triaxial cable(トライアキシャル・ケーブル)

微小電流測定に関する翻訳で、triaxial cable(トライアキシャル・ケーブル)という言葉がよく出てくる(例えば、B2980Aシリーズ アンメータによる半導体の微小電流測定のp6の図5)。triaxial cableは、三重同軸ケーブルと呼ばれることもある。

同軸ケーブルは、信号線である導体が中心にあり、その中心導体が絶縁体で覆われていて、その絶縁体は細い銅線を網目状に編んだ導体(外部導体)で覆われ、その外側は外皮(シース)で覆われている。外部導体は通常グランドに接続されて信号の帰路となるので、信号線を流れる電流による電磁界と外部導体を流れる電流による電磁界が相殺され、電磁ノイズが漏れるのを防ぐ電磁シールドの役目をする。

微小電流を測定する際に同軸ケーブルを使用すると、中心導体と外部導体が絶縁体で隔てられていても中心導体から外部導体へ僅かな電流(リーク電流)が漏れるので(例えば、絶縁体の抵抗が100 GΩで信号電圧が5 Vの場合、オームの法則から5/(100×10^6)=50×10^(-9)=50 pAのリーク電流が生じるので)、測定値に大きな誤差が生じる。また、信号電圧を掃引して測定する場合は、信号線と外部導体間のキャパシタンスに起因する充電電流が測定値に影響を与える。これらの誤差を避けるためにトライアキシャル・ケーブルが使用される。

トライアキシャル・ケーブルは、同軸ケーブルの中心導体と外部導体の間にさらに導体(中間導体)が挟まれた構造になっている(例えば、これ)。微小電流測定では、この中間導体はガードと呼ばれ、入力電圧と出力電圧が等しくなるバッファアンプを用いて信号線と同じ電位にドライブする。こうすることにより、信号線と中間導体(ガード)との電位差がゼロになるので、その間でリーク電流が生じず、充電もされなくなり、それらによる測定誤差を回避できる。このとき、中間導体と外部導体間の電位差によるリーク電流が生じるが、この電流はバッファアンプから供給された電流で測定系を経由しないので、測定値に影響を与えない。

ガードについては、以下を参照

明星大学 理工学部 総合理工学科 生命科学・化学系の西條純一氏のページ > 研究について > 5. 伝導の測定 5.2 シールド,ガード

Guarding(英語ページ)

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