chip rate(チップ・レート)

無線通信測定に関する翻訳で、chip rate(チップ・レート)という言葉がよく出てくる(例えば、3GPP W-CDMA携帯電話端末のデザインとテストのp5)。

CDMA方式の携帯電話や無線LANなどには、秘匿性があり干渉/妨害信号に強いスペクトラム拡散という通信方式が使用されている。スペクトラム拡散には、周波数ホッピング(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)方式と直接拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)方式がある。

直接拡散方式は、PSKやFSKなどによる1次変調(狭帯域変調)の後に、擬似ランダム・ビット・シーケンスにより生成したPN(擬似ランダム・ノイズ)コード(拡散コード)を使って2次変調(広帯域変調)を行う方式である。この拡散コードは、「1」と「-1」がランダムに現れる擬似乱数であり、このコードのビットは、ベースバンド信号(送信データ)のビットと区別するために「チップ」と呼ばれ、そのデータ・レートがチップ・レートである。したがって、2次変調後の変調波はチップ単位で変化している。また、 送信データ速度(ビット・レート)と拡散コード速度(チップ・レート)との比は、拡散率(Spreading Factor)と呼ばれている。

スペクトラム拡散とチップ・レートについては、以下を参照。

電波で情報を送れる仕組み 2

interleave(インタリーブ)

デジタイザやオシロスコープに関する翻訳で、interleaving(インタリーブ)という言葉がよく出てくる(例えば、M9703A AXIe高速デジタイザ/広帯域デジタル・レシーバのp2)。

デジタイザやオシロスコープには、アナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換するために、A/Dコンバータが搭載されている。しかし、A/Dコンバータのサンプリング・レートには限界があるため、高速なアナログ信号をリアルタイムにサンプリングするための手法として、インタリーブ・サンプリングが用いられている。

インタリーブ・サンプリングとは、複数のA/Dコンバータを並列動作させることにより、サンプリング・レートを向上させる手法である。例えば、2個のA/Dコンバータ(ADC1とADC2)を並列動作させる場合は、ADC1とADC2に供給するサンプリング・クロックの位相を180度ずらすことにより、(1個のA/Dコンバータ単独での隣接サンプリング・ポイント間のちょうど真ん中でサンプリングされるので)1個のA/Dコンバータ単独での動作の2倍のサンプリング・レートが実現される。インタリーブ・サンプリングにより、N個のA/Dコンバータを並列動作させると、N倍のサンプリング・レートが得られるが、並列動作させるA/Dコンバータの特性の不一致やA/Dコンバータに供給するクロックの位相遅延誤差により、A/D変換された波形にインターリーブ歪みが生じるという問題がある。

インタリーブ・サンプリングについては、以下を参照。

オシロスコープのサンプリング・レートとサンプリング忠実度の評価:
正確なデジタル測定の方法
のp6~p14

haversine(ハーバーサイン)

任意波形発生器に関する翻訳に、haversine(ハーバーサイン)という言葉がよく出てくる(例えば、33600Aシリーズ Trueform波形発生器のp15)。

三角比は、直角三角形の2つの辺の比であり、sine(正弦)、cosine(余弦)、tangent(正接)がよく知られている。

ほとんど知られていない三角比として、versine(正矢)というものがあり、

versine(正矢)=1-cosine(余弦)

である。versine(正矢)の半分がhaversine(半正矢、ハーバーサイン)であり、

haversine(半正矢)=(1-cosine(余弦))/2

である。ハーバーサイン波は衝撃試験装置の波形などに使用される。

haversine(ハーバーサイン)については、以下のサイトを参照。

三角関数 sin cos tan