backhaul(バックホール)

移動体無線の測定に関する翻訳で、backhaul(バックホール)という言葉がよく出てくる(例えば、フィールドにおけるRF/マイクロ波の干渉問題をリアルタイム・スペクトラム・アナライザ(RTSA)で解決する方法のp4)。

バックホールとは、通信の分野では、コアネットワーク(基幹回線網、バックボーン)とアクセスネットワーク(収容局と加入者を結ぶ、ネットワーク全体の末端の回線)を中継する回線である。

携帯電話やスマートフォンなどの移動体通信では、コアネットワークと、BBU(Base Band Unit、IPパケットとベースバンド信号との変換や基地局全体の制御を行なう装置)を備えた基地局との間の回線をバックホールと呼んでいる。BBUを備えた基地局と、RRH(Remote Radio Head、BBUからのベースバンド信号を電波で送信するためにRF信号に変換する(およびその逆を行なう)装置)を備えた張出し基地局との間の回線はフロントホールと呼ばれる。

スマートフォンでの動画視聴や動画投稿などによるモバイル端末からのインターネットの利用の増加、IoTの拡大などにより、移動体通信ネットワークのトラフィックの急拡大が予想され、モバイルフロントホールやモバイルバックホールで使用される光ネットワークの高速化、大容量化も重要な課題となっている。

通信トラフィック予測と、モバイルフロントホール、モバイルバックホールについては、以下を参照。

柔軟なサービス提供に向けた将来の光アクセス技術

IoT時代を支える無線ネットワーク技術

Layer 1(レイヤー1)

通信の測定/シミュレーションに関する翻訳で、Layer 1(レイヤー1)という言葉がよく出てくる(例えば、W1918 LTE-Advancedベースバンド検証ライブラリのp2)。

携帯電話やPCでの電子メール、Webサイト閲覧など、ネットワーク通信が社会活動や生活において不可欠なものになって久しい。携帯電話やPCのメーカーが異なっていても(それらに使用されている通信用デバイスが異なっていても)、伝送経路や伝送形態が異なっていても(電波で伝送されていても、光ファイバーで伝送されていても)、確実に通信が行えるのは、ネットワーク上で通信を行なう際の手順やルール(プロトコルと呼ばれる)が決められている。

コンピュータネットワーク通信の初期には、異なるメーカーの機器間での通信が困難だったので、特定のメーカー(機器)に依存しないデータ通信のプロトコルの必要性が高まり、1984年にISO(国際標準化機構)により、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルと呼ばれる通信システムの設計方針が定められた。OSI参照モデルは実装を考慮していない机上の規格であることや、ちょうどその頃TCP/IP が急速に普及してきたこともあり、OSI参照モデルに準拠した製品は普及しなかったが、ネットワーク通信の基本的な考え方を示すモデルとして広く使用されている。

OSI参照モデルには、7つの階層があり、

第7層(レイヤー7、L7):アプリケーション層(アプリケーションに固有の規定)
第6層(レイヤー6、L6):プレゼンテーション層(データフォーマットに関する規定)
第5層(レイヤー5、L5):セッション層(通信の開始/終了に関する規定)
第4層(レイヤー4、L4):トランスポート層(通信の信頼性(誤り訂正など)に関する規定)
第3層(レイヤー3、L3):ネットワーク層(異なるネットワーク間の通信(データのルーティングなど)に関する規定)
第2層(レイヤー2、L2):データリンク層(同じネットワーク内の通信(パケットの送受信など)に関する規定)
第1層(レイヤー1、L1):物理層(物理的な接続(電気信号の変調方式やケーブル)に関する規定)

と呼ばれている。

OSI参照モデルについては、以下を参照

基礎からわかる!パソコン入門・再入門 > パソコン基礎知識 > インターネットの仕組み > 6.プロトコルとは

IDM、fabless、foundry(IDM、ファブレス、ファンドリー)

EDA(エレクトロニック・デザイン・オートメーション)に関する翻訳で、IDM、fabless、foundry(IDM、ファブレス、ファンドリー)という言葉がよく出てくる(例えば、Premier Communications Design Softwareのp3)。

IDMは、Integrated Device Manufacturerの略で「垂直統合型デバイスメーカー」と訳されることが多い。半導体メーカーのうち、設計から製造、販売まで自社ですべてを行なう(垂直統合で行なう)企業(あるいはビジネスモデル)がIDMと呼ばれる。現在の代表的なIDMとしてIntelやサムスン電子があるが、1980年代から1990年中頃にかけての日本の半導体メーカーはすべてIDMで、世界の半導体売上高トップ10社の半数程度に名前を連ねていたが、現在トップ10社に入るのは東芝の半導体部門だけであり、それも売却の予定である。

1990年代以降、半導体集積回路の微細化が進むに連れて、半導体工場の建設に莫大な投資が必要になったため、IDMに対して、ファブレス、ファンドリーと呼ばれる水平分業型のビジネスモデルが出てきた。ファブレスとは、fab(fabrication facility、製造工場)を持たず、製造はファンドリーに任せ、半導体の設計とマーケティング、販売のみを行なう企業(あるいはビジネスモデル)である。現在の代表的なファブレスとして、Qualcomm、NVIDIA、AMDなどがある。ファンドリー(foundry)とは、もともとは鋳造工場という意味であるが、自社で半導体の設計は行わず、ファブレス企業から製造を受託する(IDM企業からも製造を受託することがある)企業(あるいはビジネスモデル)である。現在の代表的なファンドリーとしては、TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)があり、ファンドリービジネスの50%以上のシェアを持っている。

IDM、ファブレス、ファンドリーについては、以下を参照。

日の丸半導体 衰退招いた「分業嫌い」の真相 電子立国は、なぜ凋落したか(4)

分業を嫌ったから日本は衰退した?ファブレス/ファンドリーで成功するには