端子法(2線式)で被測定抵抗を測定する場合は、リード線の抵抗値や端子とリード線の接触抵抗値を含む抵抗値が測定される。被測定抵抗の抵抗値が大きく、リード線の抵抗や端子とリード線の接触抵抗による電圧降下が被測定抵抗による電圧降下に比べて無視できる場合は、2端子法でも測定誤差が少なく問題はない。

被測定抵抗の抵抗値が微小な場合は、2端子法では大きな測定誤差が生じる。これは、電流を流すリード線と電圧を測定するリード線が共用されている(リード線や端子による電圧降下が、被測定抵抗による電圧降下に対して相対的に大きくなる)からである。

この問題を回避するための手法が4端子法(4線式抵抗測定)で、電流を流すリード線とは別に電圧を測定するリード線を被測定抵抗の両端に追加する測定法(被測定抵抗に合計4個の端子ができるので4端子法と呼ばれる)である。このようにして、電流を流す回路と電圧を測定する回路を分けることにより、被測定抵抗による電圧降下のみを正確に測定でき(電圧測定回路にはほとんど電流が流れないので)、被測定抵抗のみの抵抗値が得られる。

4端子法については、以下を参照。

低い抵抗値を4端子法で測定する方法

Measurement Category(測定カテゴリ)

ハンドヘルド測定器に関する翻訳に、Measurement Category(測定カテゴリ)という言葉がよく出てくる(例えば、U1270シリーズ 工業用マルチメータのp8)。

測定器を安全に使用するために、国際安全規格IEC61010では、測定器を使用する場所に関する安全基準を、測定カテゴリとしてCAT I ~ CAT Ⅳ(CATはcategoryの略)に分類している。CAT番号が大きいほど、高エネルギーの過渡現象が発生する可能性が高いことを示している。

例えば、「CAT III 1000V」という表示は、測定カテゴリIII(直接分電盤から電気を取り込む機器の1次側および分電盤からコンセントまでの回路)で使用可能で、電圧定格(対アース)1000 Vrmsまで測定の安全が保証されているという意味である。

測定カテゴリについては、以下を参照。

ハンドヘルド・マルチメータを選択する際の安全性について

リーダー株式会社のホームページ > 技術情報 >測定基礎知識 > 安全規格IEC 61010(JISC1010)について