chirp(チャープ)

レーダ測定やシミュレーションに関する翻訳で、chirp(チャープ)という言葉がよく出てくる(例えば、SystemVueを使用したレーダ・システムの設計と干渉解析)。

chirpという用語を辞書で引くと、「虫や鳥の鳴き声」という意味が出てくるが、レーダ測定では、chirp(チャープ)信号とは「周波数が時間とともに連続的に変化する信号」のことである。パルス圧縮レーダに、chirp(チャープ)信号が用いられている。

パルス・レーダでは、パルス信号を送信してから、目標からの反射信号が受信されるまでの遅延時間tを測定することにより、目標までの距離Rを求める。tは、電波が目標に達して反射されて帰ってくるまでの往復の時間なので、光速をcとすると、

R=ct/2

である。したがって、パルス・レーダの距離分解能ΔRは、パルス幅Twによって制限され、

ΔR=cTw/2  (1)

となる。

(1)式から、Twを短くすれば、距離分解能が向上するが、送信信号の平均電力が低下するので(パルスの占有帯域幅(≒1/Tw)が増加して受信時のS/N比が低下するので)、レーダの探知距離が短くなる。探知距離を伸ばすために、パルス圧縮レーダが用いられる。

パルス圧縮レーダでは、送信信号として、S/N比を稼ぐためにパルス幅Twを長くし、パルス内部の正弦波の周波数がTwの期間にリニアにΔf増加するリニア周波数変調(FM)をかけた信号(チャープ信号)を用いる。このようなチャープ・パルス信号を用いると、目標で反射されて戻ってきた受信信号を、周波数の増加Δfに対してリニアに遅延時間が減少する回路に通すことにより、元のパルス幅Twに関係なく、パルス幅(=1/Δf)を短く(圧縮)でき、距離分解能を向上できる。

パルス圧縮レーダについては、以下を参照。

日本財団 図書館 > 技術 > 電気工学.電子工学 > 平成15年度 新マイクロ波標識の開発に関する調査研究中間報告書 > 1.2 レーダー方式と技術開発動向

load pull(ロードプル)

ロードプル測定高周波パワー・アンプ測定に関する翻訳で、load pull(ロードプル)という言葉がよく出てくる(例えば、Xパラメータを用いたハイパワー増幅器の評価と最適化のp2)。

ロードプル測定は、携帯電話などの送信部の最終段のRF/マイクロ波パワー増幅器の出力特性(出力パワー、利得など)を最適化するのに用いられる手法である。

このような大信号条件下では、増幅器の出力特性は、入力信号レベル(ドライブ・レベル)と負荷インピーダンスの関数になる。

ロードプル測定は、上図のようなシステムを使用して、最大パワーが出力されるようにチューナを調整し、そのときの出力インピーダンスを測定する。チューナには、パッシブ型(終端インピーダンスの大きさと位相が可変)、アクティブ型(ハイ・パワー・デバイスで一般的な大きな反射を形成)、高調波対応型(個々の高調波に対して終端インピーダンスが可変)がある。その結果はスミス・チャート上の等出力パワー等高線(同じ出力パワーを与える負荷インピーダンス線)として示される。

ロードプル測定については、以下を参照

Load Pull for Power Devices(英語ページ)

Fibre Channel(ファイバ・チャネル)

高速シリアル・バス測定に関する翻訳に、Fibre Channel(ファイバ・チャネル)という言葉がよく出てくる(例えば、Infiniium 90000 Xシリーズ オシロスコープのp2)。Fibre Channel(ファイバ・チャネル)は、FCと略記されることがある。Fibre Channelは、当初、光ファイバ・ケーブルのみをサポートしていたので、Fiber Channelと呼ばれていたが、銅線もサポートされるようになったので、Fibre Channelという呼称に改められた。

ファイバ・チャネルは1988年から開発が開始され、ANSI(American National Standards Institute、米国規格協会)で1994年に規格が承認された高速シリアル・インタフェースの規格である。コンピュータとストレージ間の接続に当時一般的だったSCSIインタフェースのケーブル長の制限やパラレル・ケーブルによる取り回しの悪さを克服するために開発された。

ファイバ・チャネルによる接続には、銅線の同軸ケーブルまたは光ファイバ・ケーブルを使用でき、同軸ケーブルで最長75m、光ファイバ・ケーブルで最長10kmの伝送が可能である。2012年に32GFCと呼ばれる規格の策定が完了し、伝送速度(スループット)は6.4Gbpsに達している。ファイバ・チャネルのプロトコルは、FC-0 ~ FC-4の5階層で構成され、最上位層のFC-4でTCP/IP、SCSIなどのプロトコルがサポートされている。

現在では、大規模データセンタなどのサーバ-ストレージ間やストレージ間のSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)に使用され、ビッグデータ分析、クラウド・ストレージ・ネットワークなどの普及に伴い、ファイバ・チャネル市場の拡大が続いている。

ファイバ・チャネルについては、以下を参照。

ジャパンデータストレージフォーラムのホームページ > ストレージ・ネットワーキング技術部会 > ファイバチャンネル情報 > FCIA関連 > ファイバーチャネル ソリューション・ガイド 2012-2013(日本語翻訳)