uncertainty(不確かさ)

計測器の翻訳で”uncertainty”という言葉がよく出てくる。例えば、スペクトラム・アナライザの振幅確度の最適化がある。

測定結果の信頼性を表す言葉として測定誤差というのがある。「測定誤差」は、「測定値」-「真の値」で定義され、概念として分かり易いが、「真の値」という不可知の量が定義に含まれているという原理的な困難がある。また、測定結果の信頼性を表す方法が技術分野や国によって異なるという問題もあった。そこで、国際標準化機構(ISO)を中心にして、「計測における不確かさの表現のガイド」(Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement、GUM)が出版され、測定結果の信頼性を表す指標として、「不確かさ」(uncertainty)が導入された。そこでは、「不確かさ」は以下のように定義されている。

測定の結果に付随した、合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ(parameter, associated with the result of a measurement, that characterizes the dispersion of the values that could reasonably be attributed to the measurand)

真の値や誤差という不可知の量を、定義の中で参照することを避けたために、このような回りくどい表現になっている。

不確かさについてのリンクを、以下に挙げておく。

不確かさに関する文献
不確かさ – 測定の信頼性を高めるために

phase lock loop(位相ロック・ループ)

図1

図2

計測器の翻訳で、”phase lock loop”という言葉がよく出てくる。これは、「位相ロック・ループ」または「フェーズ・ロック・ループ」と訳される。PLLと略記されることもある。例えば、高周波デザイナーの為のVCO/PLL周波数シンセサイザ設計/評価手法がある。以下にPLLの動作原理を説明する。

PLLとは、外部からの入力信号(基準信号)と同期した(位相差が等しい)出力信号を生成するための回路で、基本的な回路構成を図1に示す。PLLは、2つの信号間の位相を比較して位相差信号を生成する位相比較器、位相差信号をDC制御電圧に変換するループ・フィルタ(ローパス・フィルタ、積分器)、電圧制御発振器(VCO)で構成される。VCOの出力信号の位相が基準信号より遅れていれば(基準信号が図1のcos(ωRFt)、VCOの出力信号が図1のcos(ωRFt-θ)とすると)、位相比較器が位相差信号を生成する。それをループ・フィルタに通すことにより、位相差(図1のθ)の大きさに応じて、VCOの位相を進ませるDC制御電圧(図2の-Bsinθ)が生成され、VCOの出力信号の位相が進む。この動作が、連続的に実行されることにより、VCOの出力信号の位相と基準信号の位相との差がゼロになる(同期される)。PLL自身は、周波数を同期させているのではなく、位相を同期させているが、結果的に周波数も同期させることになる。

Fourier transform and inverse Fourier transform(フーリエ変換と逆フーリエ変換)

図1

図2

周波数領域(周波数ドメインとも呼ぶ)の測定器(ネットワーク・アナライザなど)や時間領域(タイム・ドメインとも呼ぶ)の測定器(オシロスコープなど)のドキュメントの翻訳に、”Fourier transform”、”inverse Fourier transform”という言葉がよく出てくる。例えば、ベクトル・ネットワーク・アナライザとオシロスコープによるTDR測定の相関の検証と性能の比較がある。

時間領域のデータ(波形)を周波数領域のデータ(スペクトラム)に変換することを「フーリエ変換」といい、その逆を逆フーリエ変換という。例えば、時間/周波数/モーダル・ドメインの概要の6ページを読めば、時間領域の波形と周波数領域のスペクトラムは同じデータを別の方向から見ているだけということがわかる。以下で、フーリエ変換と逆フーリエ変換の式を導いておく。

任意の周期関数は、図1のように、その基本波周波数ωとn次高調波周波数nωのsinとcosの無限和で表わすこと(フーリエ級数展開)が可能である。フーリエ級数展開は、オイラーの公式を用いて、複素数表示できる。ここで、基本波周波数ωを0に近づける(周期Tを無限大にする)ことで、周波数領域のスペクトラムを連続化すると、逆フーリエ変換とフーリエ変換の式が得られる。すなわち、周期的に繰り返される時間波形しか扱えないフーリエ級数展開から、周期性のない波形を扱えるフーリエ変換となる。時間領域の連続関数から周波数領域の連続関数に変換することをフーリエ変換といい、その逆を逆フーリエ変換という。