計測関係の翻訳に、”eye pattern”という言葉が出てくる。アイ・パターンとはいったい何なのか、よくわからない翻訳者が多いのではないだろうか。身近なものでは、HDMIケーブルの規格にアイ・パターンが使用されている。3D映像の伝送に対応する最新のHDMI1.4では、情報伝送速度は最大3.4 Gbps(1秒間に0または1を34億個伝送可能)である。このような高速伝送では、0、1を表すパルス波形がなまり、0と1の区別が曖昧になり(「アイが閉じる」と表現する)、結果として0と1を逆に解釈してエラーが生じるのである。低品質のHDMIケーブルで映像がノイズまみれになったり、長いHDMIケーブルで映像が映らなくなるのはこのためである。参考として、以下のリンクを挙げておく。

feature(備える)
“feature”という動詞を、「特長とします」と訳す翻訳者がよくいる。これでは、いかにも翻訳調である。例えば、”Accurate characterization is achieved with clean signals from the pattern generator, which features exceptionally low jitter and extremely fast transition times.”は、「正確な特性評価:パターン・ジェネレータからの信号は、きわめて低いジッタと高速な遷移時間を特長とします。」と訳してくる。ここで、魔法の訳語をお教えしよう。「備えている」と訳すのである。こうすれば、自然な訳になるのである。この「備えている」は他の英語表現にも活用できる。”is designed to ~”という表現もよく出てくるが、「~するように設計されています。」と訳すより、「~な機能を備えています。」と訳した方が自然な表現になる。他にも、”provide”や”have”を「提供します」や「持っています」と訳すより、「備えています」と訳す方が自然な表現になる場合が多い。
Integrity(信頼性)
これは、非常に訳し難い単語である。しかも、最近のコンピュータ/通信関係の文章に頻繁に登場する。辞書には「完全な状態」とか「整合性」という訳が載っているが、どれもしっくりこない場合がある。そのまま「インテグリティ」と訳されることもあるが、読者にとっては?な場合が多い。クライアントが訳を決めていればそれに従えばよいが、文意に当てはまらない場合もある。そういう場合は、私は、まず「信頼性」、次に「品質」と訳してみることにしている。例えば、”report integrity”という言葉あったとすると、「レポートの信頼性」と訳すと前後の文章との親和性が比較的高くなる。また、「レポートの品質」と訳しても前後の文章との親和性が比較的高い場合が多い。