RTD

データ収集システムに関する翻訳で、RTDという言葉が出てくる(例えば、Keysight 34970A データ収集/スイッチ・ユニットのp2)。

RTDは、Resistance Temperature Detectorの略で、測温抵抗体とも呼ばれる。RTD(測温抵抗体)は、温度が上昇すると電気抵抗が増加するという金属の性質(金属原子は一般に、最外殻の電子を放出して陽イオンになりやすく、放出された電子は、多数の金属原子の最外殻の重なりを自由に動き回れるので、電気を通しやすいが、温度が上昇すると、電子を放出した陽イオンの振動が激しくなり自由電子の走行が阻害され抵抗が増加する。室温付近では、金属の電気抵抗は温度にほぼ比例する)を利用した温度検出器である。工業用温度測定には、広い温度範囲で温度と抵抗の関係が一定で温度係数(単位温度当たり抵抗変化)が大きく、化学的に安定で経年変化の少ない白金(Pt)が使用され、日本工業規格、JIS C 1604-2013で規定されている。

測温抵抗体の抵抗値の測定には、2線式、3線式、4線式がある。2線式は、測温抵抗体の両端にリード線をつなぎ、定電流を流して電圧降下を測定しオームの法則から抵抗を計算する。2線式は、リード線が長い(リード線の抵抗が大きい)と誤差が大きくなるので、ほとんど使用されない。3線式は、測温抵抗体の一方の端に1本のリード線(抵抗値:r1)、もう一方の端に2本のリード線(抵抗値:r2と抵抗値:r3)をつないだものを使用する測定で、測温抵抗体の抵抗値をRとして、この文献の図のように、固定抵抗(抵抗値R1=R2の2つの抵抗)、可変抵抗(抵抗値R3)で、R1とR3+r2、R2とR+r1が対になるように(対向するように)ブリッジ回路を構成し、可変抵抗R3を調整して検流計に電流が流れないようにすると、R1×(R3+r2)=R2×(R+r1)が成り立つので、r1=r2の場合(リード線の長さが同じ場合)はR3=Rとなり、リード線の抵抗の影響を回避して測温抵抗体の抵抗値が得られる。4線式は、ケルビン接続によりリード線の影響を回避する方法である。

RTD(測温抵抗体)については、以下を参照

エム・システム技研のホームページ > エムエスツデーサイト > 計装豆知識 > センサ > 測温抵抗体の導線方式

DSRC

車載RF/マイクロ波システムの測定に関する翻訳に、DSRCという言葉がよく出てくる(例えば、FieldFoxハンドヘルド・アナライザによる車載RF/マイクロ波システムの検証/トラブルシューティングのp3)

DSRCは、Dedicated Short Range Communications(専用狭域通信)の略で、路車間(道路上に設置された無線設備(路側機)と自動車に搭載された車載器間)の狭い範囲での5.8 GHz帯を利用した近距離無線通信である。日本では、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses、社団法人電波産業会)のARIB STD-T75として標準化されている(米国では、IEEE 802.11p)。

DSRCを用いたサービスとして最も有名なのが、ETC(Electroic Toll Collection、有料道路自動料金収受システム)である。ETC以外には、駐車場、ガソリンスタンド、ファーストフード店のドライブスルーでの利用も可能になってきている。また、リアルタイムかつ大容量の道路交通情報や安全運転情報を提供するITS(Intelligent Transport System、高度道路交通システム)の中心となるものである。

DSRCについては、以下を参照。

一般社団法人 建設電気技術協会のホームページ > 技術に関する話題 基礎講座 > 162 DSRC(狭域通信)の現状と動向

CXPI

シリアルバスの測定に関する翻訳に、CXPIという言葉が出てくる(例えば、InfiniiVision Xシリーズ オシロスコープ用シリアル・バス・オプションのp2)。

最近の自動車には、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる自動車制御用コンピュータが多数搭載され(100個以上搭載している自動車もある)、電子制御により高度な機能(パワートレイン制御(エンジンやトランスミッションの制御)、ボディー制御(パワー・ウィンドウ、ドアロック、ミラーなどの制御)、安全制御(各種センサで取り込んだ車外情報によるブレーキ制御など)など)を実現している。また、これらの機能は互いに関連することが多いので、各ECU間でデータ通信を行って協調動作する必要がある。しかし、各ECUをそのデータ専用の個別のワイヤで配線すると、ECUの数が多い場合は、配線の数が膨大になり、配線の重量やスペースが増え、コストの増加、信頼性の低下、故障診断や設計変更が困難になるといった問題が生じる。

電子制御機能の内のボディー制御には、シンプルで低コストのLINの使用が適しているが、応答が遅いという欠点がある(マスターデバイスが順次スレーブデバイスをポーリングして通信を許可する方式で、スレーブ間通信はマスターを経由する必要があるので)。そこで、低コストで応答性を高めた車載通信規格として、日本発の国際標準を目指して社団法人自動車技術会が推し進めているのが、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)である。CXPIでは、CSMA/CR(Carrier Sense Multiple Access / Collision Resolution、搬送波感知多重アクセス/衝突解消)と呼ばれる方式を使用して、バスへのアクセスがなければどのスレーブも送信が可能で、同時に送信した場合もそれを調停する仕組みを備えているため、LInに比べて応答性が向上する。

CXPIについては、以下を参照。

日本発の車載LAN規格「CXPI」は「CANとLINのイイとこどり」