パワーアンプ測定に関する翻訳で、Power-Added Efficiency(電力付加効率)という言葉がよく出てくる(例えば、Keysight 8990Bピーク・パワー・アナライザおよびN1923A/N1924A広帯域パワーセンサのp7)。Power-Added Efficiencyは、PAEと略されることが多い。
携帯電話やスマートフォンなどのモバイル無線機器やその基地局には、電波を遠くに送信するためにパワーアンプが内蔵され、電力消費の大きな部分を占めている。モバイル無線機器のバッテリー駆動時間の増加やその基地局の電力消費の削減のために、パワーアンプの高効率化(省電力化)は常に大きな課題であり続けている。
パワーアンプの効率を表わす指標として、以下で定義される電力付加効率(PAE)が用いられている。
PAE=(Pout-Pin)/Pdc
(Pout:パワーアンプから出力される信号電力、Pin:パワーアンプへ入力される信号電力、Pdc:電源からパワーアンプに供給されるDC電力)
パワーアンプへの入力信号の電力(Pin)が大きくなると増幅によりそれ以上に出力信号の電力(Pout)が大きくなり、パワーアンプを動作状態にするために必要なバイアス電流による電力増幅に寄与しない無効なDC電力消費(Pdc-(Pout-Pin))の割合が相対的に小さくなるので、電力付加効率は増加する。したがって、パワーアンプを高効率で動作させるためには、圧縮領域(飽和領域)に近い動作点(出力信号の電力が最大に近くなる動作点)で使用する必要がある。
しかし、圧縮領域ではパワーアンプの動作が非線形になり(出力が入力に比例しなくなり)相互変調歪みが大きくなって、隣接チャネルに不要な歪み成分が漏洩して混信したり、近年のモバイル無線機器でよく使用されているOFDMなどの複雑な変調信号を復調する際に大きなエラーレートが生じる原因となる。このような問題を解決するために、デジタル・プリディストーションやエンベロープ・トラッキングなどの手法が用いられている。
電力付加効率(PAE)については、以下を参照
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