Bluetooth Low Energy (BLE)

微小電流測定に関する翻訳に、Bluetooth Low Energyという言葉が出てくる(例えば、Bluetooth Low Energyデバイスの正確な電流プロファイル測定)。

Bluetoothは、バージョン1.x、2.x、3.x、4.xと着実に進化してきている。バージョン3.0までは主にデータ転送レートの向上がバージョンアップの目的であったが、バージョン4.0で、大幅な省電力化を実現できる低消費電力モードが追加された。これが、Bluetooth Low Energy (BLE)である。あらゆるものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の有力な通信手段として、ZigBeeWi-SUNWi-Fi(802.11ah)などとともに注目されている。Bluetooth Low Energy (BLE)は、従来のBluetoothとは互換性がないので、デュアルモードにより従来のBluetooth接続にも対応した機器はBluetooth SMART READYとロゴ表記され、Bluetooth Low Energy (BLE)のみに対応した機器にはBluetooth SMARTとロゴ表記される。

Bluetooth Low Energy (BLE)は、通信を始める際に最初に必要なデバイス検出のためのスキャン対象のチャネル数が従来の79チャネルすべてから3チャネルに減少したことによるスキャン時間の削減、干渉軽減や秘話性のための周波数ホッピングの間隔が従来より長くなったことによる消費電力の削減、通信チャネル数が79チャネル(1 MHz間隔)から40チャネル(2 MHz間隔)に削減されたことによる高周波回路の簡素化による低電力化などにより、低消費電力が実現されていて、コイン電池1個で約3年の寿命があると言われている。

Bluetooth Low Energy (BLE)については、以下を参照。

IoT技術の代表「BLE:Bluetooth Low Energy」の動作原理を理解してみよう【前編】

スマホとコンビを組み始めたBluetooth Low Energyの低消費電力を支える技術 ―― 送信受信時のピーク消費電力を,既存品の3割以上削減!

RCS(レーダー断面積)

レーダー測定やシミュレーションに関する翻訳で、RCS(レーダー断面積)という言葉がよく出てくる(例えば、フェーズド・アレイ・レーダ・システムの効果的な開発手法のp6)。RCSは、Radar Cross-Section(レーダー断面積)の略である。

radarは、RAdio Detecting and Ranging(電波探知および測距)の略で、ターゲットに電波を発射して、その反射波を測定することにより、ターゲットの方向や距離を測定する装置である。軍事目的に開発されたものであるが、コンクリート建築物の内部にある鉄筋や配管の位置特定に利用されたり、自動車の衝突防止システム用に研究開発が行われている。

レーダーの送信アンテナから発射された電波がターゲットに照射されると、そのターゲットにより電波が散乱(反射)され、受信アンテナでその反射波を受信する。受信される電波の大きさは、ターゲットの材質、形状、大きさに依存する。

ターゲットが完全導体(金属)の球の場合は、照射された電波がターゲットを透過したり、ターゲットに吸収されて熱に変換されることなく、照射されたエネルギーが100%等方的に散乱される。この完全導体球の断面積を基準にした(に換算した)ものがターゲットのレーダー断面積である(すなわち、ターゲットを完全導体球に置き換えて、同じ大きさの反射波が受信された場合、この完全導体球の断面積が、ターゲットのレーダー断面積である)。したがって、レーダー断面積は有効反射断面積とも呼ばれる。

戦闘機などでステルス性が要求される場合は、レーダー断面積が小さくなる材料(電波を反射せずに吸収して熱に変える材料)が使用され、小型木造漁船など電波が透過して大型船舶のレーダーに捕捉され難い船には、金属の反射板を装備してレーダー断面積を大きくする。

レーダー断面積σの厳密な定義は、レーダーアンテナとターゲット間の距離をr、ターゲット位置におけるレーダー送信波の電界強度をEinc、ターゲットで散乱されてレーダーアンテナに戻ってくる方向の反射波の電界強度をEscatとすると、

σ=lim 4πr^2|Escat/Einc|^2、r->∞ (1)

である(ターゲットに入射する電波が平面波でないと、ターゲットで等方的に散乱されないので、r->∞の極限をとっている)。

(1)式は以下のようにして求めることができる。

ターゲット位置におけるレーダー送信波の電力密度(単位面積あたりの電力)をPincとすると、ターゲットのレーダー断面積σによって、σPincの電力がターゲットに捕まり、その電力σPincすべてをターゲットが等方的に散乱(反射)するので、ターゲットによる散乱波の電力密度Pscatは、σPincをターゲットを中心とした半径(距離)rの球の表面積4πr^2で割ることにより、

Pscat=σPinc/4πr^2

なので、

σ=4πr^2(Pscat/Pinc)

と求まる。電力は電界強度の2乗であることから、(1)式が得られる。

レーダー断面積については、以下を参照。

日本財団 図書館 > ジャンルから検索 > 技術 > 海洋工学.船舶工学.兵器 > フリーワード検索 日本語で「レーダー・基礎理論編」を検索 > 通信講習用船舶電気装備技術講座(レーダー・基礎理論編) > 9.9.5レーダー断面積

near field(近傍界)、far field(遠方界)

アンテナ測定に関する翻訳で、near field(近傍界)、far field(遠方界)という言葉がよく出てくる(例えば、PNAレシーバによるアンテナ/RCS測定の時間短縮)。

電波は、アンテナなどの放射源から球面波として放射される(放射源を中心にして波面が球状に拡がりながら伝搬する)。放射源から近い距離では波面(波の同位相の点を結んだ面)は湾曲した球面(すなわち、球面波)であるが、波源から遠くなると波面は平面(すなわち、平面波)に近くなる。定性的には、近傍界とは、波面を球面と考える必要のある領域で、遠方界とは波面を平面とみなしてよい領域である。光の伝搬との類似から、近傍界をフレネル領域、遠方界をフラウンフォーファー領域と呼ぶこともある。

定量的な定義は、電荷が加速度運動すると電磁波が発生することをマックスウェル方程式を用いて計算する(電流ベクトルが与えられたときのベクトルポテンシャルから電磁界を計算する)必要があり、複雑でここには書ききれないが、概要は以下のようである。電磁界の大きさの計算結果に、放射源からの距離をrとして、1/r、1/r^2、1/r^3に比例する項(それぞれの項は、放射界(空間に電波として放出される成分)、誘導電磁界(ビオ・サバールの法則に従う成分)、準静電界(双極子による電界)と呼ばれる)が出てくる。遠方界(rが大きい)では、1/r^2、1/r^3に比例する項は、1/rに比例する項に比べて急速にゼロに近づくので、1/rの項のみが残る。近傍界と遠方界の効果が同程度となる条件(1/r^2と1/r^3に比例する項が、1/rに比例する項に等しくなる条件)から、近傍界と遠方界の境目が計算でき、この値はλ/2π(λ:電磁波の波長)である。

近傍界、遠方界については、以下を参照。

Near field or far field?(英語pdf)

電流ベクトルが与えられたときの電磁界の計算については、以下を参照

微小電流源からの放射電磁界の導出 その2 E、Hの算出Comments