Implement(実装する、インプリメント…、実行…、実施…、実現…、…)

IT分野のドキュメントなら、”実装する”とか”インプリメントする”とか訳す。IT技術者にとっては、その用語で何ら違和感はない。実装というのは、機器やソフトアに新しい機能、部品、仕様、プログラムや関数などを組み込む行為のことだが、”実装”にするか”インプリメント”にするかはプロジェクトごとの確認が必要だろう。文脈によっては”導入”と訳す場合もある。何れにしても、文脈に従えばよい。一般的なドキュメントでは、言うまでもなく”実装”や”インプリメント”などとは訳さない。分野やターゲットなる読者層を考えて、実行、実施、実現といった訳語を用いるべきだろう。

Premium(プレミアム、……)

翻訳者泣かせの単語でもある。分野によって訳語が異なるからだ。カタカナ表記が安全ではあるが、翻訳者としては最適な訳語を用いたい。そのためには、この単語の意味を理解するしかない。
Preの接頭辞からして、ラテン語のPrimusかPraeあたりが起源なのだろうと想像できる。楽しく解釈すれば、Primusには第一番目という意味もあるので、戦国時代で言うところの”一番槍”がそれにあたると推測できる。つまり、勇敢に先頭に立ち、死のリスクを負いながら敵陣に切り込んで最初に手柄をたてれば、”あっぱれ!”ということで特別に上乗せされた恩賞がもらえたわけだ。従って、一番槍は特別な存在(希少価値)であり、手柄を立てれば、通常の手柄よりも恩賞という価値が付加されたことになる。今でいう付加価値だ。それから派生してきたに違いないと考えれば、賞与、奨励金、割増給、景品類といった訳語が出てくる。逆の立場からすれば、割増金、オプション料金、手数料、掛金…がプレミアムになるといった解釈も可能となる。何れにしても、文脈を読み取ろう。

Gaussian distribution(ガウス分布)

図1

図2

図3

ガウス分布は、正規分布またはガウスの誤差関数と呼ばれ、数学者ガウスが19世紀初頭に測定値の偶然誤差を考察する過程で生まれた。ジッタ測定(例えば、高速データ・レートでのジッタ解析)などで、計測器の翻訳にもよく出てくる。

ある物理量を測定したとき、その測定値に偶然誤差しか含まれていないと仮定する。測定値がz1、z2、…、zn、真の値をzとすると、偶然誤差は、ξ1=z1-z、ξ2=z2-z、…、ξn=zn-zである。偶然誤差の頻度分布を、全体の頻度が1になるように規格化したものを確率密度関数といい、ξからξ+dξの範囲に誤差が生じる確率は、f(ξ)dξとなる。ξ1、ξ2、…、ξnという偶然誤差が生じる確率P(ξ1、ξ2、・・・、ξn)は、個々の偶然誤差が生じる確率f(ξ1)、f(ξ2)、・・・、f(ξn)が独立な(他の偶然誤差の発生に依存しない)ので、P(ξ1、ξ2、・・・、ξn)=f(ξ1)f(ξ2)・・・f(ξn)=f(z1-z)f(z2-z)・・・f(zn-z)と書ける(図1)。ここで、zが真の値のときにPが最大になる(真の値が測定される確率が最も高い)ので、dP/dz=0である。以下、図2、3のように計算すると、ガウス分布関数(正規分布関数、ガウスの誤差関数)が求まる。

図1、2、3の計算からわかるように、ガウス分布関数は、最初の頻度分布の詳細な形(図1のf(ξ))には依存せず、個々の偶然誤差が生じる確率が独立で、dlnf(ξ)/dξが解析的(テーラー展開可能)であるという条件のみで決まる。これが自然界にガウス分布が多く存在する理由である。