power integrity(パワーインテグリティ)

オシロスコープ測定に関する翻訳に、power integrity(パワーインテグリティ)という言葉がよく出てくる(例えば、N7020Aパワー・インテグリティ測定用パワー・レール・プローブ)。

power integrity(パワーインテグリティ)は「電源品質」とも訳されることがあるが、一般に、電子機器のプリント基板の電源層/電源ラインやグランド層の配置や形状などに起因するノイズの混入や供給電圧の安定性などの電源品質を表わす。

昔は、細い配線で経路や曲がり具合を気にせずプリント基板上のICに電源とグランドを接続すれば動作した。しかし、近年、FPGA、ASIC、DSP、CPUなどのLSIの低電圧化、大電流化により、それらに供給する電源の品質が重要になっている。低電圧化により、必然的に供給される電流が大きくなるが、大電流により配線抵抗が小さくても大きな電圧降下が生じる(電流Iが大きいと、配線抵抗Rが小さくても、オームの法則から配線の両端での電圧降下IRが大きくなる。IRドロップと呼ばれる)。低電圧化により動作電圧が小さい(したがって、動作電圧のマージンも小さい)ので、このようなIRドロップによりLSIが誤動作を起こしやすくなる。

この問題を解決するには、配線抵抗R(電源層とグランド層の間(PDN(Power Distribution Network、電源分配回路)のインピーダンス)を小さくする必要があり、電源層の面積を大きくしたり、バックアップコンデンサを使用して過渡的に大きな電流を供給して電圧を安定化するなどの方法がある。

パワーインテグリティについては、以下を参照。

シグナル・インテグリティとパワー・インテグリティの基礎

infotainment(インフォテインメント)

車載機器測定に関する翻訳に、infotainment(インフォテインメント)という言葉がよく出てくる(例えば、コネクテッドカー向けの革新的なテストソリューションのp2)。

infotainment(インフォテインメント)は、information(情報)とentertainment(娯楽)を組み合わせた言葉である。主に、自動車の分野(車載システム)で用いられ、IVI(In-Vehicle Infotainment、車載インフォテインメント)と呼ばれることもある。一昔前の車内での情報源と娯楽と言えばカーラジオとカーステレオ(カセットテープ)であったが、カーナビゲーションやTV受信/DVD再生などが普及し、IVIシステムと呼ばれるようになった。さらに、インターネット接続による情報検索/電子メールの送受信/動画配信サービスの利用、スマートフォンやウェアラブル端末との連携、音声認識、ジェスチャーコントロールなどが加わって急速に発展している分野で、自動車業界とIT業界がしのぎを削っている。

インフォテインメントについては、以下を参照。

車載インフォテインメントシステムとは?

IEEE 802.11p

無線通信測定に関する翻訳で、IEEE 802.11pという言葉が出てくる(例えば、無線LAN 802.11a/b/g/j/p/n/ac/ah Xシリーズ 測定アプリケーションN9077A/W9077A)。

「IEEE」は、「The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.(米国電気電子技術者学会)」の略称で、「802」は「802委員会(LAN/MANの標準化委員会)」の意味であり、「11」は「無線LANのワーキング・グループ」という意味である。

無線LANの規格は、IEEE 802.11b(11 Mb/s)、IEEE 802.11a/g(54 Mb/s)、IEEE 802.11n(最大600 Mb/s)と伝送速度が高速化してきて、現在はIEEE 802.11ac(最大6.9 Gb/s)が市販されている。また、IoTデバイス向けのIEEE 802.11ahも策定中である。

IEEE 802.11pは、IEEE 802.11a(5GHz帯の周波数とOFDMを用いた無線LAN規格で、狭い帯域幅で高いデータレートを実現できたが、あまり普及しなかった)をベースにして、ITS(Intelligent Transport System、高度道路交通システム)の路車間(V2I:Vehicle-to-Infrastructure)、車車間(V2V、Vehicle-to-Vehicle)通信に適合するように機能強化したものである。IEEE 802.11pは米国のITSプロジェクトに起源を持ち、米国では、物理層とMAC層のIEEE 802.11pと上位層のIEEE1609を合わせて、WAVE(Wireless Access in Vehicular Environments)と呼ばれている。欧州でも、路車間、車車間通信に5.9GHz帯のWAVEと同様のものの開発が進められている。日本は、5.8GHz帯のARIB STD-T75という規格を推進している。

ITSの標準化については、以下の参照

ITSの標準化 2015

IEEE 802.11pについては、以下を参照

DSRC(狭域通信)の現状と動向