baud(ボー)

デジタル変調に関する翻訳に、baud(ボー)という言葉がよく出てくる(例えば、N4392A光変調アナライザ コンパクト、ポータブル、低価格のp12の「10 Gボーのシンボル・レート」)。

baudは、データ伝送速度の単位で、フランスの電信技術者のJean-Maurice-Emile Baudot(1845-1903) に由来する。

データ伝送速度の単位は、通常はbps(bits per second)であり、1秒間に何ビット伝送できるか(ビット・レート)を表す単位である。baudは、正確には、1秒間に何回変調できるか(変調速度、ボー・レート)を表す単位である。例えば、BPSK(2値位相シフト・キーイング)では1回の変調で1ビットの情報を伝送できるのでbps=baudとなるが、16QAM(16値直交振幅変調)では1回の変調で4ビットの情報を伝送できるのでbps=4×baudとなる。ボー・レートはシンボル・レートと呼ばれることもある。

ボー・レート(シンボル・レート)については、以下を参照

通信システムのディジタル変調入門編のp12~p17

EVM(エラー・ベクトル振幅)

デジタル変調に関する翻訳に、EVMという言葉がよく出てくる(例えば、Agilent MXAシグナル・アナライザ N9073A-1FP W-CDMA測定アプリケーション N9073A-2FP HSDPA/HSUPA測定アプリケーションのp23)。

EVMは、Error Vector Magnitude(エラー・ベクトル振幅) の略で、デジタル変調信号の品質の指標である。

デジタル変調信号は、横軸を搬送波と同じ位相、縦軸を搬送波と直交する位相にとったコンスタレーション図上のシンボル・ポイント(シンボル位置とも呼ばる)で表される。この理想的なシンボル位置と復調器により復調(測定)されたシンボル位置とのずれがエラー・ベクトルで、このエラー・ベクトルの大きさと理想シンボル位置の大きさとの比がエラー・ベクトル振幅(通常%単位で表される)である。

EVM(エラー・ベクトル振幅)については、以下を参照

パーフェクトなディジタル復調測定のための10ステップのp6

FFT(高速フーリエ変換)

信号解析に関する翻訳に、FFTという言葉がよく出てくる(例えば、高速オシロスコープの歪み特性の評価 AgilentとTektronixの比較のp3)。FFTは、Fast Fourier Transform(高速フーリエ変換) の略で、離散フーリエ変換を高速に計算するための算法である。

図1

図1


任意の周期関数は、その基本波周波数ω0とn次高調波周波数nω0のsinとcosの和で表わすこと(フーリエ級数展開)が可能である。このとき基本波周波数ω0を0に近づけて(周期Tを無限大にして)、周波数領域のスペクトラムを連続化することにより、フーリエ変換と逆フーリエ変換の式が得られる。時間領域の連続関数から周波数領域の連続関数に変換することをフーリエ変換といい、その逆を逆フーリエ変換という。
図2

図2


一般に、時間領域で測定(サンプリング)される信号は、離散データ(短い時間間隔Δtで測定されたデータ)なので、これを周波数領域に変換するために、離散フーリエ変換が用いられる(図1)。サンプリング数をNとすると、離散フーリエ変換を計算するのにN×N個の積を計算する必要があるので(図2)、Nが大きいと膨大な時間がかかる。FFTを使用すると、計算回数がNlogN程度に減少するので(図3)、高速に計算できる。
図3

図3