HARQ

デジタル無線通信測定に関する翻訳に、HARQという言葉がよく出てくる(例えば、LTE/LTE-Advanced FDD/TDD用Signal Studioのp1)。HARQは、Hybrid ARQ(Automatic Repeat reQuest)の略で、「ハイブリット自動再送要求」と訳されることもある。

デジタル信号伝送システムでは、ノイズや外乱によりデジタル信号に誤りが生じやすいので誤り訂正方式の導入が不可欠である(音楽CDにも読み取りエラー訂正用の誤り訂正方式(リードソロモン符号の付加)が導入されていることはよく知られている)。デジタル無線通信は、ケーブルではなく電波を用いて空間を伝送路として使用するので、信号強度が弱く、他の電波との干渉やノイズの影響を受けやく、デジタル信号に誤りが発生しやすい。

このようにデジタル信号に誤りが生じた場合に、それを訂正して元に戻す誤り訂正方式として、FFC(Forward Error Correction、前方誤り訂正)方式とARQ(Automatic Repeat reQuest、自動再送要求)方式がある。

FFC(前方誤り訂正)方式は、送信データに誤り訂正用の情報を付加して送り、受信側でその情報に基づいて誤りの検出/訂正を行なう方式である。FFC方式は、ブロック符号方式と畳み込み符号方式に分けられる。ブロック符号方式は、送信データをブロックに分けて、各ブロックに誤り検出/訂正用符号を付加して、各ブロック毎に誤りを訂正する。畳み込み符号方式は、連続する情報ビットの過去の数ビットを用いて現時点の符号化(誤り検出/訂正用)ビットを連続して得る(各符号化ビットが先行するいくつかの情報ビットの畳み込みで生成される)方式である。FFC方式はデータの再送を行わないのでスループットを一定のレベルに維持できるが、予想外の誤りに対処できない。

ARQ(自動再送要求)方式は、送信データに誤りが検出されたときに受信側が再送要求を行なう方式である。FFC方式に比べて、誤りの検出用のみの符号の付加でよいため冗長度が小さく、高い信頼性が得られるが、戻り回線とバッファが必要になるのでスループットが落ちる。

HARQ方式は、FFC方式とARQW方式を組み合わせたもので、FFC方式による誤り訂正が失敗した場合に、受信側はそのデータを保存しておき、送信側は送るべきデータの一部のみを再送し、受信側は保存したデータと再送された一部のデータを組み合わせてデータの訂正を試みる。さらに、データの訂正に失敗すると、送信側はデータの別の一部を送り、データが正しく訂正されるまでこのプロセスが続く。このようにして、データ再送によるスループットの低下を緩和する方式がHARQ方式である。

HARQについては、以下を参照。

Hybrid ARQ

誤り訂正方式については、以下を参照。

第3章 誤り訂正符号理論

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