diplexer(ダイプレクサ)

測定器に関する翻訳で、diplexer(ダイプレクサ)という言葉がよく出てくる(例えば、ミリ波・サブミリ波周波数エクステンダーのp2)。

diplexer(ダイプレクサ)は、マルチプレクサの最も簡単なもので、2つのポートに入力された信号を混合して1つのポート(コモンポート)から出力したり、1つのポートに入力された信号を分離して2つのポートから出力する3ポートデバイスである。無線通信の分野では、ダイプレクサは、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタを用いて信号を混合したり分離するので、周波数が離れている2つの比較的広い周波数バンドの混合や分離に使用される(例えば、地上波TVアンテナからの信号とBSアンテナからの信号を混合して一本のアンテナ線で送るための混合器や、混合されて一本のアンテナ線で送られてきた地上波TV信号とBS信号を分離してテレビのそれぞれのアンテナ端子に接続するための分波器としてよく見かける)。

diplexer(ダイプレクサ)によく似た用語に、duplexer(デュプレクサ)という用語がある。デュプレクサは、ダイプレクサとは異なり、Q値の高いキャビティ共振器を用いて、送信機と受信機が非常に近い周波数で同じアンテナを共用するために、2つの入力を混合したり分離するための3ポートデバイスである(例えば、レーダー信号の送受信や携帯電話のアップリンク/ダウンリンクで同じアンテナを共用するために使用されている)。

しかし、diplexer(ダイプレクサ)とduplexer(デュプレクサ)は、2つの入力を混合したり分離するための3ポートデバイスとして、区別なく使用されている場合もある。

diplexer(ダイプレクサ)については、以下を参照。

diplexer vs duplexer-difference between diplexer and duplexer(英語ページ)

Duplexers, Diplexers and Circulators(英語pdf)

design of experiments(実験計画法)

シミュレーションに関する翻訳で、design of experiments(実験計画法)という言葉がよく出てくる(例えば、W2309EP/ET DDRバスシミュレータおよびW2317EP/ET DDRバスシミュレータ分散コンピューティング8パックのp2)。design of experiments(実験計画法)はDOEと略されることがある。

実験計画法は、イギリスの統計学者R.A. Fisherが、1920年代に、どのような作付け要因(品種、土壌、天候、肥料、農薬など)で最も農作物がよく育つのかを実験するために、効率的な(実験回数の少ない)統計的手法を考え出したのが最初と言われている。

実験計画法とは、さまざまな要因(原因)が、それぞれどの程度、品質特性(結果)に影響を与えるかを定量化するための実験計画である。通常は、多数の要因が存在し、それぞれの要因が取り得る値(実験計画法では水準と呼ばれる)も多数存在するので、現実的な実験回数ですべての場合を実験することはできない。実験計画法では、このような場合に、直交表(縦(行)に実験番号、横(列)に要因の種類を割り当てた表に水準を記載したもので、どの2つの列を比べても各水準の個数が同数になっている)を用いて実験回数を削減する。また、得られたデータを定量化するために、分散分析(各要因の効果の大きさの計算)が行われる。

実験計画法の詳細については、以下を参照

東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センターのホームページ > ディスカッションペーパー > 2008 > 2008-MMRC-211 品質工学ノート

Touchstone format(Touchstoneフォーマット)

Sパラメータ測定に関する翻訳で、Touchstone format(Touchstoneフォーマット)という言葉がよく出てくる(例えば、衛星性能の長時間リモートモニター Keysight 高周波USBパワーセンサのp7)。

Touchstoneは、1984年に設立されたEEsof社(現在は、Keysight社の事業部の1つでKeysight EEsof EDAと呼ばれる)が開発した高周波回路シミュレータの名前で、このシミュレータ用のSパラメータを保存するためのASCIIテキストファイルのフォーマットがTouchstoneフォーマットである。Touchstoneというシミュレータは無くなったが、nポートデバイスの特性を表わすパラメータをASCIIテキストファイルで保存するためのフォーマットとして、Touchstoneフォーマットが業界の事実上の標準になっている。

基本的なファイルフォーマットは、コメント行、オプション行(周波数の単位、パラメータの種類、パラメータのフォーマット、基準インピーダンスを記述)、データ行で構成されている。

現在では、IBIS Open ForumがTouchstone File Format Specification Version 2.0を作成している。

Touchstoneフォーマットについては、以下を参照。

SnP (Touchstone) File Format(英語ページ)

Touchstone File Format Specification Version 2.0(英語pdf)