BroadR-Reach(ブローダーリーチ)

車載ネットワークの測定に関する翻訳に、BroadR-Reach(ブローダーリーチ)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight BroadR-Reach PHY Compliance Test Solutions)。

BroadR-Reach(ブローダーリーチ)は、Broadcom社が車載イーサネット用に開発したデータ伝送技術であり、OPEN Alliance SIGという標準化団体を設立して普及を進めている。

安全運転支援や安全確認のために、近い将来、複数のカメラが車に搭載されるようになると、映像信号をデジタル伝送するための高速な伝送ラインが必要になる。高速伝送ラインと言えば、LANケーブルを用いたイーサネット接続が普及しているが、それをそのまま使うと、誤動作の原因となるノイズ輻射が大きく、誤動作が許されない自動車には使えない。また、シールド付きのケーブルを使用すると、実装体積や重さの観点から、車載に向かない。このような問題を解決するために、シールドなしのツイスト・ペア(UTP:Unshielded Twisted Pair)1対で、双方向の100Mbpsのデータ伝送速度を実現できるようにした技術がBroadR-Reachである。これは、1000BASE-T(IEEE802.3ab)の技術(PAM変調)を活用することにより、通常の100Base-TXのLANケーブル(2対(4線))に比べて半分のケーブル本数で、同じデータ伝送速度を実現している。また、イーサネット配線での電力供給にも対応している。

ブローダーリーチについては、以下を参照。

ブロードコム、車載カメラ向けネットワーク「BroadR-Reach」の説明会 細く軽いケーブルでコストと重量を削減

cognitive radio(コグニティブ無線)

無線通信測定に関する翻訳に、cognitive radio(コグニティブ無線)という言葉がよく出てくる(例えば、リアルタイム・スペクトラム・アナライザ(RTSA)Xシリーズ シグナル・アナライザのp8)。

近年、無線LANLTEWiMAXなどのさまざまな無線通信システムが普及し、映像などの大容量コンテンツを用いたサービスが増えるにしたがって、無線通信のデータトラフィック量も急増している。大量のデータを伝送するには、広い周波数帯域幅が必要になる。これまで、限られた周波数帯域幅で効率よくデータ伝送を行なうために、OFDM(直交周波数分割多重化)などの複雑な変調方式、MIMOなどの複数のアンテナを用いる空間多重化等、さまざまな技術が実用化されているが、周波数資源には限りがあり、その枯渇が問題になっている。このような状況で周波数資源を効率的に利用する方法の1つとして、コグニティブ無線が注目されている。

さまざまな無線通信システムへの周波数の割り当てが逼迫している状況ではあるが、実際には、24時間、すべての場所(空間)で、すべての周波数帯域が利用されている訳ではない。時間、空間、帯域内の利用されていないところを検出(認識)して、有効活用する手法がコグニティブ無線であり、 コグニティブ(cognitive、認知的な)という名前の由来になっている。

コグニティブ無線は、ヘテロジニアス型と周波数共用型の2つに大きく分けられる。ヘテロジニアス型は、既存の異なる通信システム(例えば、無線LAN、LTE、WiMAXなど)から、無線利用環境(電波の品質や利用率など)を検出して最適なシステムを自動選択するものである。周波数共用型は、免許が割り当てられている既存の通信システムの帯域内で、場所や時間的に使用されていない部分(ホワイトスペースと呼ばれる)を検出して利用するものである。

コグニティブ無線については、以下を参照。

国立研究開発法人 情報通信研究機構のホームページ > 資料・データ > 出版物・発行書籍 > 情報通信の未来をつくる研究者たち > 電波をフレキシブルに利用するコグニティブ無線システム

Poincare Sphere(ポアンカレ球)

偏波測定に関する翻訳に、Poincare Sphere(ポアンカレ球)という言葉がよく出てくる。

偏光状態の波がz軸方向に進行していて、z軸に垂直な平面内にx軸とy軸をとると、任意の偏光状態の光の電場の振動ベクトルEは、以下のように、x軸とy軸に射影した2つの成分(ExとEy)で書けた(ストークス・パラメータを参照)。

Ex=Axcos(ωt-kz+δx)=Axcos(ωt-Ψx)   (1a)

Ey=Aycos(ωt-kz+δy)=Aycos(ωt-Ψy)   (1b)

上の式から、三角関数の加法定理を用いてωt-kzを消去すると、

(Ex/Ax)^2-2(Ex/Ax)(Ey/Ay)cosδ+(Ey/Ay)^2=sin^2(δ)、δ=δy-δx

となる。これは、光の伝搬方向から見た電場ベクトルの先端の軌跡を表したもので、楕円である。

また、楕円の長径方向とx軸との角度(方位角)がχの場合に、長径方向にx’軸、短径方向にy’軸をとると、楕円(ベクトルEをx’軸とy’軸に射影した2つの成分)は、楕円率(楕円の長径aと短径bの比、tanΦ=b/a)を用いて、

Ex’=AcosΦcosωt

Ey’=-AsinΦsinωt

のようにパラメータ表示できる。

ベクトルE’(Ex’、Ey’)を角度χ、回転させると、ベクトルE(Ex、Ey)になるので、角度χの回転を表わす行列

R(χ)=cosχ -sinχ
    sinχ  cosχ

を用いて、

(Ex、Ey)=R(χ)(Ex’、Ey’)=(A(cosχcosΦcosωt+sinχsinΦsinωt)、A(sinχcosΦcosωt-cosχsinΦsinωt))

と書ける。これと上の(1a)、(1b)式を比較することにより、

AxcosΨx=AcosχcosΦ

AxsinΨx=AsinχsinΦ

AycosΨy=AsinχcosΦ

AysinΨy=-AcosχsinΦ

が得られる。これらの式から、A、Φ、χについて解くことができて、ストークス・パラメータは、以下のようになる。

S1=Ax^2+Ay^2=A^2

S2=Ax^2-Ay^2=A^2cos2Φcos2χ

S3=2AxAycosδ=A^2cos2Φsin2χ

S4=2AxAysinδ=A^2sin2Φ

(δ=Ψy-Ψx=δy-δx)

上の4つのストークス・パラメータの間には、

S1^2=S2^2+S3^2+S4^2

の関係があり、直交座標(S2、S3、S4)で半径S1の球を表したものになっている。また、極座標(S1、2Φ、2χ)で球を表したものでもある。すなわち、半径S1の球上の任意の点(偏光状態)が、楕円(電場ベクトルの先端の軌跡)の大きさS1=A^2、方位角2χ、楕円率2Φで指定できる。これがポアンカレ球であり、ストークス・パラメータと偏光の関係を視覚的に表わすことができる。

ポアンカレ球については、以下を参照

POLARIZATION AND STOKES PARAMETERS