intradyne(イントラダイン)

光変調測定に関する翻訳に、intradyne(イントラダイン)という言葉がよく出てくる(例えば、N4392A光変調アナライザのp8)。

光ファイバ通信では、1と0の符号列のデジタル信号をそのまま光信号のオンとオフに対応させて情報を伝送している。これはモールス信号と同じで、無線伝送で最も単純なデジタル信号伝送方式のオンオフキーング(搬送波の振幅があるかないかの振幅変調)である。受信側でフォトダイオードで2乗検波すること(光の強度(電界の2乗)に比例した出力電流を得ること)により情報を得ているので、光ファイバ通信では強度変調-直接検波方式と呼ばれている。この方式では、位相情報は失われる(位相情報は利用されていない)。

強度変調-直接検波方式(オンオフキーング)では、最大周波数利用効率が1 ビット/s/Hzと低いが、高速にオン/オフ動作する光/電子デバイスと波長多重化技術により、大容量伝送(1つの波長あたり40 Gbps)に対応してきた。しかし、限界が見え始めてきたので、さらに大容量の伝送を可能にするために、多値位相シフトキーングや直交振幅変調などの周波数利用効率の高い多値変調方式を使用して、光搬送波の振幅に加えて位相も変調して情報を伝送する方法が開発されている。この場合、光搬送波の位相(周波数)に情報を乗せるために位相の揃ったコヒーレント光を使用する必要があるので、コヒーレント光通信と呼ばれている。

コヒーレント光通信の検波方式には、コヒーレントな電波を用いる無線通信と同様に、ヘテロダイン検波(受信した光波をそれに近い周波数の局部発振光とミックスして(干渉させて)中間周波数帯の電気信号に変換する方法)とホモダイン検波(受信した光波をそれと等しい周波数の局部発振光と干渉させて直接ベースバンド信号に変換する方法)がある。しかし、電波に比べて周波数の高い光波のヘテロダイン検波では、中間周波数帯の幅が広くなり適用が難しく、ホモダイン検波では位相同期ループを使用して受信した光波と局部発振光の周波数を等しくする(位相を同期する)必要があるが光波ではその実現が難しいといった問題があった。

近年のデジタル信号処理の発展により、ホモダイン検波で必要であった位相同期ループをなくして、局部発振光の周波数や位相が受信した光波と多少ズレても、検波後の電気信号をデジタル信号処理することにより、リアルタイムで周波数や位相のズレを補正できるようになった。ホモダイン検波で位相同期ループをなくして、デジタル信号処理で周波数や位相のズレを補正して検波する方式がイントラダイン方式と呼ばれている。

コヒーレント光伝送技術については、以下を参照。

NTTグループのホームページ > 研究開発 > NTT技術ジャーナル > バックナンバー > 2011 vol.23 No.3 > 超高速大容量光トランスポートネットワークの「さらに詳しく・全文記事PDF」 > 超大容量デジタルコヒーレント光伝送技術の「全文記事PDF

NB-IoT

無線通信機器設計に関する翻訳に、NB-IoTという言葉が最近よく出てくる(例えば、IoT-大きな可能性と大きな課題のp5の図2。NB-IoTのNBは、Narrow Band(狭帯域)の略である。

IoT向けの無線規格として、Bluetooth Low Energy (BLE)ZigBeeWi-SUN802.11ahなどが知られている。これらは比較的通信可能距離が短い規格である。Bluetooth Low Energy (BLE)、ZigBee、Wi-SUNはPAN(Personal Area Network)と呼ばれる近距離ネットワーク用で、802.11ahはLAN(Local Area Network)と呼ばれる中距離ネットワーク用で、通信可能距離は数m~1 km程度である。これらに対して、NB-IoTはWAN(Wide Area Network)と呼ばれる長距離ネットワークに対応した低コスト、低消費電力通信(LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークと呼ばれる)の規格で、基地局間の通信により通信距離の制限がない。

NB-IoTは、第3世代以降の移動通信システムの国際標準化団体である3GPPが策定したリリース13に示されている、IoT向けのLTE通信の仕様である。LTEの通常の伝送帯域幅が最大20 MHzであるのに対して、NB-IoT通信の伝送帯域幅は200 kHzと狭帯域で、3つの動作モード(GSM搬送波に埋め込むスタンドアロンモード、LTE搬送波に埋め込むインバンドモード、LTE搬送波のガードバンドに埋め込むガードバンドモード)がある。

NB-IoTについては、以下を参照。

今後のIoT無線技術の本命「NB-IoT」の底力とは

IoTの世界を広げるLPWA(eMTC,NB-IoT)とIoT関連仕様に関する制度整備について

polarization extinction ratio(偏波消光比)

偏光測定に関する翻訳に、polarization extinction ratio(偏波消光比)という言葉がよく出てくる(例えば、偏波コントローラのp4)。

偏波消光比とは、どの程度直線偏光が完全に実現されているかを表わすための指標で、偏波クロストークとも呼ばれる。

光は電磁波の一種である。電磁波は、振動する電場と磁場の方向が波の進行方向と垂直な横波であり、電場の振動方向と磁場の振動方向も垂直である(電荷と電流がない真空でのMaxwell方程式を解くことにより示される)。電場の振動方向は、光波の進行方向に垂直であればよいので、進行方向に対して垂直な平面内の(原点を通る)さまざまな方向をとることができる。このとき、振動方向が特定の方向に偏っている波が偏光(偏波)状態の波である。

太陽や白熱電球から放出される光の電場の振動方向は、進行方向に対して垂直な平面内のあらゆる方向に存在する。このような光(無偏光または非偏光の光)から、進行方向に対して垂直な平面内の(原点を通る)特定の方向だけに振動している光のみを透過し、それ以外の方向に振動している光を遮断するデバイスを(直線)偏光子と呼ぶ。

無偏光の光の進行方向に、2つの直線偏光子を配置し、一方の偏光子を固定し、もう一方を回転すると、2つの偏光子の向きが同じ場合に透過光が最大の強度になり、向きが90度異なる場合に最小の強度(理想的にはゼロ、すなわち消光)となる。この最大強度Pmaxと最小強度Pminの比が偏波消光比である。以下のように通常はdB単位で表される。

偏波消光比=10log(Pmax/Pmin)

偏波保持ファイバ、レーザー、光変調器などの偏波状態に敏感なデバイスで、偏波消光比が測定/評価される。

偏光子については、以下を参照。

岡本硝子株式会社のホームページ > 偏光子の基礎知識 > 偏光子とは