Barker code(Barkerコード)

レーダ測定やシミュレーションに関する翻訳で、Barker code(Barkerコード)という言葉がよく出てくる(例えば、電子戦用信号作成:テクノロジーと手法のp12)。

リニア周波数変調(FM)を用いたパルス圧縮レーダーでは、距離分解能と探知距離(S/N比)を両立させるために、パルス幅Twを長くして、そのパルス内部の正弦波の周波数がTwの期間にリニアにΔf増加する信号(チャープ信号)を送信信号として用い、目標で反射された受信信号を、周波数の増加Δfに対してリニアに遅延時間が減少する回路に通すことにより、元のパルス幅Twを長くしても(S/N比を向上させても)、パルス幅を短く(圧縮)して(パルス幅Twからパルス幅1/Δfに圧縮して)、距離分解能を向上させることができる。

距離分解能と探知距離(S/N比)を両立させる手法として、リニア周波数変調(FM)を用いるパルス圧縮以外に、2値位相変調を用いるパルス圧縮手法がある。この方法では、パルス幅(Tw)が長いパルスを、パルス幅(Tw_s)の短いいくつかのサブパルス(Tw=n×Tw_s)に分割し、各サブパルスの位相をランダムなバイナリ符号列(+1(位相を変化させない)と-1(位相を180°反転する)の符号列)で変調して、送信する。この送信信号と目標で反射された受信信号との相互相関関数のピークの時間位置(時間遅れ)を求めることにより、サブパルスに分割しないパルスを用いる場合よりも短い遅延時間を求めることができる(距離分解能が向上する)。

上の相互相関関数の計算は、長いパルス(パルス幅(Tw))をn個の等間隔の短いサブパルス(パルス幅(Tw/n))に分割し、各サブパルスをランダムなバイナリ符号列で変調した送信波形f(t)と、送信信号が目標で反射して帰ってくるまでに減衰(減衰係数A)して遅延時間dだけズレた、送信信号と相似の受信信号g(t)=A×f(t-d)との相互相関関数の計算なので、送信信号の自己相関関数の計算となる。この自己相関関数のピーク値は、元のパルスの振幅の約n倍になり(すなわち、S/N比のSが大きくなるので探知距離が向上し)、ピークの幅は元のパルス幅(Tw)の1/nになる(すなわち、パルス幅に短くなるので距離分解能が向上する)。

このようなランダムなバイナリ符号列を用いると、自己相関関数のピーク値が大きくなるが、ピーク以外のサイドローブも発生し、目標の誤認につながる。このようなバイナリ符号列の内、自己相関関数のサイドロードの大きさが最小になるものが知られていて、Barker符号(コード)と呼ばれる。

パルス圧縮とBarker符号については、以下を参照。

A study of radar pulse compression using complementary series to modulate the transmitted waveform.(英語pdf)

京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻 集積システム工学講座 超高速信号処理分野 佐藤 亨 教授のホームページ > ディジタル信号処理論講義資料 > 追加テキスト(レーダーにおける距離計測とパルス圧縮)

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