SAW resonator(SAW共振子)

インピーダンス・アナライザに関する翻訳で、SAW resonator(SAW共振子)という言葉がよく出てくる(例えば、インピーダンス・アナライザの利点のp3)。

SAWは、Surface Acoustic Wave(弾性表面波)の略で、弾性体(変形しても元に戻る性質(弾性)を持つ物体)の表面を伝わる波である。1855年にイギリスのRayleigh卿により、その存在が理論的に示された(弾性体の表面が自由境界条件(空気と接している場合などで、応力がゼロとなる境界)を満たすときに、表面に振動のエネルギーが集中する表面波(Rayleigh波)が生じることを示した)。弾性体を伝わる波は、その内部を伝わる実体波とその表面を伝わる表面波に大きく分けられる。地震波のP波とS波は、地盤(変形が小さい場合は地盤も弾性体である)の内部を伝わる実体波である。巨大地震の場合は、地球表面を何周もまわる表面波が観測される(表面波は実体波に比べて減衰し難い)。

弾性体として圧電材料(タンタル酸リチウムや水晶など、圧力を加えて変形すると電圧が誘起される(電圧を加えると圧力が生じて変形する)材料)を使用し、その表面に2つのくしの歯の部分を非接触で噛みあわせて対向させたくし型の電極(IDT(Inter Digital Transducer)と呼ばれる)を形成することにより、電気信号(電気的な振動)を弾性表面波(機械的な振動)に変換(逆変換)するデバイスがSAWデバイスである。くし型電極の歯の間隔(ピッチ)に等しい波長(周波数)の表面波のみが強く励振され、鋭い周波数選択性を持ったフィルタを実現できる。また、光速に近い電気信号が2000 m/s~5000 m/s程度の音速の弾性表面波に変換されるので、信号の波長が非常に短くなり小型のフィルタを実現できる。

IDTで励振された弾性表面波の伝搬方向に、対向するようにグレーティング反射器(弾性表面波の波長の1/2の間隔で配置された多数の反射素子で、各反射素子からの反射波が同相で重なりあって100%に近い反射率が得られる)を配置してファブリペロー共振器を形成したものがSAW共振子である。

弾性体の表面波については、以下を参照

弾性波動力学の3.5 レーレー波(Rayleigh Waves)(p27~p32)

「鬆徒労苦衷有迷禍荷苦痛構造 連続体の力学基礎を独習する」の10.3 表面波 10.3.1 Rayleigh 波(p492~p494)

SAW共振子については、以下を参照

エプソン水晶デバイスのトップページ > インフォメーション > 技術情報 > SAW共振子 SAWフィルタのMCF/SAWについて:SAW

コメントは受け付けていません。