droop(ドループ)

パルス波形測定に関する翻訳で、droop(ドループ)という言葉がよく出てくる(例えば、8990Bピーク・パワー・アナライザおよびN1923A/N1924A広帯域パワー・センサのp5)。

パルス波形の形状を表わすパラメータとして、パルス幅、立ち上がり時間、立ち下がり時間、ドループ(サグとも呼ばれる)などがある。

理想的な方形パルスは、時刻T=t_startの瞬間に電圧V_Lowから電圧V_Highに立ち上がり、電圧V_Highを一定に保って、時刻T=t_stopの瞬間に電圧V_Highから電圧V_Lowに立ち下がり、電圧V_Lowを一定に保つ。したがって、パルス幅はt_stop - t_startで、立ち上がり時間と立ち下がり時間はゼロである。

しかし、現実のパルス波形では、電圧V_Lowから電圧V_Highに立ち上がる(電圧V_Highから電圧V_Lowに立ち下がる)のに有限の時間がかかる。したがって、パルス幅は、通常、パルス波形のパルス振幅(V_High - V_Low)の50%の(立ち上がり時間区間と立ち下がり時間区間の)時刻ポイント間で定義される。立ち上がり時間は、通常、立ち上がり時間区間でパルス振幅(V_High - V_Low)の10%に対応する時刻ポイントから90%に対応する時刻ポイントまでの時間として定義される(立ち下がり時間は90%のポイントから10%のポイントまでの時間)。また、実際のパルス波形では、立ち上がった後から立ち下がる前までのパルスのトップ部分(理想パルス波形では、電圧V_Highが一定の部分)の電圧は一定ではなく、減少する場合があり、これがドループ(サグ)である。

パルス波形のパラメータについては、以下を参照

神戸大学 大学院理学研究科 物理学専攻 粒子物理学研究室の蔵重久弥 教授のページ > Lectures/講義 > 物理学実験Ⅱ・Ⅲ「パルス技術」のテキスト

atomic force microscope(原子間力顕微鏡)

ナノ測定に関する翻訳で、atomic force microscope(原子間力顕微鏡)という言葉がよく出てくる(例えば、ナノ測定ソリューション カタログ)。

原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)の一種である。光や電子の結像により観察を行う光学顕微鏡や電子顕微鏡とは異なり、走査型プローブ顕微鏡は、微小な探針(プローブ)を試料の表面に近づけて、試料と探針間に生じる量子力学的、電磁気学的な物理量の変化を検出しながら試料表面を走査(スキャン)することにより、原子レベルの分解能で試料表面の3次元画像(凹凸)を得る装置である。

走査型プローブ顕微鏡として最初に開発されたものは、1981年にIBM研究所で開発された走査型トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)で、試料と探針間のトンネル電流(量子力学のトンネル効果に起因)を検出して動作するものである。しかし、これは導電性の試料でないと観察できないという欠点があった。これに対して、原子間力顕微鏡は、試料と探針間に働く量子力学的な力(ファンデルワールス力)を検出するもので、絶縁体の試料も観察でき、広く使用されるようになった。

原子間力顕微鏡については、以下を参照

(高速)原子間力顕微鏡の基礎とナノバイオへの展開

chip rate(チップ・レート)

無線通信測定に関する翻訳で、chip rate(チップ・レート)という言葉がよく出てくる(例えば、3GPP W-CDMA携帯電話端末のデザインとテストのp5)。

CDMA方式の携帯電話や無線LANなどには、秘匿性があり干渉/妨害信号に強いスペクトラム拡散という通信方式が使用されている。スペクトラム拡散には、周波数ホッピング(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)方式と直接拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)方式がある。

直接拡散方式は、PSKやFSKなどによる1次変調(狭帯域変調)の後に、擬似ランダム・ビット・シーケンスにより生成したPN(擬似ランダム・ノイズ)コード(拡散コード)を使って2次変調(広帯域変調)を行う方式である。この拡散コードは、「1」と「-1」がランダムに現れる擬似乱数であり、このコードのビットは、ベースバンド信号(送信データ)のビットと区別するために「チップ」と呼ばれ、そのデータ・レートがチップ・レートである。したがって、2次変調後の変調波はチップ単位で変化している。また、 送信データ速度(ビット・レート)と拡散コード速度(チップ・レート)との比は、拡散率(Spreading Factor)と呼ばれている。

スペクトラム拡散とチップ・レートについては、以下を参照。

電波で情報を送れる仕組み 2