スペクトラム・アナライザに関する翻訳に、resolution bandwidth(分解能帯域幅)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent PSAシリーズ・スペクトラム・アナライザのp5)。resolution bandwidth(分解能帯域幅)は、RBWと略されることがある。
スペクトラム・アナライザは、信号の周波数特性(横軸が周波数、縦軸が大きさの周波数領域の信号波形)を表示する測定器である。このような測定器は、大きく分けて、FFTアナライザと掃引同調型(スーパーヘテロダイン方式)スペクトラム・アナライザの2種類がある。
FFTアナライザは、時間領域(横軸が時間、縦軸が大きさ)の信号を高速フーリエ変換(FFT)することにより、周波数領域の波形を計算して表示する。しかし、高周波信号を表示するには、広帯域で時間領域の信号を捕捉する必要があり(広帯域の増幅器を使用する必要があり)、バックグラウンド・ノイズが大きくなって、ダイナミック・レンジが制限されるという欠点がある。
掃引同調型スペクトラム・アナライザは、(高周波の)入力信号(RF信号)をミキサでダウンコンバートして、周波数の低いIF信号に変換してから増幅して表示するので、ノイズが少なく大きなダイナミック・レンジが得られる。
このミキサは非線形デバイスなので、ミキサの出力には、必要な差信号(RF信号の周波数-局部発振器(LO)の周波数)以外に、RF信号やLO信号の高調波成分やそれらの和と差の成分が含まれている。これらの不要な周波数成分を除去するために、ミキサのIF出力をバンドパス・フィルタ(IFフィルタと呼ばれる)に通す必要がある。このバンドパス・フィルタの帯域幅が分解能帯域幅である。
掃引同調型スペクトラム・アナライザでは、周波数が固定のRF信号に対して、LO信号の周波数を掃引しながら(変化させながら)、同調したIF信号を測定(表示)する。すなわち、掃引に伴って、差周波数であるIF信号の周波数も変化しながら(IF信号の振幅は一定)、選択した周波数特性(帯域幅)のIFフィルタを通過するので、IFフィルタの周波数特性(帯域幅)の波形がCRTに表示される(ここのJavaアプレットを参照)。したがって、分解能帯域幅を狭くすることにより、周波数が近接した2つのRF信号を表示(分解)できるようになったり、ノイズ・レベルが下がってダイナミック・レンジが大きくなるが、掃引速度(測定速度)は低下する。
因みに、掃引同調型(スーパーヘテロダイン方式)と呼ばるのは、スーパーヘテロダイン方式のAMラジオ(放送局の周波数(固定)に合わるために、ダイヤルを回して(LO周波数を変化させて)同調することにより、音声が聞こえるようになる)と同じ原理だからである。掃引同調型スペクトラム・アナライザでは、ダイヤルを回すという操作が自動で行われ、同調したら(音声が聞こえるのではなく)その信号の同調周波数における大きさが画面に表示される。
スペクトラム・アナライザの動作原理については、以下を参照