E-UTRA

無線通信計測関係の翻訳に、E-UTRAという言葉がよく出てくる(例えば、LTE/LTE-Advanced FDD/TDD用Signal Studio N7624B/N7625B)。

移動通信システムは、第1世代(アナログ方式の自動車/携帯電話)、第2世代(PDCやGSM方式のデジタル携帯電話)、第3世代(W-CDMAやCDMA2000方式の携帯電話)、第3.9世代(LTE)、第4世代(LTE-Advanced)と進化してきている。

第3世代からは、アメリカ、ヨーロッパ、日本、韓国の標準化団体により1998年12月に設立された3GPP(Third Generation Partnership Project)という標準化プロジェクトが技術仕様の検討、作成を行っている。この標準化プロジェクトにより、第2世代までの携帯電話は海外に持って行っても使用できなかったが、第3世代以降の携帯電話は使用できるようになっている。

UTRAは、Universal Terrestrial Radio Accessの略で、3GPPにおける第3世代の無線インタフェース技術の呼称である。E-UTRAは、Evolved Universal Terrestrial Radio Accessの略(UTRAを進化させたもの)で、3GPPにおける第3.9世代(LTE)の無線インタフェース技術の呼称である。

LTEについては、以下を参照。

一般社団法人 映像情報メディア学会のホームページ > 記事を読む > 知っておきたいキーワード > LTE

FEM(有限要素法)

電磁界シミュレーションに関する翻訳に、FEM(有限要素法)という言葉がよく出てくる(例えば、EMPro 3次元電磁界モデリング/シミュレーション環境とADSデザインフローの統合)。

電磁界シミュレーションの手法には、大きく3つの手法(有限要素法、モーメント法FDTD法)がある。FEMは、Finite Element Method(有限要素法)の略である。

電子デバイスの高周波化/高密度化にともなって、伝送線路が電磁界による相互作用によりL成分やC成分を持つようになる。また、伝送線路も複雑な形状になり、電磁相互作用を解析的に(方程式を立てて式変形して)直接解くことはできない。このような場合は、問題の領域を離散化して数値的に解く必要がある。これを行うための手法の1つが有限要素法である。有限要素法を簡単に説明するのは難しいが、概要は以下のようである。

モーメント法は、求めたい未知の関数f(x)が電流や電荷なので、それを3次元領域全体に配置する必要がなく、電界g(x)が与えられたとして、支配方程式である

L(f(x))=g(x)、Lは微分演算や積分演算などを含む適当な線形演算子

を離散化(未知関数f(x)を基底関数で展開し、重み関数を用いて、残差がゼロになるという条件から(重み付き残差法と呼ばれる)、微積分方程式を行列方程式(離散方程式)に変換)して求める方法であった。これに対して、有限要素法は、電磁界に関する微分方程式の境界値問題を、それと等価な汎関数の極値を求める問題(変分問題)に置き換え、汎関数を離散化して求める方法である。その際、3次元領域を小さな要素に分割し、各要素毎に重み付き残差法(未知の電磁界を基底関数で展開する)を適用して離散方程式を求め、それらを接続して系全体の離散方程式を組み立てる方法である。

有限要素法については、以下を参照
平野拓一氏のホームページ > 電磁界解析 > 有限要素法(FEM; Finite Element Method) > em04.pdf ・・・ 有限要素法の理論

電磁界シミュレーションの概要と基礎原理-簡単な1次元問題による説明-

channel sounding(チャネルサウンディング)

無線通信測定に関する翻訳で、channel sounding(チャネルサウンディング)という言葉がよく出てくる(例えば、5G空間電波伝搬特性(チャネルサウンディング)の測定手法)。

channel sounding(チャネルサウンディング)のチャネルとは、無線通信における送信機と受信機の間の電波の伝搬経路のことで、サウンディングは「聞こえ方」から転じて「電波の伝わり方(伝搬特性)」という意味である。通常、チャネルサウンディングは電波伝搬経路の特性を評価(推定)するという意味で使用される。

特に、携帯電話などの移動無線通信システムでは、電波の経路損失、反射、吸収、回折、マルチパス効果、移動体の速度によるドップラー効果などにより、周波数、時間、受信位置に依存して電波の受信強度が激しく変動するフェージングが発生する。これにより、信号品質が著しく低下するので、デジタル・ビームフォーミング(MIMOやアレイ・アンテナの使用)を行って信号品質を確保している。これを行なうためには、電波の伝搬路の特性を測定(推定)すること(チャネルサウンディング)が必須となる。

最も簡単なチャネルサウンディングの推定は、伝搬路のインパルス応答h(t)を測定すること(伝達関数H(ω)を求めること)である。インパルス応答には、伝搬路のすべての情報が含まれていて、送信機から時間領域の任意の送信信号x(t)が送信され、インパルス応答がh(t)の伝搬路を通って、受信機でy(t)という信号が受信されたとすると、、y(t)は畳み込み積分を用いて、

y(t)=∫h(τ)x(t-τ)dτ=h(t)※x(t)、※は畳み込み積分を表わす記号 (1)

のように表され、伝搬路の特性が推定されたことになる。

しかし、インパルス応答を正確に測定するには、周波数帯域幅の広い理想的なインパルスを使用する必要があるが、帯域幅を広くすると測定帯域全体でのS/N比が低下したり、帯域幅が制限される移動無線通信には不向きである。このため、インパルス列を用いて平均してS/N比を上げたり、チャープ信号を用いたりする方法がある。

また、自己相関関数がδ関数となるようなホワイトノイズ様信号を送信して、相互相関関数が伝搬路のインパルス応答h(t)となるようにする方法がある。すなわち、送信信号x(t)の自己相関関数Rx(τ)と送信信号x(t)と受信信号y(t)の相互相関関数Rxy(τ)は、

Rx(τ)=E[x(t)x(t+τ)]=lim(1/T)∫x(t)x(t+τ)dt、(E[x(t)x(t+τ)]は、x(t)x(t+τ)の時間平均)

Rxy(τ)=E[x(t)y(t+τ)]=lim(1/T)∫x(t)y(t+τ)dt

と表され、(1)式から

Rxy(τ)=E[x(t)∫h(τ_1))x(t+τ-r_1)dr_1]
    =∫h(τ_1)E[x(t)x(t+τ-r_1)dt]dr_1
    =∫h(τ_1)Rx(τ-r_1)dr_1
    =h(τ)※Rx(τ)

となる。上の式は、Rx(τ)がδ関数であれば、Rxy(τ)=h(τ)となることを表しているので、自己相関関数がδ関数となるような無相関の既知のホワイトノイズ様信号を送信信号として用いれば、送信信号と受信信号の相互相関関数を求めることによりインパルス応答h(τ)が得られる。

チャネルサウンディングについては、以下を参照

5G mmWave MIMO Channel Sounding(英語pdf)のPage 4

Software Defined Radio based MIMO channel sounding(英語pdf)の2.3 Channel sounding(p9~p11)