scanning microwave microscopy(走査型マイクロ波顕微鏡法)

走査型プローブ顕微鏡に関する翻訳で、scanning microwave microscopy(走査型マイクロ波顕微鏡法)という言葉がよく出てくる(例えば、走査型マイクロ波顕微鏡法(SMM)モード)。

走査型マイクロ波顕微鏡は、走査型プローブ顕微鏡の原理とベクトル・ネットワーク・アナライザを組み合わせたものである。プローブで試料表面を走査(スキャン)しながら、振幅/位相が既知のマイクロ波の入射信号を微小な探針(プローブ)に伝送し、プローブと試料の表面の間の終端(微小な間隙)で生じる反射波の振幅/位相を測定することにより、試料表面の局所的な反射係数(終端インピーダンス)の変化を、走査型プローブ顕微鏡の原子レベルの分解能でイメージング(可視化)することができる。反射係数はキャパシタンスに変換することも可能で、走査型静電容量顕微鏡のように半導体表面を走査して、キャリア分布を可視化できる。

走査型マイクロ波顕微鏡については、以下を参照

九州大学中央分析センター > 刊行物 > センターニュース > Vol.29, No.3(2010)の4.1 SMMシステム概要

Attofarad Capacitance Measurement with Scanning Microwave Microscopy(英語pdf)

Vth

半導体デバイス測定に関する翻訳で、Vthという言葉がよく出てくる(例えば、B1500A半導体デバイス・アナライザのp3)。Vthは、Voltage THreshold(しきい値電圧)の略である。

CPUやメモリなどのLSIには、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor、金属酸化膜半導体)構造のトランジスタ(MOSFET、FETはField Effect Transistor(電界効果トランジスタ)の略)がスイッチング素子として使われている。MOSFETのゲートに電圧(電界)を印加する/しないによる、ソース-ドレイン間の電流のオン/オフ制御(スイッチ)を利用して、論理回路が形成されている。

nチャネル(n型)MOSFETは、p型半導体基板上にチャネル(電気の通り道)と呼ばれる領域を挟んで離れた2箇所にn型半導体領域(一方にソース電極、もう一方にドレイン電極が接続される)がある。チャネル領域の真上には酸化膜(絶縁層)を挟んで金属電極(ゲート電極)が存在する。

ゲート電極に少しずつ正の電圧を印加していくと、絶縁層を挟んだp型半導体基板の多数キャリア(電流の担い手であるホール)が正の電圧に反発してグランドに逃げて、動けないマイナスの電荷が残り、空乏層が形成される(ゲート電圧に応じて空乏層が厚くなっていく)。この状態では、ゲート直下には、動けないマイナスの電荷が残っている空乏層があるだけなので、ドレインに電圧を印加してもソース-ドレイン間に電流は流れない。

さらにゲート電圧を大きくしていくと、空乏層の厚さだけでは対応できなくなり、ソースとドレインのキャリア(電子)がゲート直下に引き寄せられて、ゲート直下のp型半導体が電子の多いn型半導体に反転する(反転層が形成される)。反転層が形成されると、ソースとドレインがn型半導体でつながるので、電流が流れ始める。このときのゲート電圧をしきい値電圧(Vth)と呼ぶ。

MOSFETについては、以下を参照

山形大学大学院理工学研究科廣瀬文研究室 > 半導体デバイス教科書プロジェクト > 第6章 MOSFET

Vthについては、以下を参照。

CMOSアナログのいまさらでも聞きたい!

神様の半導体講座 > カテゴリ > デバイス > 2004年04月12日 トランジスタの動作

QSCV

半導体デバイス測定に関する翻訳で、QSCVという言葉がよく出てくる(例えば、B1500A半導体デバイス・アナライザのp3)。QSCVは、Quasi-Static Capacitance-Voltage(準静的CV)の略である。

QSCV法は、界面準位密度を評価する方法の1つである。非常に低い周波数(Quasi-Static)の電源と高周波電源を用意して、それぞれの電源でゲート電極に電圧を印加して、C-V特性を測定し、以下のようにして界面準位密度を求める方法である。

非常に低い周波数をゲート電極に印加したときは、界面準位にキャリアが捕獲され電荷が溜まる状態が反映されるのでその等価容量Citが半導体基板の空乏層容量Csに並列接続され、それらに絶縁(酸化)膜の容量Coxが直列に接続された等価回路として、MOS構造の容量Clfが表され、

1/Clf=1/Cox+1/(Cs+Cit)

となる。

高周波をゲート電極に印加したときは、界面準位へのキャリアの捕獲/放出プロセスが高周波に追随できず、MOS構造の容量(キャパシタンス)Chfは、絶縁膜の容量Coxと空乏層容量Csが直列に接続された等価回路で表され、

1/Chf=1/Cox+1/Cs

となる。

上の2つの式から、Citを求めて、界面準位密度Ditを

Dit=Cit/qA(q:電子の電荷、A:電極下の界面の面積)

で求める方法がQSCV法である。

界面準位については、以下を参照

山形大学大学院理工学研究科廣瀬文研究室 > 半導体デバイス教科書プロジェクト > 第4章 ショットキーダイオード

QSCV法については、以下を参照。

福井大学審査学位論文 [博士(工学)] 窒化物半導体トランジスタの高温動作に関する研究(平成26年3月 畑野 舞子)の「2-5-2 界面準位の評価法」の「high-low 法」