ELINT

レーダー測定に関する翻訳で、ELINTという言葉がよく出てくる(例えば、発生頻度の低い信号の広帯域/高ダイナミック・レンジ測定による複雑なシステム/環境の特性評価のp3)。ELINTは、ELectronic INTelligence(電子諜報)の省略形である。

インテリジェンス機関(情報機関、諜報機関)の情報収集手法として、HUMINT(HUman INTelligence)、IMINT(IMagery INTelligence)、SIGINT(SIgnal INTelligence)がある。HUMINTはいわゆるスパイ活動による人からの情報収集、IMINTは偵察衛星や偵察機により得られた画像を解析することによる情報収集、SIGINTは電子通信信号の傍受と解析による情報収集である。

SIGINTは、COMINT(COMmunication INTelligence)とELINT(ELEctronic Intelligence)に分類される場合がある。COMINTは通信の傍受と暗号解読による情報収集である。ELINTは、ジャミング(電波妨害)、ECM(Electric Counter Measure、電子対抗手段)、ECCM(Electronic Counter-Counter Measure、対電子対抗手段)に活用するために、通信以外の電磁放射(レーダーや電子戦機器など)の周波数、パルス繰り返し数、変調方式などの情報を収集することである。

ELINT、COMINT、SIGINTについては、以下を参照。

軍事とIT > 3 > 第43回 情報活動とIT(3) ELINT・COMINT・SIGINT

Wi-SUN

無線通信測定に関する翻訳に、Wi-SUNという言葉がよく出てくる(例えば、標準信号発生器セレクションガイドのp7)。

Wi-SUNは、Wireless Smart Utility Networkの略で、日本のNICT(情報通信研究機構)が主導してIEEEで標準化された無線通信規格(IEEE 802.15.4g)の商品名である。「IEEE」は、「The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.(米国電気電子技術者学会)」の略称で、「802」は「802委員会(LAN/MANの標準化委員会)」の意味であり、「15」は「無線パーソナルエリアネットワークのワーキング・グループ」という意味である。Bluetooth規格は「IEEE 802.15.1」、ZigBee規格は「IEEE 802.15.4」をベースにしている。「IEEE 802.15.4」は、通信速度よりも小型、低価格、低消費電力が重視された規格である。

Wi-SUN(IEEE 802.15.4g)は、ZigBee規格(IEEE 802.15.4)を拡張したもので、無線通信機能(自動検針、課金、遮断機能)付きの電気、ガス、水道などのメーター(スマートメーターと呼ばれる)用に制定された規格である。また、人の介在なしで機器同士の通信を行なう「M2M」(Machine to Machine)や「IoT」(Internet of Things)によるビックデータの収集/活用のための通信手段として期待されている。

Wi-SUNは、ZigBeeに対して、変調方式の追加、周波数帯の拡張、ペイロード長の拡張が行われ、通信距離が長く(最大約100m 対 最大2~3km)、消費電力が1/10以下で乾電池数個で10年の動作が可能になっている。

Wi-SUNについては、以下を参照。

2年後にはスマホにもWi-SUN」―標準化を先導するNICTがWi-SUN普及に自信

UWB

広帯域通信信号測定に関する翻訳で、UWBという言葉がよく出てくる(例えば、Agilent Infiniium オシロスコープと89601A ベクトル信号解析ソフトウェアのp1)。UWBは、Ultra WideBandの略で、 超広帯域無線通信と訳されることがある。

UWBは、もともと米国の軍事用レーダー技術として開発されてきたが、2002年に米連邦通信委員会(FCC)が民生利用を許可した。FCCの定義では、帯域幅が500MHz以上または比帯域幅(10dB帯域幅/中心周波数)が20%以上ものがUWBとされる。

UWBは、狭義ではインパルス無線方式であり、搬送波を用いないで、パルス幅が短く(1ns以下)ピーク出力の大きなスパイク状の波形(インパルス)をパルス列としてそのまま送受信して情報を伝送する。フーリエ変換の性質から、時間領域で短くて鋭いインパルスは、周波数領域では、ノイズ様の振幅が非常に小さく広がったスペクトラムになるので、他の通信システムとの干渉が少なく、通信の秘話性が高まるという利点がある。さらに、搬送波を用いないので、回路を簡素化できるという利点がある。しかし、インパルス無線方式では、高速なデータ伝送を行なうには、時間軸上で高速なDSPを使用して高速にデータを処理する必要があり、実用的な観点から、UWBの標準化作業の初期段階で排除された。

広義のUWBには、直接拡散によるスペクトラム拡散方式と周波数ホッピングを利用したマルチバンド(MB)-OFDM(直交周波数分割多重化)方式がある。これらの2つの方式が、UWB標準化委員会で争われたが、2006年に標準化活動の断念と解散が採択され、それぞれ独自に実用化が進められてきた。しかし、現在では、無線LANなどの他の通信システムのデータ伝送速度が高速化し、UWBの優位性がなくなってきていて、高速通信に関連する開発は停滞している。

一方、パルス幅が短く高解像度が得られるので、自動車用の近距離レーダーとしてUWBレーダーの開発が活発化している。

UWBについては、以下を参照。

電子情報通信学会誌のホームページ > 話題の記事 > 2004年5月号 > 「超広帯域(UWB)無線通信と今後の高度無線アクセス技術」

UWB無線システムの動向について