frequency hopping(周波数ホッピング)

無線通信測定に関する翻訳で、frequency hopping(周波数ホッピング)という言葉がよく出てくる(例えば、Bluetooth RF測定の基礎のp4)。

周波数ホッピングは、スペクトラム拡散通信方式の1つである。スペクトラム拡散通信方式には、周波数ホッピング(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)方式と直接拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)方式がある。周波数ホッピングは、一定時間ごとに搬送波周波数を変化させて(ホッピングさせて)伝送する方式である(Bluetoothでは、625μsごとにランダムに変化させる)。直接拡散方式は、PSKやFSKなどによる1次変調(狭帯域変調)の後に、PN(擬似ランダム・ノイズ)コード(拡散コード)を使って2次変調(広帯域変調)を行う方式である(CDMA方式の携帯電話などで使用されている)。

スペクトラム拡散は、拡散コードが分からなければ傍受が難しく秘匿性に優れ、広帯域に信号を拡散させることにより、干渉/妨害信号やマルチパスに強いという性質がある。

スペクトラム拡散については、以下を参照。

Maxim社ホームページ > 設計 > 技術資料 > チュートリアル「ワイヤレスおよびRF」の「スペクトラム拡散方式の通信について 」(なんと、このページによると、女優と音楽家によって、1941年にスペクトラム拡散通信技術の特許が取られたそうだ。)

電波で情報を送れる仕組み 2

FIR filter(FIRフィルタ)

デジタル信号シミュレーションに関する翻訳で、FIR filter(FIRフィルタ)という言葉がよく出てくる(例えば、EEsof EDA SystemVueのp3)。

FIRはFinite Impulse Response(有限インパルス応答)の略で、FIRフィルタのインパルス応答の継続時間が有限である(フィルタの応答が過去の有限個の入力データのみで決まる)ことを意味する。これに対して、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタの応答は、FIRフィルタとは異なり、フィードバックが用いられることにより無限の過去からの入力データの影響を受け、安定性の問題が出てくるが、回路規模が小さく高速に動作するという利点がある。

FIRフィルタの簡単な例として、株式チャートのトレンドを見るために使用される移動平均がある。ある銘柄のX日の5日移動平均M(X)は、(X-4)日の株価Y(X-4)、(X-3)日の株価Y(X-3)、..、X日の株価Y(X)を用いて、(Y(X-4)+Y(X-3)+Y(X-2)+Y(X-1)+Y(X))/5で求められる。同様に、(X+1)日の5日移動平均M(X+1)は(Y(X-3)+Y(X-2)+Y(X-1)+Y(X)+Y(X+1))/5となる。このようにして得られた移動平均線は、株価の日々の変動(高周波成分)が平均化(フィルタリング)されて滑らかな線になる。

FIRフィルタについては、以下を参照。

Texas Instruments社の「DSP の基礎・トレーニング」ページ第 2 章 デジタル信号処理入門 (デジタルフィルタ)

ディジタルフィルタの概要

mark ratio(マーク率)

高速デジタル信号測定に関する翻訳で、mark ratio(マーク率)という言葉がよく出てくる(例えば、Agilent N4970A PRBSジェネレータ10 Gb/sと内蔵クロック・テスト・アクセサリ(TG2P1A)のp1の「主な特長」)。

デジタル・データは2進数として「0」と「1」の組み合わせで表される。このデータは、「0」に対応する電圧の低い状態と「1」に対応する電圧の高い状態を組み合わせたデジタル信号として伝送される。このとき、ある時間内での「1」を表す電圧の高い状態の割合をマーク率と呼んでいる。特にGaAsデバイスを用いた超高速光通信での伝送では、マーク率が偏るとデバイス特性が変化し、誤動作の原因となるので、伝送時にマーク率が1/2になるようにコード化される。