lumped element and distributed element(集中定数素子と分布定数素子)

図1

マイクロ波回路シミュレータに関する翻訳で、lumped element(集中定数素子)、distributed element(分布定数素子)という言葉が出てくる。

「集中定数」とは、回路網の長さや素子の大きさが、そこを流れる交流の波長に対して無視でき、回路定数や素子定数が1点に集中しているという意味で、集中定数回路とか集中定数素子(コンポーネント)と呼ばれる。これに対して、「分布定数」は、回路網の長さや素子の大きさが波長に対して無視できなく、部品として目に見えない素子が分布していると考える必要がある場合に使用する。例えば、図1の上図のように、信号源と負荷の間の配線の距離が10 cmで、信号源の周波数が3 kHz(波長が100km)とすると、線路のどこで電圧を測定しても同じであるが、図1の下図のように、信号源の周波数が3GHz(波長が10cm)だと、配線(伝送線路)上の位置により電圧が異なるので、なんらかの回路素子(通過する信号の振幅と位相を変化させるもの)が伝送線路上に分布しているものとして考える必要がある。

分布定数回路については、以下のサイトが詳しい。

技術の渚

noise figure(雑音指数)

図1

図2

マイクロ波測定に関する翻訳で、noise figure(雑音指数)という言葉が出てくる。身近な例では、BSアンテナやCSアンテナの仕様に「雑音指数」という項目がある。

雑音指数とは、信号がデバイスを通過する際の、デバイスの入力端でのS/N比と出力端でのS/N比との比で、「デバイスを通過することによって生じるS/N比の減少度あるいは劣化度」を意味する。例えば、スペクトラム・アナライザで、増幅器の入力端で図1の(a)のような信号が観測され、出力端で(b)のような信号が観測されたとすると、信号の利得は、-40dBm-(-60dBm)=20dBなので、入力端での雑音パワー(-100dBm)も増幅器によって20dB増幅され、出力端では-80dBmとなるはずだが、実際には、増幅器内部で発生した雑音が加わり-70dBmになっている。この10dBの劣化が雑音指数である。

ここで、雑音指数の定義式を、デバイスの利得をG、デバイス内部で付加される雑音をNとして書き換えると、図2のようにデバイスの入力端での雑音パワーに依存する式となる。入力端での雑音パワーは、kTB(ここで、kはボルツマン定数(1.38×10^-23 J/K)、Tは入力信号源の温度(K)、Bはシステムの雑音帯域幅(Hz))なので、結果として、雑音指数は、入力信号源の温度Tに依存する。IEEEでは、雑音指数を決定するための標準温度Tとして290Kを推奨している。雑音指数の測定法として、Yファクタ法コールドソース法などがある。

雑音指数についての詳細は、以下のリンクを参照。

RFおよびマイクロ波の雑音指数測定の基礎

bit/s/Hz(ビット/s/Hz)

無線通信測定に関する翻訳で、bit/s/Hz(ビット/s/Hz)という単位が出てくる。これは、帯域幅1 Hz当たりの情報伝送速度(ビット/s)で、「周波数利用効率」とか「帯域幅効率」とか「スペクトラム効率」と呼ばれている。LTE-Advancedでは、8×8アンテナ構成で30 ビット/s/Hz(ダウンリンク)を目標にしている(参考:LTE-Advancedの概要のp10の表3)。

シャノンの通信路容量の定理(C=B log(1+S/N)、C:情報伝送速度(ビット/s)、B:帯域幅(Hz)、S/N:信号対雑音比、参考:情報理論とサンプリングの基礎)から、スペクトラム効率の理論限界C/B(ビット/s/Hz)が決まるが、MIMO(マルチ入力マルチ出力)と呼ばれる受信と送信に複数のアンテナを使用する手法により、スペクトラム効率の理論限界がM・C/B(M:M(送信アンテナの個数)×M(受信アンテナの個数))に向上する。身近な例では、MIMOは無線LANにも使用されている。