cycle accurate(サイクルアキュレート)

デジタル信号処理設計に関する翻訳に、cycle accurate(サイクルアキュレート)という言葉がよく出てくる(例えば、W1717 SystemVueハードウェア・デザイン・キットのp3)。

スマートフォン、タブレットPC、DVD/ブルーレイレコーダーなどの身の回りの電化製品には、システムLSIが組み込まれている。システムLSIとは、その装置(システム)のほとんどの機能を1つのLSIに集約したもので、CPU、メモリ、キャッシュ、バスなどの入出力インタフェース、そのシステム固有のハードウェアエンジンから構成され、近年ますます大規模化、多機能化している。

また、このようなシステムLSIのプロセッサ上で動作するソフトウェアの開発/検証は、短期間で高品質(バグが少なく高性能)に行なう必要があり、ハードウェア設計の早い段階から協調検証ツールとしてプロセッサのシミュレータを使用してハードウェアとソフトウェアのデバッグや性能検証が行われている。ハードウェアの検証では精度が優先され、ソフトウェアの検証では速度が優先される。

プロセッサのパイプラインの動作やキャッシュの動作(クロックサイクル単位での動作で、通常ソフトウェアのプログラマには見えない動作)を模擬できるシミュレーションは、サイクルアキュレートな(サイクル精度の)シミュレーションと呼ばれ、精度は高いが動作速度は遅い。プロセッサの命令セットの命令単位で動作を模擬するシミュレーションは、命令セットシミュレーションと呼ばれ、精度は低いが動作速度は速い。

システムLSIの設計については、以下を参照。

システムLSI設計検証技術

C rate(Cレート)

バッテリ測定に関する翻訳で、C rate(Cレート)という言葉がよく出てくる(例えば、移動体デバイスのバッテリ寿命を最適化するための10のヒントのp15)。C rateはCapacity rateの略である。

バッテリの容量(キャパシティ)とは、満充電の状態のバッテリから、バッテリの端子電圧が所定の終止電圧に達するまで放電させてたときに取り出すことのできる電気(電荷)量(C(Coulomb)単位)である。バッテリの場合は、Ah(アンペア時)やmAh(ミリアンペア時)の単位で表されることが多い(1 Ah=1 A×3600 s=3600 C)。例えば、20 Ahの容量のバッテリは、20 Aの電流を1時間(10 Aの電流を2時間、5 Aの電流を4時間、…)流すことのできる電気(電荷)を持っていることを意味している。

C(Capacity)レートとは、バッテリ容量に対する放電(充電)電流値の比(放電(充電)電流(A)/容量(Ah))であり、バッテリの放電(充電)特性を表わすときに用いられる。例えば、20 Ahの容量のバッテリを1 CのCレートで放電するとは、20 Aの放電電流で放電することを意味し、20 Ahの容量のバッテリを0.5 CのCレートで放電するとは、10 Aの放電電流で放電することを意味する。

Cレートの単位記号と電荷量の単位記号は同じCであるが、意味が異なること(CapacityのCとCoulombのC)に注意する必要がある。

Cレートについては、以下を参照。

リチウムイオン電池の豆知識リチウムイオン電池に関する用語 ③Cレート

slew rate(スルーレート)

電源の翻訳に、slew rate(スルーレート)という言葉がよく出てくる(例えば、スイッチング電源の測定のp14)。

スルーレートとは、入力波形の変化にどの程度出力波形が追従できるかを示す定量的な指標である。立ち上がり時間と立ち下がり時間が0秒の理想的な矩形波(パルス波)を入力したときの、出力波形の立ち上がりまたは立ち下がり領域での単位時間当たりの電圧変化として定義され(通常、パルス振幅の10%から90%に(90%から10%に)変化するのにかかる時間を測定して求める)、V/μs単位で表されることが多い。

スルーレートは、理想的には∞(立ち上がり/立ち下がり時間が0秒なので)であるが、信号源側や負荷側に容量成分(コンデンサ)が存在するために、そのコンデンサを充放電するのに時間がかかり、有限の値になる。このような制限により、スルーレートが小さいと、波形が歪む(矩形波が台形波になったり、正弦波が三角波になる)。

スルーレートについては、以下を参照。

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